解雇権濫用の法理
・解雇権濫用の法理とは、「合理的かつ論理的な理由が存在しなければ解雇できない」というものである。この解雇権濫用の考えは、「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。」(判例より)と昭和50年に日本食塩製造事件によって確立された。
・従来までは、判例により確立されていたが、平成15年の労働基準法の改定により、法律規定化された。
・法律規定化された背景には、労働者にあたえる解雇影響の重大さや、解雇に関する紛争の増大化がある。
・解雇権濫用になるかならないかの判断は、判例上以下の要素が挙げられる。
(1)解雇に合理性や相当の理由が存在するか
(2)解雇が不当な動機や目的からされたものではないか
(3)解雇理由とされた非行・行動の程度と解雇処分とのバランスが取れているか
(4)同種又は類似事案における取扱いとバランスが取れているか
(5)一方の当事者である使用者側の対応が信義則上問題はないか
(6)解雇は相当の手続きが踏まれたか
(1)傷病等による労働能力の喪失・低下
(2)労働者の能力不足・適格性の欠如
(3)労働者の非違行為
(4)使用者の業績悪化等の経営上の理由(いわゆる整理解雇)
(5)ユニオンショップ協定に基づく解雇(例外がある)
・この平成15年の改正により、労働締結の際に「解雇の事由」も文書により明示しなければならなくなった。(労働基準法第15条労働条件の明示)→詳細は「労働条件の明示」へ。
解雇権濫用の法理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 07:09 UTC 版)
雇用主が従業員を解雇し、従業員がその解雇を無効として争う場合、裁判所がその解雇を権利の濫用と認定し、解雇を無効と判決することがある。これが、解雇権濫用の法理である。 解雇権濫用の法理は旧来判例で認められてきたものだが、2003年(平成15年)の労働基準法改正によって、労働基準法第18条の2に明文化された。そこには、「解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と示されている。なおこの条文、今は2008年(平成20年)3月に施行された労働契約法16条にそのまま移行されている。 日本の雇用は、こうした解雇権濫用の法理によって、法的に保護されているといえる。これは他の先進国・特に欧州にも存在する観念であり、正当な経営上の理由がない限り解雇は違法となっている。ただしその基準は各国において異なる。 終身雇用の慣行の下、この解雇権濫用法理ともあいまって、日本の正社員は、景気後退期においても雇用の安定が図られてきた。
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