人類の敵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/30 03:58 UTC 版)
シュタイナーは、現在の第五文化期に、人類はゲルマンの神々の導きで新たな霊性を得ると考えたが、キリストという神的存在に導かれる霊的な進化と、ルシファーやアーリマンという悪霊によって導かれる堕落の道との分岐点でもあるとしている。 ルシファー、アーリマンは、神智学の「グレート・ホワイト・ブラザーフッド・オブ・マスターズ(大いなる白き同胞団)」と闘争を続ける悪霊「ロード・オブ・ダーク・フェイス(黒い顔の主)」という漠然とした概念を明確に定義づけしたもので、人類の主な敵である。1914年に第一次世界大戦が起こると、シュタイナーは戦争を起こしたのはダーク・フォースだと主張した。 ルシファーは傲慢の霊で、「人間の中のあらゆる熱狂的な力や、あらゆる神秘主義的な力を呼び起こす能力を備えた存在」であり、人間は努力すれば人間の限界を超え霊的能力を持てるという身の程知らずな考えに陥らせる霊である。幻想的な力を使い、第三根源人種レムリア人が性的逸脱によって堕落するよう影響を及ぼしたという。アフリマンは物質主義の霊で、「人間を唯物論という迷信へと導き、無味乾燥で散文的で俗物的な存在にする力を持つ」という。現代科学・技術の最高神であり、人類に精神と五感の領域だけを信じ、霊的な面を拒むように仕向けるとされた。ただし、歴史を長い目で見れば、ルシファーとアーリマンの力は文化の多様性や人間精神の自律性をもたらすという面もある。アーリマンの影響が最も大きいのは自然科学の諸分野で、全てが数字に還元されるため、人々は徐々に世界は物質でできた機械のようなものだと感じるようになっていくとしている。ダーウィンの進化論も、アーリマンの影響でできたものだという。また、アーリマンは経済にも大きな力を発揮するとしており、その影響で科学的・経済的に繁栄し、物質的欲望が満たされた生活を享受するようになると、霊的な進化は止まり、文化は崩壊すると考えた。ルシファーとアーリマンの力の間で均衡を保つため、本質的に太陽神であるキリストという霊格が必要とされるのだという。シュタイナーは人々に、キリストの受肉の意味を理解し、人類を堕落させるために悪霊が張り巡らせた罠に備え、霊的進化の道を進むよう求めた。
※この「人類の敵」の解説は、「人智学」の解説の一部です。
「人類の敵」を含む「人智学」の記事については、「人智学」の概要を参照ください。
- 人類の敵のページへのリンク