バイポーラトランジスタ ダーリントン接続

バイポーラトランジスタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 20:57 UTC 版)

ダーリントン接続

NPN トランジスタを使ったダーリントン接続

2個のトランジスタを、コレクタを並列に接続、第1トランジスタのエミッタを第2トランジスタのベースに接続して、1個のトランジスタと同じように扱う方式をダーリントン接続 (Darlington transistor)という。全体のhFEはそれぞれのトランジスタのhFEの積となる。つまり、小さなベース電流で非常に大きなコレクタ電流を制御することが可能となる。2つのトランジスタの品種は同じである必要はない。

トランジスタが発明された初期の頃は、PNP型の大型トランジスタを作ることが困難であったため、PNPの小型トランジスタとNPNの大型トランジスタをダーリントン接続として、全体としてPNP型と同じ動作をさせることが行われた。PNP型の大型トランジスタが出現してからは、個別部品でこのような接続をする必要は無くなったが、集積回路の内部では増幅率の大きなPNP型トランジスタを作ることが困難であるため、この方式が用いられている。 また、一般にパワートランジスタは小信号用トランジスタと比べ増幅率が低いため、高い増幅率が必要で大電力を扱わなければならない場合はダーリントン接続が使われる。

ダーリントン接続したトランジスタを1個のパッケージに収めた品種もある。型番の命名規則は単体のトランジスタと全く同じであるため、ダーリントン接続であるかは規格表やデータシートを見なければ分からない。

通常、単にダーリントン接続といった場合、いずれのトランジスタにも同じ接合タイプ(NPN、PNP)のトランジスタを使ったものを指し、この接続方法では全体でのVBEは2つのトランジスタのVBEの和になる。

一方、先述の大型PNP代用ダーリントントランジスタの例のように、NPNとPNPの両方のトランジスタを使ったものはインバーテッドダーリントン接続 (Sziklai pair)という。この場合は第1トランジスタのコレクタを第2トランジスタのベースに接続する。第1トランジスタのエミッタと第2トランジスタのコレクタを並列接続とし、全体ではエミッタとする。第2トランジスタのエミッタは、全体ではコレクタとなる。全体での接合タイプは第1トランジスタの接合タイプと同じになり、ベース-エミッタ間電圧も第1トランジスタのベース-エミッタ間電圧のみになる。hFEは通常のダーリントン接続と同様に増加する。ただし、全体のコレクタ-エミッタ間飽和電圧は、第1トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧と第2トランジスタのベース-エミッタ間電圧の和になるため[注釈 3]、スイッチング用として動作させると損失が増加する欠点がある。

このほか、ダーリントン接続なしで極めて高いhFEを持つトランジスタもあり、スーパーベータトランジスタと呼ばれる。スーパーベータトランジスタのhFEは1000~3000以上と非常に高い。ただし、スーパーベータトランジスタはほとんど全て小信号用NPN型であり、最大コレクタ電圧が低いという欠点がある。


注釈

  1. ^ 「2極の」という意味。
  2. ^ 点接触型のトランジスタは点接触部が機械的な衝撃やパッケージの熱膨張などで簡単に破損してしまうなど信頼性が非常に低かったため、信頼性にまさる接合型が発明され接合型の性能(周波数特性など)が向上すると、姿を消した。
  3. ^ 第2トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧第1トランジスタのコレクタ-エミッタ間飽和電圧第2トランジスタのベース-エミッタ間電圧 のとき。

出典

  1. ^ トランジスタ技術編集部 『最新トランジスタ規格表&互換表〈2008/2009〉』CQ出版、2008年。ISBN 978-4789844628 


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