セファロスポリン セファロスポリンの臨床的分類

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セファロスポリン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/20 01:18 UTC 版)

セファロスポリンの臨床的分類

注射薬

前述のように世代による分類は十分に薬物の特性を反映していない。例えばセフタジジム(CAZ、商品名モダシン)はグラム陰性桿菌である緑膿菌に対して非常に効果的でありグラム陽性菌にはほとんど効かないという第三世代に特徴的な特性を持つが、同じく第三世代に分類されるセフトリアキソン(CTRX、商品名ロセフィン)は緑膿菌には効果がなくグラム陽性菌に非常によく効き、市中肺炎の第一選択となる。このように世代分類のみに頼ると抗菌薬選択のミスを犯す可能性がある。しかしセファロスポリンは種類が多すぎるためある程度の分類が必要である、そのため臨床現場ではセファロスポリン全体の適応疾患を考え、次のような使い分けをすることが多い。

黄色ブドウ球菌、レンサ球菌に用いるセファロスポリン
黄色ブドウ球菌レンサ球菌に用いるセファロスポリンとしてはセファゾリン(CEZ、商品名セファメジンα)が知られている。蜂窩織炎丹毒といった軟部組織感染症や術前の創部感染予防に用いることが多い。日本には黄色ブドウ球菌に効果があるペニシリンが販売されていないため、黄色ブドウ球菌に対して切り札である。重症時は一日6gの大量投与を行う。髄液移行性が悪いため、黄色ブドウ球菌による髄膜炎には適応がない。
市中肺炎や尿路感染症に用いるセファロスポリン
市中肺炎や淋菌など尿路感染症に用いるセファロスポリンとしてはセフォチアム(CTM、商品名パンスポリン)やセフトリアキソン(CTRX、商品名ロセフィン)、セフォタキシム(CTX、商品名セフォタックス)、また経口剤ではセフロキシム(CXM-AX、商品名オラセフ)がある。セフトリアキソン(CTRX、商品名ロセフィン)は一日一回投与で血中濃度を維持でき、また肝臓代謝であるので腎機能に関係なく使用することができるので貴重な薬である。淋菌による尿道炎の場合はクラミジア感染が合併することが多いのでマクロライド系であるアジスロマイシン(AZM、商品名ジスロマック)を併用した方が良いとされている。
腸内細菌、嫌気性菌に用いるセファロスポリン
腸内細菌嫌気性菌に用いるセファロスポリンとしてはセファマイシンといわれる物質があげられる。セフメタゾール(CMZ、商品名セフメタゾン)やセフブペラゾン(CBPZ、商品名トミポラン)である。これらの抗菌薬はβラクタマーゼに極めて安定だがグラム陽性菌にはほとんど効かないと言われている(適応はある)。すべてのセファロスポリンに言えることだが、腸球菌や髄膜炎で有名なリステリアにはまったく効果がない。
緑膿菌に用いるセファロスポリン
緑膿菌に効果が高いものとしてはセフェピム(CFPM、商品名マキシピーム)やセフタジジム(CAZ、商品名モダシン)があげられる。セフェピムの方がグラム陽性菌への抗菌力もあり、髄液移行性がよく髄膜炎にも適応があるという点で優れている。緑膿菌を最も警戒する状況は好中球減少時の発熱や院内感染の重症例である。このような場合、想定する起因菌は黄色ブドウ球菌、皮膚ブドウ球菌、緑膿菌などだが、グラム陰性桿菌の方が敗血症をおこすので致命的となるのでまずはセフェピムやセフタジジムを用いることが多い。セフタジジムではブドウ球菌をカバーできないが、こちらをカバーするのは緑膿菌が否定できてからでも遅くはない。

経口薬

第1世代薬と第3世代薬がそれぞれ1種類あれば十分と考えられている。外来注射薬としてはセフトリアキソン(CTRX、商品名ロセフィン)が1日1回投与可能なためオプションとして用いられる。

第1世代薬
第一世代薬は皮膚、軟部組織感染症(SSTI)、歯科治療時などで用いられる。SSTIは黄色ブドウ球菌やレンサ球菌が原因であるためグラム陰性桿菌をカバーする必要性は乏しい。セファレキシン(商品名 ケフレックス)などがよく用いられる。顔面の蜂窩織炎や咬傷ではグラム陰性桿菌をカバーする必要があるため第3世代薬を用いる。
第3世代薬
顔面の蜂窩織炎、咬傷、市中肺炎で用いられる。市中肺炎の原因である肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラカタリラーリス、マイコプラズマ、レジオネラ、クラミジアのうち前者3つをカバーできる。そのためアジスロマイシンなどマクロライド系抗菌薬を併用すればほぼすべてをカバーできる。セフジトレン ピボキシル(商品名メイアクト)200mg1日3回、アジスロマイシン(商品名ジスロマック)500mg1日1回の併用療法がよく知られている。

  1. ^ 彦根麻由、相野田祐介、「外来で経口第3世代セファロスポリン系薬を使う機会は限られているってホント? 」 medicina. 2015/5/10, 52巻6号, p.882-885, doi:10.11477/mf.1402223498
  2. ^ 忽那賢志 (2015年12月14日). “「だいたいウンコになる」抗菌薬にご用心!”. 日経メディカル ナーシング (日経BP). http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/anursing/kutsuna/201512/545029.html 2021年1月26日閲覧。 
  3. ^ 医療用医薬品「セファメジンα」新型キット新発売のお知らせ』(プレスリリース)アステラス製薬(旧・藤沢薬品)、2000年10月26日。 オリジナルの2009年12月3日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20091203211030/http://www.astellas.com/jp/corporate/news/fujisawa/001026.html2014年8月15日閲覧 《》






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