地面・水・空気による伝導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/30 05:05 UTC 版)
「無線電信」の記事における「地面・水・空気による伝導」の解説
実用的な電波によるシステムが利用可能になる以前、水・地面・空気を介して電流を長距離伝送することができるという(一部は誤った)考えに基づく多くの無線電気信号方式が調査された。 当初の電信線は、2つの電信局の間に2本の電線を使用して完全な電気回路を形成していた。しかし、1837年、ドイツ・ミュンヘンのカール・アウグスト・フォン・シュタインハイルは、各電信局の装置の脚の1本を地面に埋められた金属板(アース)に接続することによって、片方の電信線を取り除いて、1本の電信線だけで電信通信が行えることを発見した。これは、両方の電信線を取り除いて、すなわち、電信局に電線を接続することなく、地面を介して電信信号を送信することが可能でないかという推測をもたらした。別の試みとして、例えば、川を渡る通信を行うのに、川の水を通して電流を送る実験も行われた。このような考えに基づいて実験を行った者の中には、アメリカ合衆国のサミュエル・モールスやイギリスのジェイムズ・ボウマン・リンジー(英語版)がいる。リンジーは1854年8月に、500ヤード (457メートル)の距離で水車堰(英語版)を越えて信号を伝えられることを示した。 アメリカ合衆国の発明家ウィリアム・ヘンリー・ワード(英語版)(1871年)とマロン・ルーミス(英語版)(1872)は、低い高度に帯電した大気層があるという誤った考えに基づいた伝導システムを開発した。彼らは、往路は大気の電流を使い、さらに復路は"Earth currents"(地球電流)を使うことで、無線電信を可能にすると同時に電信のための電力を供給し、電源の用意が不要になると考えた。1879年、エイモス・ドルビアー(英語版)は磁気電気電話で、より実用的な伝導による無線伝送のデモンストレーションを行った。これは、接地伝導を使用し、4分の1マイルの距離を伝送した。 1890年代の発明家ニコラ・テスラは、ルーミスと同様の空気と地面で伝導する無線電力伝送システムに取り組み、これを電信にも応用することを計画していた。テスラはこの実験から、地球全体に電気エネルギーを伝導することができると誤って結論付け、1901年には、現在ウォーデンクリフ・タワーと呼ばれている高電圧の無線電力送信所を建造したが、資金援助を打ち切られたため運用されなくなり、数年後に放棄された。 最終的に、大地の伝導性を使用した電信通信は、短い距離に限定される非実用的なものであることがわかった。第一次世界大戦中に行われた、水を介した通信や塹壕間の通信も同様であった。
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