アロステリック活性化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/07 07:49 UTC 版)
「アンチトロンビン」の記事における「アロステリック活性化」の解説
第IXa因子と第Xa因子に対する阻害の増強には、ヘパリンの五糖配列が必要となる。五糖の結合に応答してアンチトロンビンに生じるコンフォメーション変化については詳細な記載がなされている。 ヘパリンが結合していない場合、反応部位ループのN末端領域に位置するP14位とP15位のアミノ酸はタンパク質の本体(具体的にはβシートAの上部)に埋め込まれている。この特徴はヘパリンコファクターII、α1-アンチキモトリプシン、MENT(英語版)など他のセルピンと共通している。 第IXa因子と第Xa因子の阻害と最も関係の深いコンフォメーション変化は、このP14位とP15位のアミノ酸が関与するものである。これらのアミノ酸が位置する反応部位ループのN末端領域はヒンジ領域と呼ばれている。ヘパリンの結合に応答したヒンジ領域内のコンフォメーション変化によってP14とP15はタンパク質の本体から排除されること、またこのコンフォメーション変化を防ぐことで第IXa因子と第Xa因子の阻害の増強が起こらなくなることが示されている。ヒンジ領域のコンフォメーション変化による反応部位ループの柔軟性の増加は、第IXa因子と第Xa因子の阻害の増強に影響を与える重要な因子であると考えられている。五糖が存在しない場合、P14位とP15位のアミノ酸が排除された活性型コンフォメーションをとるアンチトロンビンの割合は0.25%と計算されている。
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アロステリック活性化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 08:12 UTC 版)
セルピンの立体構造変化は静的な"鍵と鍵穴"型(競合阻害型)のプロテアーゼ阻害剤に対する重要な利点を与える。さらに、阻害剤型のセルピンの機能は、特異的な補因子とのアロステリックな相互作用によって制御されることがある。アンチトロンビン、ヘパリン補因子II、MENT、およびマウスアンチキモトリプシンのX線結晶構造により、これらのセルピンではRCLの最初の2つのアミノ酸がAシートの頂上部に取り込まれるような立体構造が採用されることが明らかになった。このような、RCLが部分的に本体に取り込まれた立体構造は機能的に重要であり、以上の様なセルピンは補因子と結合すると取り込まれた部位を露出させる様な、プロテアーゼと反応しやすい立体構造への構造の再構成を行う。この立体構造の再構成によりセルピンはより効率的な阻害剤となっている。 補因子による活性化を受けるセルピンの典型的な例はアンチトロンビンであり、この分子は部分的に取り込まれた、相対的に不活性な状態で血漿中を循環している。主要特異性決定基(P1アルギニン)はセルピン分子の本体へ向いているため、プロテアーゼが利用できない。高分子であるヘパリンの内部にある高い親和性を持つペンタサッカライド(五糖)の配列がセルピンに結合すると、アンチトロンビンの立体構造が変化、RCLが反転、P1アルギニンの露出する。こうしてヘパリンのペンタサッカライドと結合したアンチトロンビンはトロンビンと第Xa因子のより効果的な阻害剤となる。さらに、この2つの凝固因子系プロテアーゼ、トロンビンと第Xa因子もまたヘパリンとの結合部位(エキソサイトと呼ばれる)を持つ。そのためヘパリンはプロテアーゼともセルピンとも結合し、両分子の相互作用を劇的に加速する。初期の相互作用の後、セルピンの最終的な複合体の形成が完了し、ヘパリンの部分は放出される。この相互作用は生理的に重要な役割を持つ。例えば、血管壁が損傷を受けると、ヘパリンが露出し、アンチトロンビンが活性化して凝固反応を制御する。この相互作用の分子的原理の理解により、抗凝固薬として使われる合成ヘパリンペンタサッカライドであるフォンダパリヌクスが開発された。
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