生殖と生活環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/25 17:54 UTC 版)
有性生殖を行うものでは、生活環の様式は多様である。配偶体と胞子体の間で世代交代を行うものが多いが (単複世代交代型生活環)、そのパターンは多様である。アオサ目やシオグサ目の多くでは、ほぼ同形の配偶体と胞子体が世代交代を行う (同形世代交代)。配偶体と胞子体が異なる形・大きさである場合もあり (異形世代交代)、ハネモ目では配偶体が大型のもの(例:ハネモ属)と胞子体が大型のもの(例:ツユノイト属)がある。ハネモ目の中で、ミル属やイワヅタ属は世代交代を行わず、複相単世代型生活環 (配偶子のみが単相) とされることが多いが、異論もある (接合子が減数分裂を経て成長する)。カサノリ目では、接合子は複相単核のまま藻体を形成するが、やがてその藻体中で減数分裂を行い多数の単相核をもつようになり、最終的に配偶子を形成する。 有性生殖における配偶子は鞭毛をもち、対応する性の配偶子が同形同大である同形配偶子を形成する例 (アオサ属など) と、明らかに大小がある異形配偶子 (大型の配偶子を雌性、小型の配偶子を雄性とよぶ) を形成する例 (ミル属など) がある。唯一、チョウチンミドロ属 (ハネモ目) では雌性配偶子が鞭毛を欠く卵であり、卵生殖を行う。 無性生殖も一般的に見られ、藻体の分断化や、核相の変化なしに形成される遊走子などによって無性生殖を行うことがある。ウミイカダモ属は、二分裂による無性生殖を行う。またアキネートのような耐久細胞を形成する種もいる (例:アオミソウ属)。
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生殖と生活環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/13 07:05 UTC 版)
真正紅藻類は、基本的に単相の配偶体 (gametophyte)、配偶体上にできる複相の果胞子体 (carposporophyte)、および独立した複相の四分胞子体 (tetrasporophyte) からなる3世代交代 (triphasic life cycle) を行う (右図)。 配偶体は、雌雄同株の場合と雌雄異株の場合がある。精子嚢は不等分裂によって斜めに切り出され、それぞれ不動精子 (spermatium) を1個形成する。造果器 (carpogonium) は、1〜約20細胞からなる特殊な細胞列 (造果枝、胎原列 carpogonial branch) の先端に形成される。造果枝の中で造果器の下に続く細胞を器下細胞 (hypogynous cell) とよび、また造果枝が生じる細胞を支持細胞 (supporting cell) とよぶ。造精器や造果器は、体を構成する細胞糸に側生または頂生し、サンゴモ目では生殖器巣 (conceptacle) とよばれる藻体の特殊な窪みの中に形成される。 接合子 (受精した造果器) は直接、または別の細胞 (助細胞など) を介して造胞糸 (gonimoblast) とよばれる複相の細胞糸を形成し、造胞糸全体またはその先端が果胞子嚢となる。それぞれの果胞子嚢では複相の果胞子 (carpospore) が1個ずつ形成される。造胞糸の集まりは配偶体上に形成されるが、核相が異なるため (複相と単相)、配偶体とは異なる世代と見なされ、果胞子体 (carposporophyte) とよばれる。果胞子体の発生においては、母体である配偶体からの栄養供給が重要な役割を果たしている。発達した果胞子体は、しばしば母体となった配偶体由来の保護組織に囲まれる。この保護組織は果皮 (pericarp)、果皮とそれに包まれた果胞子体は合わせて嚢果 (cystcarp) とよばれる (右図)。嚢果の一端にはふつう孔 (ostiole) があり、果胞子はここから放出される。果皮の内側にはしばしば無色の細胞糸層が発達しており、果胞子体への栄養補給に働いていることが示唆されている。 果胞子体の形成様式には以下のような多様性があり、重要な分類形質となっている。 ウミゾウメン型:最も単純な形式であり、受精した造果器がそのまま造胞糸を形成する。ウミゾウメン亜綱やイタニグサ亜綱に見られる。 サンゴモ型:受精した造果器が器下細胞や支持細胞と融合し、さらに隣接する支持細胞などと次々に融合して巨大な融合細胞 (fusion cell) を形成し、そこから造胞糸を形成する。サンゴモ亜綱に見られる。 テングサ型:造果器から生じた造胞糸が所々で配偶体の栄養細胞 (栄養助細胞) と融合しながら伸長し、果胞子嚢を形成する。受精した造果器が器下細胞や支持細胞と融合して融合細胞を形成し、ここから造胞糸を伸ばすこともある。マサゴシバリ亜綱テングサ目に見られる。 ヒビロウド型:造果器または融合細胞から連絡糸 (connecting cell, connecting filament, ooblast) とよばれる細胞糸を伸ばし、これが造果枝外に既に存在する特殊な細胞である助細胞 (auxiliary cell) と融合する。助細胞は連絡糸を介して受精核 (のコピー) を受け取り、造胞糸を形成する。助細胞の位置は分類群によって多様であり、スギノリ目などでは造果糸から離れた場所に存在するが、マサゴシバリ目では造果糸の支持細胞から助細胞が生じる。マサゴシバリ亜綱に見られる。 イギス型:ヒビロウド型に似るが、助細胞は造果糸の支持細胞から受精後に生じる。このような形式は、受精できて初めて次世代に対する投資を行うので、無駄な投資を避けるという意味があるのかもしれない。マサゴシバリ亜綱イギス目に見られる。 真正紅藻はこのような過程を経て、1個の接合子 (受精した造果器) から多数の果胞子を形成することができる。例えば Schmitzia sanctae-crucis (スギノリ目) では、1個の接合子から 4,500個もの果胞子が形成される。このような特徴は、分散において不利と思われる鞭毛を欠くという紅藻の性質を補う意味があると考えられている。 果胞子は、発芽して四分胞子体となる。四分胞子体は四分胞子嚢 (tetrasporangium) を形成し、そこでふつう減数分裂を行って4個の四分胞子 (tetraspore) を形成する (右図)。ただし四分胞子形成時ではなく、発芽時に減数分裂が起こるとの報告もある。四分胞子嚢中での胞子の配置様式には、十字状 (cruciate)、環状 (zonate)、四面体状 (tetrahedral) などの多様性があり、重要な分類形質とされる。四分胞子の代わりに、胞子嚢中に2個形成される二分胞子 (bispore) や、多数形成される多分胞子 (polyspore) を形成する例も知られている。 上記のように、真正紅藻の生活環は、基本的に配偶体、果胞子体、四分胞子体からなる3世代交代からなる。配偶体と四分胞子体の大小、各世代の移行過程などに基づいて真正紅藻の生活環は以下のようにタイプ分けされる。 イトグサ型 (Polysiphonia-type):ほぼ同形同大の配偶体と四分胞子体、および配偶体上に寄生した微小な果胞子体の間で3世代交代を行う。 カギノリ型 (Asparagopsis-type):大型の配偶体と微小な四分胞子体、および配偶体上に寄生した微小な果胞子体の間で3世代交代を行う。 カワモズク型 (Batrachospermum-type):大型の配偶体と微小な四分胞子体 (シャントランシア期)、および配偶体上に寄生した果胞子体の間で3世代交代を行い、四分胞子体が四分胞子を形成することなく直接減数分裂して配偶体が生じる。 ダルス型 (Palmaria-type):雄性配偶体と胞子体は同形同大であるが、雌性配偶体は微小な盤状体。果胞子体を欠き、受精したは造果器は直接四分胞子体に成長する。 また一部の種では、果胞子から四分胞子体にかけての時期を省略して造胞糸が直接四分胞子嚢 (四分果胞子嚢 carpotetrasporangium)を形成する。
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生殖と生活環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/10 06:55 UTC 版)
無性生殖として、胞子嚢胞子を作る。菌糸体が成長を始めると、すぐに胞子形成を活発に行う。胞子嚢柄は菌糸から枝分かれして上に向かって伸びる。 やがて、先端が膨らみ、球状の胞子嚢を作る。胞子嚢内部の原形質は細かく分裂し、多数の胞子嚢胞子になる。この時、胞子嚢の中心部は分裂せずに、胞子嚢の柄から続く、ドーム状、球形、または楕円形をした、胞子嚢の芯のような形で残る。これを柱軸(ちゅうじく)という。 胞子嚢胞子が成熟すると、胞子嚢の壁は溶けるようにして崩れ、胞子を放出する。胞子は好適な基質の上で発芽し、新たな菌糸体を形成する。なお、発芽の時には、胞子嚢胞子は大きく膨らむ。 胞子嚢柄が、先端の胞子嚢の少し下から伸び出し、新たに胞子嚢を作ることを繰り返し、仮軸状に分枝した形を取るものも多い。 有性生殖は、接合胞子を作る形で行われる。好適な菌糸が接近すると、両者から先の膨らんだ菌糸が伸びる。これを配偶子嚢という。互いに接触する配偶子嚢に形の差がないので、雌雄の分化はない。配偶子嚢が接触すると、両者の先端部が融合した細胞が作られ、それが大きく膨らんで、接合胞子嚢へと発達する。成熟した接合胞子嚢は表面が凸凹で、濃い色をした厚い壁に覆われる。その内部には1個の大きな接合胞子が形成されている。接合胞子の内部では減数分裂が行われ、発芽すると胞子嚢を形成する。 ほとんどのケカビは自家不和合性で、好適な株同志が接触しない限りは接合胞子を作らない。
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