空港建設
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 08:19 UTC 版)
空港のない父島列島には、以前から空港建設・民間航空路線開設の要望がある。一般のアクセスは船に限られ、地球の裏側ブラジル・サンパウロに飛行機で行くよりも時間がかかる。かつて父島には、洲崎地区に大日本帝国海軍の飛行場があったが、戦後はヘリポートのみで、固定翼の陸上機が発着できる場所がない。 海上自衛隊父島基地には、飛行艇用の揚陸スロープが設置されており、岩国基地所属の飛行艇が飛来するが、急病人および東京都知事や国務大臣など要人の搬送を目的とする場合に限られている。1994年2月の小笠原行幸啓では、US-1が使用された。 下記の都議会予算特別委員会などで、今までに父島洲崎(1,000m級滑走路)、兄島(1,600m級滑走路)、父島時雨山(しぐれやま)を予定地とする空港建設がそれぞれ検討された。兄島候補地では、父島との交通手段を確保する必要があるなどの困難を伴い、貴重な動植物の保護の必要があることから、空港建設のめどは立っていない。羽田空港からの民間飛行艇による運航や、硫黄島航空基地を経由した大型ヘリコプターによる運航、同じく硫黄島から船便での運航など、空港を父島列島に建設しなくてすむ方法も検討されているが、結論は出ていない。 古くからの住民の多くは簡単に行き来できる空港建設を熱望している一方で、小笠原の自然に惚れ込んで移住した新住民の多くは「秘境らしさ」を残したいため、空港建設に消極的であるなど、島民の意見もまとまっていないといわれる。また世界遺産登録後は、環境悪化に対する懸念も浮上している。 2005年、東京都知事石原慎太郎はテクノスーパーライナーの就航断念を受け、空港が「地域振興に極めて必要である」として、環境に配慮しながらも最低限の第三種空港を建設する意欲を明らかにした。その方法として、羽田空港D滑走路建設で検討されながらも採用されなかった「メガフロート」と地上滑走路の併用を考えていることを明らかにした。2006年3月15日の東京都議会予算特別委員会で石原都知事は「(かつて日本軍が建設した飛行場があった)父島洲崎地区を(空港として)利用したい」旨、表明した。 東京都では2008年以降小笠原諸島における本土との間の航空路開設についての検討を進めるにあたり、 関係者間の円滑な合意形成を図ることを目的として、小笠原航空路協議会を設置している。 2018年1月5日、小池百合子都知事が定例記者会見において、平成30年度予算案に小笠原諸島における空港建設のための調査費を計上した。滑走路は1,000m以下を想定しているとの報道がある。 日本航空のグループ会社の日本エアコミューターなどが使用するATR 42 などの中型ターボプロップ機は、航続距離1,560km前後ながら1,200m級滑走路での運用が可能で、40名前後の旅客型の他にコンビ機(旅客と貨物兼用)の設定も可能である。2018年7月開催の第7回小笠原航空路協議会では、STOL性能を向上させ800mの滑走路に対応し開発中のATR 42-600Sが候補とされた 。しかし、2020年7月開催された第9回、同協議会以降、ATRの親会社レオナルド S.p.A傘下アグスタウェストランドが開発中のティルトローター機であるAW609も候補となり、競合する可能性が出てきている。
※この「空港建設」の解説は、「小笠原諸島」の解説の一部です。
「空港建設」を含む「小笠原諸島」の記事については、「小笠原諸島」の概要を参照ください。
「空港建設」の例文・使い方・用例・文例
- 空港建設のページへのリンク