実測値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
一般的には27ノットが定説であるが、箇条書きすると、次のような記録が伝えられている。 『戦艦大和・武蔵』には佐田岬標柱で行われた終末公試運転で28.33ノットを発揮したと記述されている。 大和の元乗組員がテレビ番組『よみがえる戦艦大和』(朝日放送)で29.3ノットまで出したことがあるという証言をしている。 原勝洋は『真相・戦艦大和ノ最期』にて「1942年6月22日に愛媛県佐田岬標柱間で行われた公試時、167,310馬力で28.5ノットを発揮した」と書いている。 武蔵が過負荷全力166,520馬力で28.1ノットを出したという記録が残っている。 こうした記録から、短時間であれば過負荷全力時に28ノット台を発揮できたことは、間違いない。大和型戦艦は基準排水量64,000トンの巨艦にも関わらず、機関出力は150,000馬力と他国35,000トン型戦艦と大差ないため、28ノット台の速力が出せたことを疑う向きもあるが、2乗3乗の法則によれば長さや幅が倍になったとすれば重量は8倍なるが抵抗は4倍に留まる。よって、35,000トン級戦艦の約2倍の排水量を持つ大和型は1.5倍の馬力で同程度の速度を発揮できるということになる。実際には造波抵抗が速度によって増加するため、艦長が長いほど高速になると有利となる。 また、大和型戦艦はバルバス・バウの採用や船体形状の研究などで15,820馬力節約したという記録が残っている。大和の過負荷全力である167,310馬力+15,820馬力=183,130馬力であり、当初計画が多少縦横比の長い状態で20万馬力、30 - 31ノットであるから、28 - 29ノット台が出ても不自然な数値というわけではない。 また、日本の軍艦は燃料・弾薬・水・食糧などの消耗物資を満載した状態で出撃し、一定距離を航海して戦闘に入る直前を想定した状態(いわゆる公試排水量)で出せる速力を最大速力とするが、物資の搭載量が少なければ、これより大きな速度を出せる。例えば駆逐艦島風は公試試験の際、燃料・水等を2/3ではなく海軍がより実用的と考えて改正した新基準により、半分しか搭載せず出した数値である40.9ノットが最高値となっている。 大和はレイテ沖海戦時には、第五戦速26ノットで2時間39分走っているが、これを上回る最大戦速で1分間、一杯で9分間走っている。つまり、この時点では28 - 29ノットを発揮していた可能性は充分ある。ただし、機関部の通風能力が不足していたため、特に南方での作戦での高速発揮時は、機関部内が耐え難いほどの高温になっていたとされている。 なお、他国でも独ビスマルク級戦艦の一般的な速力は29ノットとされているが、機関過負荷120 - 128パーセントで30.8ノットを出したほか、伊戦艦ヴィットリオ・ヴェネト級は30ノットの計画に対して各艦31.2 - 31.4ノット、仏戦艦リシュリュー級は30ノットの計画に対し32ノット以上、英戦艦ヴァンガードも30ノットの計画に対し31.57ノット、キング・ジョージ5世級も27.5ノットの計画に対し29ノット、米戦艦アイオワ級は33ノットの計画に対して1968年3月にニュージャージー(BB-62)が35.2ノットを発揮した記録が残っているなど、大抵の戦艦は短時間であれば過負荷全力時に計画速度を上回る速度を発揮できる。逆に、晩年のアイオワ級戦艦は船体・機関の老朽化により速力が低下したという記録も残っている。 そして、船一般に言えることだが数万トンの排水量の船になると、水温が0.5度違っても同じ体積の水の重量(つまり抵抗)が大きく変わり推進器の性能などにも影響し船のスピードは違ってくる。従って軍艦の最高速度は目安でしかないことに注意する必要がある。
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