MCS-Ⅵ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/05 11:41 UTC 版)
MCS-Ⅵ(Ⅵ)は、ムーンクラフトが1985年のGCシリーズ用に開発したマシンでマーチ・842専用カウルとなった。 開幕戦には、参戦24台中13台がMCS-Ⅵ/マーチ・842で、搭載エンジンでは、BMWが10台/REが2台/ヤマハが1台となっている。 1985年の車両規定変更で、リアオーバーハングが短くなり、すべてのエンジンにマフラーの搭載が義務つけられた。 842は、前作の832よりホイールベースが約100㎜短く、トレッドが約50㎜広くなっているので、この寸法差をカウルやサスペンションで吸収することには無理があるし、またリアオーバーハングを短くするとそれに合わせてフロントオーバーハングを短くするしなければバランスが確保できない。したがって 85年用のⅥでは、842専用カウルが必要となった。Ⅵの専用カウルは、前作のMCS-Ⅴ(Ⅴ)よりも全長で約330㎜短くなり、全幅が約50㎜広くなった。 Ⅵのフロントは、Ⅴよりもダルノーズになっている。また842専用カウルとなったことで、デザインの自由度がまし、842の特徴的なモノコックシャーシを露出させている。カウルは、モノコックシャーシ露出用に大きな穴を開けたので、剛性が低下するので補強が必要となり軽量化ができなかった。カウルとしては、中央部に大きな穴があり、その穴から上記の842のモノコックとエンジンのエアインテークが出てくるかたちになる。カウルの天面は、モノコック露出部より低い位置にあり、各フェンダー部がそれぞれ島状に高く出ている。 冷却系に関しては、右側ポンツーンに空気流入ダクトを拡大して、大型ラジエターを前傾させて配置し、冷却風をボディ側面から取り入れ、カウル天面に抜いている。なお冷却の厳しいエンジン(マツダ13B、ヤマハ)に対しては、左側ポンツーンにⅤで使用したラジエターコンポーネントを追加できるようにしている。 Ⅵは、Ⅴよりも全長が短く全幅が広いがそれにもかかわらずCd値がⅤよりも低くなっている。風洞実験によれば、Ⅴは0.44に対してⅥは0.4で約9%低下した。これは、空洞ポンツーン内の気流が改善されたことが主因である。842は、モノコック及びリアサブフレーム部にでっぱりがなく、カウル内部のエアフローがスムーズに流れるからである。 空洞ポンツーン内のスムースなエアフローは、フロントとリアの両方でダウンフォースが増加し、リアウイングと内部の抵抗が減少する。ⅥとⅤは、結果としてダウンフォース発生点は移動していない。 排気系は、後方排気として、ギアボックスの側面にメガホン部にマフラーを設置している。そのためリアサスペンション部の気流を妨げている。 シャーシとしては、GCの規定で最小地上高がF2よりも20㎜高く設定されているので、フロント側はプルロッドの短縮/リア側はダンパーのアッパーアイを延長することで対応している。エンジンの搭載は、GCでは、ウイングカー構造が禁止されているのが、BMW勢は前年度のF2と同じ前傾、RE勢は、従野は前傾/赤池は水平、ヤマハのG・リースは水平と対応が分かれた。 前傾搭載は、リアサスペンションジオメトリを変更しないためであり、赤池の水平マウントはBMWよりも高い位置にある出力軸に合わせるためで、G・リースの水平はF2のマーチ・85Jと搭載方法を合わせるためである。水平マウントにすると、リアサスペンションが前傾するので、サスペンションマウントの作り変えが必要になる。RE搭載車は、ねじりに弱いREに対応するため、BMW搭載車のリアフレームをベースにさらにパイプフレームを強化した。
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