作品誕生の経緯とシリーズ化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 02:56 UTC 版)
「トラック野郎」の記事における「作品誕生の経緯とシリーズ化」の解説
『トラック野郎』誕生のきっかけは、ジョナサン役の愛川欽也が吹き替えを担当していたアメリカCBSテレビのテレビドラマ『ルート66』の様なロードムービーを作りたいという構想を抱き、自ら東映に企画を持ち込んだのが始まり。『ルート66』は、「若者二人がシボレー・コルベットを駆ってアメリカ大陸を旅をする」という内容であったため、当時40歳になる自分がそのままやるのでは無理があると考えていた時、1975年5月28日に放映されたNHKのドキュメンタリー番組『カメラリポート 走る街道美学』で、東名高速をイルミネーションを点けたトラックが走っている映像を観て、「これならイケるんじゃないか?」と閃き、当時、愛川が司会を務めていた情報バラエティ番組『リブ・ヤング!』にゲスト出演して知り合った菅原文太に「何とか映画にならないものか」と相談を持ち掛け、二人で「東映の岡田茂社長(当時)に企画を持ち込み直談判した所、すんなり企画が通った」、「東映は岡田社長の鶴の一声で決まるから」と愛川は証言している。八代亜紀は、自分にトラック運転手さんの追っかけが出来る現象が生まれていたことも、映画誕生と関係しているのではないかと話している。「トラック野郎」という題名はプロデューサーの天尾完次による命名。 シリーズ全10作の監督を務めた鈴木則文は、東映入社後、助監督時代から専属だった東映京都撮影所から東映東京撮影所に移って2年程経ち、この間、『聖獣学園』など3作品を演出、『女必殺拳シリーズ』など2作品の脚本を手掛けていた。当時の東映の看板路線だった実録やくざ映画の人気が下火になりつつあった時期にこの企画を持ち込まれ、やくざ映画に変わる新たな娯楽作を送り出そうと制作に意欲を示していたが、本社の企画会議で岡田から「バカヤロー! トラックの運ちゃんの映画なんて誰が見るんだ!」と一蹴され、一旦ボツになったが、「当初予定していた別の作品が俳優の都合で頓挫し、岡田社長から「それでいいから作れ」と、急遽、穴埋めとして製作されることになった」、と幸田清元東映東京撮影所長らは話している。当初この枠で予定していた映画は、岡田裕介主演・檀ふみ共演の『華麗なる大ドロボウ』(山下耕作監督予定だった)である。岡田社長が「お盆映画にしては弱すぎる」と製作を無期延期したため『トラック野郎』が製作された。宣伝部の福永邦昭は電飾トラックを紹介する雑誌記事を集め、横浜の電飾取り付け工場を取材。さらには電飾トラックを扱ったNHKのドキュメンタリー番組を見つけ出すと「持ち出し禁止のフィルムを奥の手で借り受けて」、5月中旬には社内試写を行い、岡田から承認を得ていた。鈴木は「わたしの映画人生の大恩人、岡田茂はヒットすると自分の企画案のように大絶賛していた」と話している。 企画から下準備、撮影を含めた製作期間は2か月、クランク・アップは封切り日の1週間前であった。シリーズ化の予定はなく、単発作品としての公開だった。こうして、過密な撮影スケジュールと低予算で製作された『トラック野郎・御意見無用』は1975年8月30日に公開された。ところが、いざ蓋を開けてみると、オールスターキャストの大作@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}『新幹線大爆破』(同年7月公開)の配給収入の2倍以上の約8億円を上げた[要検証 – ノート]ことから、岡田社長は「正月映画はトラックでいけ」、「トラ(寅さん)喰う野郎やで」、「(2作目の)題名は爆走一番星や!」と即座にシリーズ化を決定した。 『トラック野郎・御意見無用』の大ヒットの原因について当時の『キネマ旬報』は「それまでの実録路線がタイトル、内容ともにえげつなくなり過ぎていたきらいがあり、本作はコミカルな要素も加わった異色作品で、観客層もそれまでの東映作品から幅広くなり、女性層もかなり吸引したこと、メガヒットだった『タワーリング・インフェルノ』のロングラン上映が二ヵ月に渡り勢いが下降し、また松竹、東宝もロングランで対抗する作品が皆無で、公開タイミングが最適であった」と分析している。 東映の興行の基盤となるドル箱シリーズとして1979年末まで盆と正月の年2回公開されていた。愛川曰くライバル映画の松竹『男はつらいよ』と常に同時期の公開だったことから、「トラトラ対決」(「トラック野郎」と「寅さん」の対決の意)と呼ばれていた。
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