じょうすう‐こうか〔‐カウクワ〕【乗数効果】
乗数効果
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乗数効果(じょうすうこうか、英: Multiplier effect)とは、一定の条件下において有効需要を増加させたときに、増加させた額より大きく国民所得が拡大する現象である。国民所得の拡大額÷有効需要の増加額を乗数という。マクロ経済学上の用語である。リチャード・カーンがもともとは雇用乗数として導入したが、ジョン・メイナード・ケインズがのちに投資乗数として発展させた。
- ^ 「雇用乗数」ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、コトバンクより。2015年3月14日閲覧。
- ^ 増淵勝彦、飯島亜希・梅井寿乃・岩本光一郎 『短期日本経済マクロ計量モデル(2006年版)の構造と乗数分析』〈ESRI discussion paper series no.173〉内閣府経済社会総合研究所、2007年1月 。
- 1 乗数効果とは
- 2 乗数効果の概要
- 3 効果を相殺する要因
- 4 関連項目
乗数効果
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/25 15:58 UTC 版)
公共投資は、それ自体が需要を増加させるだけでなく、公共投資から所得を得た人が消費し、それがさらなる消費を生むという乗数効果がある。公共事業費には、土地の購入費も含まれており、土地の購入は付加価値を生み出さないためGDPには直接影響を与えない。 森永卓郎は「公共投資の景気拡大効果が落ちてきているのは事実である。現在(2002年)の経済学者たちの検証で明らかになっている。ただし、公共事業が景気対策として即効性があるのは事実である。少なくとも投資総額分の効果はある」と指摘している。 経済学者のポール・クルーグマンは、道路・ダムの建設などの社会資本の整備に使う公共投資の乗数効果は、1.5位あるとしている。 経済学者の原田泰は「マクロ計量モデルによる近年(2009-2014年)の研究結果では、1兆円の公共事業をするとほぼ1兆円のGDPが増えるという結果となる。政府支出を増やせばその分だけGDPが増えるという結果である。これは乗数が1ということであり、乗数というほどの効果はないことになる。さらに、これは金融政策も発動した結果であり、金融政策を発動しない場合には乗数は1以下になってしまう」と指摘している。 大竹文雄は「無駄な公共投資が、景気対策と考えられていたのは、政府の支出は100%便益を高めることになるというGDP計算上の仮定によっていただけである」と指摘している。 経済学者の小野善康は「国民経済計算では、公共投資は所得として計上される。これが誤解を生み、公共投資には所得増大効果があると思われているだけである。公共投資の本当の効果は、できた物の価値だけである。数字上での乗数効果だけが強調され、批判する側も乗数効果が小さいということが問題であるとしている。消費関数は、妥当性が疑問である上、乗数効果という見せかけの効果の根拠となった」と指摘している。 経済学者の小塩隆士は「公共投資の乗数効果が発揮されるためには、いったん引き上げられた公共投資の水準をそれ以降も維持しなければならない。景気が上向きでない段階で公共事業の水準を元に戻してしまうと、公共投資はむしろ景気の押し下げ要因になってしまう」と指摘している。
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乗数効果
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ケインズモデルにおいては消費はconsumptionの頭文字であるCで表される。 Cは最も簡易なモデルとして以下のように組み込まれる。 消費のみのモデル 国民所得(Y):Y=C 均衡国民所得 :Y=C+cY cは、消費性向を意味し、経済によって異なる。c=0.8は所得のうち消費へ80%を使うことを意味し、cYは所得によって増減する裁量的消費支出と呼ばれる。Cは最低限必要な消費支出であり、所得の増減には影響されない。 限界消費性向c=0.8、基礎消費C=10として、この方程式を解くと、乗数効果により均衡国民所得は50となる。 投資と消費のモデル 国民所得(Y):Y=C+I 均衡国民所得 :Y=C+I+cY 総投資 (I):I=10 上記のように投資を考慮した場合、国民所得は50から100に増加する。増加した国民所得50のうち消費40されなかった総貯蓄10は総投資10と同額になる。
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乗数効果
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公共投資の乗数効果よりも減税の乗数効果の方が理論的に考えて小さく、内閣府の計量分析などによっても示されている。また、減税と財政支出を同時に行うと、結果として起こる変化の区別が困難となる。 経済学者のポール・クルーグマンは、減税政策の乗数効果は、0.5程度しかないとしている。 経済学者の岩田規久男は財政支出が乗数効果を弱める要因として、 人々が一時的な所得の増加と考え、消費を増やさない可能性 国債残高の増加により、人々が将来の増税を予想し、消費を抑制して貯蓄に走る可能性 国債残高の増加により、金利の上昇・自国通貨高が起き、輸出が減った結果、需要拡大効果を相殺してしまう可能性 を挙げており、これは減税にも当てはまるとしている。 原田泰は「仮に、政府支出を増大するとGDPがその乗数倍だけ増えるというケインズ経済学の考えが正しければ、いくら財政支出を拡大しても債務残高の対名目GDP比率は高くならないはずである」と指摘している。また原田は「ケインズの乗数は高い失業率の状況を前提としている。そのような状況であれば乗数が大きいことも考えられるが、いずれ雇用は拡大しそれ以上拡大できない状況となる。どのような状況でも乗数が大きいとは考えられない」と指摘している。 「(日本では)財政政策の乗数効果は、経済構造の変化によって低下している」という議論について、田中秀臣は「財政政策の効果が低下したのは、主に金融政策の引き締め的スタンスが原因であり、そのことによって著しく乗数効果が落ちてしまった」と指摘している。
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乗数効果
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乗数の概念はもともとリチャード・カーンが提案したものである。一般理論では第10章で乗数について述べられるが、ケインズ自身も一般理論の第10章冒頭において乗数の概念がリチャード・カーンの功績であることを認めている。リチャード・カーンの導入した乗数はもともと投資の増分と総雇用の増分について述べた雇用乗数であったが、ケインズはこれを応用して総投資の増分と所得の増分に関する投資乗数を導入した。投資乗数とは次のように導き出される。ここで、国民所得の増分をΔYとすると、ΔYは消費(C)と投資(I)の増分によって構成されるので Δ Y = Δ C + Δ I {\displaystyle \Delta Y=\Delta C+\Delta I} ここで限界消費性向を c とすると、 c = Δ C Δ Y {\displaystyle c={\frac {\Delta C}{\Delta Y}}} これをΔYの式に代入すると Δ Y = c Δ Y + Δ I {\displaystyle \Delta Y=c\Delta Y+\Delta I} これをΔYについて解くと Δ Y = 1 1 − c Δ I {\displaystyle \Delta Y={\frac {1}{1-c}}\Delta I} この .mw-parser-output .sfrac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .sfrac.tion,.mw-parser-output .sfrac .tion{display:inline-block;vertical-align:-0.5em;font-size:85%;text-align:center}.mw-parser-output .sfrac .num,.mw-parser-output .sfrac .den{display:block;line-height:1em;margin:0 0.1em}.mw-parser-output .sfrac .den{border-top:1px solid}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1/1-c は乗数と呼ばれる。これは、総投資が増加したとき、国民所得は投資の増分の乗数倍だけ増加するということを示している。
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「乗数効果」の例文・使い方・用例・文例
- 乗数効果という経済現象
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