超伝導素子
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/19 00:40 UTC 版)
詳細は「超伝導量子コンピュータ(英語版)」、「電荷量子ビット(英語版)」、「磁束量子ビット(英語版)」、「トランズモン型量子ビット(英語版)」、および「位相量子ビット(英語版)」を参照 超伝導素子を用いた量子コンピュータの量子ビットは、ジョセフソン・ジャンクションを用いた超伝導回路によって構成されている。超伝導回路中の電荷(クーパー対)の自由度を用いた量子ビットを、電荷量子ビット、またはクーパー対箱と呼ぶ。1999年、日本電気において中村、Pashkin、蔡らにより実現された。当時の量子ビットのコヒーレンス時間は約1ナノ秒であった。超伝導量子ビットは回路量子電磁力学(英語版)の研究とともに発展し、2004年にはコプレーナ導波路により実装された超伝導共振器と電荷量子ビットとの強結合が観測されている。共振器や導波路を組み合わせた回路量子電磁力学は、超伝導量子ビット間の相互作用や、量子非破壊測定を行うとても良いツールとなっている。 SQUIDを含み、磁束量子の重ね合わせ状態を用いた量子ビットを磁束量子ビット(英語版)と呼ぶ。2003年、デルフト工科大においてChiorescu、中村、Harmans、Mooijらにより実現された。これらはDWAVE社が開発した量子焼きなまし法による最適化手法に採用されている。 2007年に電荷量子ビットにおける電荷揺らぎ雑音を回避する量子ビットが提案され、トランズモン型量子ビット(英語版)と呼ばれる。比較的シンプルな構成で長コヒーレンス時間が実現され、米国を中心に盛んに研究が進められている。2011年、量子計算や量子誤り訂正に必須となる単一試行の量子非破壊測定(英語版)が実現し、トランズモン型超伝導量子ビットの量子跳躍が観測されている。これらの技術の背景には、標準量子限界に近い雑音指数を達成する低雑音増幅器(ジョセフソンパラメトリック増幅器)の実現がある。2013年、上記の基礎技術とFPGAによる高速フィードバック処理により量子テレポーテーションの実験が行われ、空間的に離れた量子ビット間の状態転送が実現した。2014年には160マイクロ秒のコヒーレンス時間が実現し、1999年の発見から15年の間に約10万倍という飛躍的な改善がなされている。同年、Google社のJohn Martinisらのグループは、誤り耐性符号の一つである表面符号(英語版)の誤りしきい値を下回る、高い忠実度の基本量子ゲートを実現した。これにより誤り耐性量子計算が現実化し、超伝導量子ビットを用いた量子計算機の開発が一層加速することになる。2015年、9量子ビットによるビット反転エラー訂正(英語版)を実行し、論理量子ビットのエラー確率を物理量子ビットに比べ約1/8まで小さくすることに成功した。同年には、新しい機能性材料の開発を飛躍的に加速する、フェルミ粒子のディジタル量子シミュレーションが、小さな系にて実装されている。大規模化に向けた取り組みが始まり、2016年には三次元集積技術による実装が議論されている。 国内では東京大学と理化学研究所が量子コンピュータや量子情報処理の研究を、NTT物性科学基礎研究所、情報通信研究機構が量子物理の研究を行っており、主な研究拠点である。 海外ではGoogle、IBM、デルフト工科大学(インテル・マイクロソフトが支援)、マサチューセッツ工科大学、チューリッヒ工科大学が主な研究拠点である。
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