植村による訴訟
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2015年(平成27年)1月、西岡力と文藝春秋社を相手取り、東京地裁に誹謗中傷に対する損害賠償請求訴訟を、同年2月に櫻井よしことワック、新潮社及びダイヤモンド社を相手取り、札幌地裁に名誉毀損に対する損害賠償請求訴訟を提起した。2015年1月10日、植村は自身が関わった記事を「捏造」と決めつけたとし週刊文春の発行元である文藝春秋社と記事を執筆した西岡力(東京基督教大学教授)に対し1650万円の損害賠償などを求める訴えを東京地裁に起こし、司法記者クラブ 東京都内で記者会見した。植村は、23年前に自分が書いた2本の記事が「捏造」と批判され続け、その結果、家族や周辺まで攻撃が及ぶとし「私の人権、家族の人権、勤務先の安全を守る」と訴えた。 本訴訟に際し、植村側は170人に及ぶ大弁護団(弁護団長中山武敏、副団長小林節、海渡雄一、事務局長神原元ら)を結成した。弁護団は「インターネット上で植村氏や家族を脅迫する書き込みをした人たちも捜し出し、一人残らず提訴していく」と発表したという。また、崔善愛や香山リカたちも「植村裁判を支える市民の会」を結成し、植村の支援を行った。 裁判で被告である西岡力と文藝春秋社側は、「捏造」と書いたことについてそれを「事実である」と主張せず、「意見ないしは論評である」と答弁書で主張した。原告側弁護士の神原元は、「「捏造だ」は「事実の摘示」ではなく意見ないしは論評である」という第2回口頭弁論の被告側の答弁は、「捏造論が事実でないと認めた」に等しく、真実性を主張できない以上、「植村はすでに勝利したに等しい」と主張している。 2018年11月9日札幌地裁(岡山忠広裁判長)は、従軍慰安婦報道の記事を「捏造」と報じられ名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの桜井よしこや出版3社に損害賠償などを求めた訴訟で植村の請求を棄却した。植村は、大学就職の内定を取り消さざるを得なくなったことや勤務していた大学や家族が脅迫された原因は、櫻井の記事によって名誉を棄損されたことにあるとして損害賠償を求めていた。岡山裁判長は櫻井の記述は植村の社会的評価を低下させたと認定したが、事実と異なると信じる相当の理由があり、記事を書いた目的にも公益性を認め、植村の請求を棄却した。櫻井は「ジャーナリスト個人に対する提訴の乱用は表現の自由を侵す」「言論の場で意見を戦わせるべき」とコメントした。 2019年6月26日、東京地裁は、植村が起こした文藝春秋と西岡力に対する損害賠償請求を棄却した。地裁は西岡の記事について「指摘は公益目的で、重要部分は真実」と認定し、西岡が指摘していた植村が金学順がキーセン学校に通っていたという経歴を故意に隠したという点と、義母が韓国遺族会の幹部であったことから、植村が義母の裁判を有利にするために意図的に事実と異なる記事を書いたという点については推論に一定の合理性があったこと(真実相当性)を認め、植村が意識的に言葉を選択し、金学順が女子挺身隊として日本軍によって戦場に強制連行されたという事実と異なる記事を書いたという指摘については、「女子挺身隊」の表記は日本の組織・制度を想起させるとし、植村の記事は、金学順が「日本軍(又は日本の政府関係機関)により、女子挺身隊の名で戦場に連行され、従軍慰安婦にさせられたとの事実を報道するもの」と認定したうえで、植村が「金学順が日本軍によって強制連行された」という認識はなかったのに、あえて事実と異なる記事を書いたとして、西岡の指摘に真実性があるとした。 2020年2月06日、札幌高裁は、植村の訴えを退けた札幌地裁1審判決を支持し請求を棄却、植村側の敗訴となった。 2020年3月03日、東京高裁も1審判決を支持し請求を棄却、植村側の敗訴となった。 弁護士ドットコムによると、地裁に続いて西岡の真実性・真実相当性を認め植村の請求を棄却した。高裁の判決に関して植村は不服として上告するとし西岡は公正な判断と評価した。植村弁護団は、東京高裁(白石史子裁判長)が、植村が金学順のキーセンに身売りされたという経歴を知っていたのにあえて記事にしなかったとは認められない、義母の裁判を有利にするため意図的に事実と異なる記事を書いたとは認められないと地裁判決から変更したことは評価している、としている。これに対して西岡力が会長を務める歴史認識問題研究会は、この2点は地裁判決で既に「真実相当性」が認められたもので、地裁判決から何ら変化がないにも関わらず、判決内容を曲解させる表現をするのは問題があると非難している。 2020年11月18日、最高裁第2小法廷は、櫻井よし子に対する訴訟について、植村側の上告を受理しない決定を行い、請求を棄却した1、2審判決が確定した。。 2021年3月11日、最高裁第1小法廷は、西岡力に対する訴訟について、植村側の上告を受理しない決定をした。。これにより植村による訴訟は最高裁まで全て敗訴が確定した。
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