《どういたしまして》の敬語
「どういたしまして」の敬語表現
「どういたしまして」を敬語表現として置き換えたものには「とんでもないことです」があります。「どういたしまして」は、どのようにという意味の「どう」、「する」の謙譲語「いたす」、「だ」の丁寧語「ます」、次の言葉へつなぐ助詞の「て」に分けられ、謙譲語と丁寧語の使われたれっきとした敬語表現です。相手のお礼の言葉に対して、それをおだやかに打ち消す挨拶の言葉であり、「私はあなたのためにどう力になれたのでしょうか」という意味で、「いいえお礼を言われるほどのことはしていませんよ」という謙遜の気持ちを含んだ反語になっています。
「どういたしまして」は日本人らしい謙虚な、とても丁寧な敬語なのですが、親しい間柄で使える口語として定着していることや、小さな子供に対しても使える言葉でもあることなどから、改まった場面では使いづらいイメージがついています。また「そんなに気にしないでください」というニュアンスを含むため、やや上から目線の言葉となり目上の人に使うと失礼に感じ取られる場合があります。
「とんでもないことです」は思いもかけない、とても考えられないという意味の「とんでもない」を丁寧に言ったものです。「お礼を言われるなんて私は思いもかけなかった」という意味で、やはりお礼に対する打ち消しとなりますが、こちらには「気にしないで」というニュアンスは含まれません。謙虚さが印象として残るため、「どういたしまして」をより敬意をこめて伝えたい場合の代替表現となります。
「どういたしまして」の敬語の最上級の表現
敬語の最上級の表現としては「恐れ入ります」「恐縮です」が挙げられます。どちらももともとは大変恐れる、恐れて身が縮む思いがする、圧倒されるという言葉で、そこからありがたく思う、かたじけなく思う、もったいなく思うという意味に派生したものです。お礼を言われた際の返事として使うと「私を圧倒するような立場のあなたが、私なんかにお礼を言ってくださるなんて、ありがたくてもったいない」という意味となり、「とんでもないことです」よりも相手を上に見た表現になります。「恐れ入ります」は話し言葉として使われることが多く、書き言葉として使った場合はややくだけた印象となります。口頭で使った場合よりは敬意の度合いが低くなりますので、かしこまった相手への書面やメールなどでは「恐縮です」と表現しておきましょう。「恐縮です」は口頭で使っても敬意の度合は変わりませんので、同じ相手に「どういたしまして」と複数回伝えたい場合などに使い分けると良いでしょう。「大変恐れ入ります」や「大変恐縮です」と表現することもできます。
「どういたしまして」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
ビジネスメールや手紙では、「教えてほしい」の敬語を以下のように使います。「株式会社○○〇〇様
お世話になっております。
先日は、打合せで貴重なお時間をいただき、誠にありがとうございました。
紹介していただいた商品ですが、早速〇月〇日のイベント用に、〇〇個の発注を検討しております。
カラーは、ホワイトを希望しています。
納期や在庫状況などについて、ご教示いただきたく存じます。
お忙しいところ恐れ入りますが、宜しくお願いいたします。
○○株式会社〇〇部〇〇」
「株式会社〇〇〇〇様
いつもお世話になっております。
御社の○○システムについて、お伺いさせていただきたい点がございます。
○○のデータを集計し、グラフ化したいと考えております。
恐れ入りますが、詳しい使い方をご指導いただけませんか。
宜しくお願いいたします。
○○株式会社○○」
「どういたしまして」を上司に伝える際の敬語表現
上司からお礼を言われた際は「恐れ入ります」と返すのが一般的です。「お役に立てて光栄です」「お力になれたようで幸いです、またいつでもお申し付けください」などと表現しても、お礼を言われて嬉しい、ますます役に立ちたいという気持ちが伝わります。普段から親しくしているような上司であれば「とんでもないです」「とんでもないことです」と表現しても失礼には当たりません。「恐れ入ります」や「光栄です」などが固いと感じるようならこちらを使っても良いでしょう。ストレートに「こちらこそありがとうございます」と伝えても嬉しい気持ちが伝わりやすく、気持ちのよい関係を保つことができます。
「どういたしまして」の敬語での誤用表現・注意事項
敬語表現として挙げた「とんでもない」ですが、これは一言の形容詞です。「とんでも」が「ない」という二言の言葉ではないということに気を付けましょう。「とんでもありません」や「とんでもございません」といった使い方を耳にすることがあるかもしれませんが、これらは誤った使い方ですので注意が必要です。正しい敬語表現は「とんでもないです」「とんでもないことです」「とんでもないことでございます」です。「どういたしまして」の敬語での言い換え表現
・とんでもないです・とんでもないことです
・とんでもないことでございます
・恐れ入ります
・恐縮です
・恐縮でございます
・滅相もないことです
・お役に立てて光栄です
・お力になれて幸いです
・お気になさらないでください
・どうぞお気になさらないでください
・またいつでもお申し付けください
・こちらこそありがとうございます
《どういたしまして》の敬語
どういたしましての敬語表現
「どういたしまして」は丁寧な表現ですが敬語ではありません。自分がへりくだる言い方であり、相手を尊敬する意味を持っていないためです。どういたしましてを敬語で表現すると「恐れ入ります」「恐縮です」になります。「恐」という文字にはネガティブなイメージがありますが、かしこまったり謹む意味もあります。そのため、相手への感謝の気持ちを示すのに最適な表現です。相手への感謝以外に自分が得をした場合は「光栄です」「何よりです」が適しています。どういたしましての敬語での誤用表現・注意事項
「どういたしまして」は丁寧な表現なので敬語のように思えますが、言葉の意味としては「大したことではないので気になさらないでください」と解釈できます。そのため、目上の人や尊敬する人に向けて言うには不適切な言葉です。また、ビジネスの現場でも「適当にやっただけ」と言っているように思われてしまいます。どういたしましては「する」の謙譲語である「いたす」、丁寧語の助動詞である「ます」、そして助詞の「て」が組み合わさった言葉です。これによって「私がしたことなど大したことではない」という反語的な意味合いを持つようになります。柔らかい物言いでも相手の感謝の気持ちを否定するような感じになるため、聞く人によっては不快に思ってしまうのです。どういたしましての敬語での言い換え表現
どういたしましてを敬語で言い換える場合、相手への接し方によって適切な表現が変わります。自分が謙遜するなら「恐縮です」「とんでもないことです」など、相手の方が自分よりも優れている、素晴らしい人であると示す言葉が最適です。相手からの褒め言葉を受け入れる場合は「光栄です」「何よりです」のように、相手の言葉に感謝する気持ちを示します。また、「幸いです」のようにどのような相手や状況でも使える汎用性の高い表現もあります。いずれの言い換え表現も聞く側を不快にさせる要素を持っていないので、どういたしましてを敬語に言い換えるならこの言葉でなければいけないなどと強くこだわる必要はありません。自分が相手に感謝の気持ちを持っていることを示すことが大切なので、自分の方が上と解釈されるような表現にさえ注意すれば、基本的にはどう言っても間違いではありません。家族や親しい友人の他、目上の人や尊敬する人などどのような関係の相手でも不適切な言い方にはならないと言えます。一方で強く言い放つと嫌味に聞こえてしまうこともあるので、穏やかな口調でゆっくり言うのが感謝の気持ちを正しく伝える工夫です。- 《どういたしまして》の敬語のページへのリンク
