プラネタリー‐バウンダリー【planetary boundaries】
読み方:ぷらねたりーばうんだりー
地球上で人間が安全に生存できる限界。人間が地球環境に及ぼしている各種影響を定量的に評価し、それぞれの限界点を見極め、地球環境の破滅的変化を避けるための指針とする。地球の限界。地球の境界。
[補説] 2009年、地球の持続可能性について研究を行うストックホルムレジリエンスセンターのヨハン=ロックストロームら環境科学者グループが考案した概念に基づく。地球環境への9種類の影響(気候変動・海洋酸性化・オゾン層破壊・窒素循環とリン循環・淡水利用・土地利用・生物多様性の損失・大気エーロゾルの負荷・化学物質による汚染)をそれぞれ定量化し、危険性の評価をした。2015年、国連総会において採択された世界目標である「持続可能な開発目標」の策定に大きく貢献した。
プラネタリー・バウンダリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/25 10:02 UTC 版)
プラネタリー・バウンダリー(英: Planetary boundaries)は、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を定義する概念である。地球の限界[1]、あるいは惑星限界[2]とも呼ばれる。
注釈
- ^ 論文の原題は「A Safe Operating Space for Humanity」[6]。
- ^ ロックストロームは、当初の失敗を次のように回想している。「『事実を目の前にすれば人は正しい決断を下す』と考えることがいかに素朴すぎるか、私にとって痛いほどはっきりした。大多数の人が自分に関わりがあると感じ、何かを信じる場合にのみ、社会の大きな変化が起こる。(中略)それは感情と思考の両面から起こることが必要だった」[10]。
- ^ 書籍の原題は『The Human Quest: Prospering within Planetary Boundaries』[12]。
- ^ 二酸化炭素濃度と放射強制力は2015年時点で連動している。ただし、大気は温室効果ガスと冷却化物質が混じり合う複雑な状態にあるため、つねに連動する保証はない[34]。
- ^ 雲の高さや面積などによって、温暖化への影響が異なる。たとえば高い雲は地球を暖める傾向があり、低い雲は地球を冷やす傾向がある[36]。
- ^ 絶滅した頂点捕食者であるオオカミを他の土地から再導入して生態系を回復した例として、1995年のイエローストーン国立公園の試みがある[40]。
- ^ インドでは灌漑に使う化石水が世界最大であり、将来の農業への影響が懸念されている[59]。
- ^ 環境省のサイトで、バーチャル・ウォーターの計算ソフトが公開されている。製作はNPO法人日本水フォーラムによる[63]。
- ^ 霧の都とも呼ばれるロンドンでは冬のスモッグが有名であり、ロンドンスモッグ(1952年)によって1万人以上が死亡する事件も起きた[65]。
- ^ 2014年の調査による[76]。
- ^ オーストラリアでは2000年から2012年の12年間の旱魃で40億USドルの損害となった。2012年のハリケーン・サンディによって、ニューヨーク市は190億USドルの損害となった[76]。
- ^ 新たな技術革新について、マサチューセッツ工科大学(MIT)のエリク・ブリンジョルフソンとアンドリュー・マカフィーは「第二の機械時代」と呼んでいる[80]。
- ^ SDGsの議論は、国際連合事務総長の潘基文が設置した地球の持続可能性に関する上級会合(GSP)から始まっている。OWGは、政府間協議プロセスとして活動した[43]。
出典
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- ^ Breaking Boundaries - IMDb(英語)
- 1 プラネタリー・バウンダリーとは
- 2 プラネタリー・バウンダリーの概要
- 3 各プロセスの詳細
- 4 不可逆的な変化
- 5 政治・経済
- 6 映像作品
- 7 関連項目
プラネタリー・バウンダリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 03:56 UTC 版)
「人新世」の記事における「プラネタリー・バウンダリー」の解説
人類がもたらした変化が、地球の限界を超えつつあるという警告を含む仮説を指す。地球をシステムとして考えると、恒常性を維持するフィードバックが働いている。しかし、引き返し不能点(ティッピング・ポイント)を超えると、システムは予想がつかない振る舞いをする。この仮説は2009年に発表された。当初の提唱者は、地球システムを研究するスウェーデンの環境学者ヨハン・ロックストロームと化学者のウィル・ステフェン(英語版)をはじめとする約20名の研究者だった。 仮説では9つの限界点を指標にしており、機能によって3種類に分けられる。 地球的な閾値が明確に定義されたもの:気候変動、成層圏オゾン層の破壊、海洋酸性化。 緩やかに変化する地球環境にかかる変数にもとづくもの:土地利用の変化、淡水利用、生物多様性の喪失、窒素とリンの循環。これらは緩やかな限界値とも呼ばれる。 人類が作り出した脅威:大気エアロゾルの環境に負荷を与える化学物質、重金属や有機化学物質による生物圏の汚染。 この中で、気候変動、生物多様性の損失、生物地球化学的循環は2009年時点で限界を超えたともいわれている。
※この「プラネタリー・バウンダリー」の解説は、「人新世」の解説の一部です。
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プラネタリー・バウンダリー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 03:46 UTC 版)
「ヨハン・ロックストローム」の記事における「プラネタリー・バウンダリー」の解説
2009年、ロックストロームは、28人もの著名な学者からなる国際的なグループ「アース・リーグ(The Earth League)」を率いて、持続可能な発展の前提条件となるべく、新しい地球システムの枠組み(フレームワーク)として、人類が生存できる安全な活動領域とその限界点=プラネタリー・バウンダリーを把握することで、人類にとっての壊滅的変化を回避できるのではないか、そのようなバウンダリー=限界点がどこにあるかを知ることが大切であるという新しい考え方を、政府や政府関係機関に対して提案した。この概念は2009年に論文として公表され、全文がEcology and Society に、またその要約版がネイチャーに掲載された。この枠組みは、この惑星の地球システムのプロセスには超えてはいけない「境界値(バウンダリー)」または「閾値」があることを仮定する。学者グループらは、これらの境界を超えない範囲を、「人類の生存のための安全な活動領域」と呼んで注目している。学者グループらは、人間の生き残りに不可欠な9つの「地球生存支援システム」を特定し、これらの7つシステムのうちが既に飛び越えてしまっているものがないかどうかを定量化しようとした。これらのバウンダリーを越えて、地球の居住性を悪化させる可能性のある「不可逆的かつ急激な環境変化」のリスクや脅威について、学者らは、人類の生存が脅かされる前に、人類はどれほど開発を続けることができるかを見積もった。 プラネタリー・バウンダリーは、人類が発展の領域の余裕を特定し「人間開発のための安全な領域」を定義することができる。そして人間による地球への悪影響を最小限に抑えるアプローチへの改善を促す。上記の論文は、9つの地球システムにおける限界値(気候変動、海洋酸性化、オゾン層の破壊、窒素とリンの循環、グローバルな淡水利用、土地利用変化、生物多様性の損失、大気エアロゾルの負荷、化学物質による汚染)の評価が行われた。
※この「プラネタリー・バウンダリー」の解説は、「ヨハン・ロックストローム」の解説の一部です。
「プラネタリー・バウンダリー」を含む「ヨハン・ロックストローム」の記事については、「ヨハン・ロックストローム」の概要を参照ください。
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