《できれば》の敬語
「できれば」の敬語表現
「できれば」を品詞分解すると、カ行の上一段活用の動詞「できる」と接続助詞の「ば」に分けられます。「可能である」という意味の「できる」が「ば」へ続く「仮定形」になっているため、「できれば」は「もし可能であれば」という条件を含んだ意味です。主に、何かを依頼するときのクッション言葉として使用されることが多い表現です。敬語には「丁寧語」「謙譲語」「尊敬語」の3種類があり、話す相手や状況などによって、どれを使用するかは変わってきます。ビジネスやメールでの使用時にも注意が必要です。
「できれば」の丁寧語に当たる言い方は「出来ましたら」です。相手を上に見たり、自分を下に見せて使う敬語ではないため、単に丁寧な言葉を使用すればよいという場面では適しています。明らかに目上である相手に対しては、使用は控えるべきです。
「できれば」の謙譲語には、「恐縮ですが」や「恐れ入りますが」などが当てはまります。自分を下げることによって相手を立てる表現なので、上司などの目上の人に対して使用するのに適しています。また、「できれば」の尊敬語は「よろしければ」や「差し支えなければ」です。自分がへりくだる謙譲語とは違い、尊敬語は相手自体を上に見ます。
「できれば」の敬語の最上級の表現
3種類の敬語のうち、最も尊敬の度合いが低いのは丁寧語です。尊敬語と謙譲語は視点を置く対象が違うだけで、どちらが上でどちらが下ということはありません。なるべく強い尊敬の意味を込めて「できれば」を使用したいときには、謙譲語の「恐縮ですが」「恐れ入りますが」や、尊敬語の「よろしければ」「差し支えなければ」を使用すべきです。また、「恐れ入りますが、お名前をお聞きしてもよろしいでしょうか」や「差し支えなければ、こちらの資料にお目通し頂けますでしょうか」のように語尾を断定的にしないことで、婉曲的に依頼する敬語表現になります。
「できれば」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
ビジネスメールや手紙などで相手に依頼するときには、「お手数おかけしますが」や「ご多忙の中、大変恐縮ですが」などの表現を使用します。依頼する相手や依頼の内容によっては、「誠に勝手なお願いとは承知しておりますが」という書き方をする場合もあります。また、締めのフレーズとして使用する表現は、「引き続きよろしくお願いいたします」や「ご協力頂けますよう、お願い申し上げます」などです。依頼の内容なので、「ご確認ください」は「ご確認頂けますでしょうか」、「してください」は「して頂けますでしょうか」のように疑問形で締めて、婉曲的な言い回しにします。
「できれば」を上司に伝える際の敬語表現
上司に対して使用する敬語は、基本的には尊敬語です。場合によっては丁寧語を使用するときもありますが、一般的に丁寧語はあまり使われません。よって、「出来ましたら」「よろしければ」「差し支えなければ」になります。また、スピードを重視するビジネスの世界においては、上司に対して話しかけること自体が迷惑な行動と感じられる場合もあります。そのような状況で話しかける際に使用する表現は、「お手すきでしたら」です。「することがなくて暇なこと」や「手のあいていること」という意味の「手すき」に尊敬語の「お」がついた言葉のため、上司を含めて目上の人全般にしようできる尊敬表現です。
しかし、仕事中に「手があいている」ことを前提にしていて、使いづらいこともあります。その場合は「お時間がありましたら」を使用すべきです。「お時間がありましたら」は相手を急かせるような言い方ではなく、相手にとって答えやすいというメリットもあります。
「できれば」の敬語での誤用表現・注意事項
「できれば」の敬語表現として「可能ならば」を考えがちですが、「可能ならば」は敬語ではありません。「可能であれば」と丁寧に言ったつもりでも、「可能ならば」と意味は同じです。「可能ならば」を敬語として使用する場合は、「可能でしたら」や「可能でありましたら」になりますが、その2つは丁寧語です。尊敬語や謙譲語ではありません。しかし、「可能でございましたら」は謙譲語の一種ともいわれる丁重語なので、目上の人に対しても使用できます。ただし、「可能」という単語には「能力」を強く連想させる印象があります。状況によっては相手の能力を見くびっているように受け止められることもあるので、使用する際には十分に注意が必要です。また、尊敬語の「ご」をつけて、より丁寧に言おうとしても、「ご可能でございましたら」は二重敬語であり、文法的に正しくありません。
「できれば」の敬語での言い換え表現
「できれば」の言い換え表現は「できる限り」「可能な限り」「極力」などですが、「可能でございましたら」「差し支えなければ」「支障がなければ」「希望としては」「出来ましたら」などの控えめな言い回しが敬語といえます。「できれば」や、それに類似する表現では範囲が広すぎるため、状況をある程度把握できている場合は、「お手すきでしたら」や「時間がありましたら」と言うと、時間を対象にしていることがはっきりします。反対に、「恐縮ですが」や「恐れ入りますが」を使用すると、範囲がより広くなります。
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