《可能であれば》の敬語
「可能であれば」の敬語表現
「可能であれば」の敬語表現は「可能でしたら」「可能でありましたら」です。「可能であれば」には敬語の要素がないので、「あれば」を丁寧語の「でした」「ありました」に置き換えた形です。あるいは、「可能でございましたら」という表現もできます。「可能であれば」の敬語の最上級の表現
「可能であれば」の敬語の最上級は、「差し支えなければ~お願い申し上げます」「よろしければ~お願い申し上げます」といった形です。そもそも、「可能」という言葉は目上の相手にふさわしくありません。「可能であれば」とは「もしもできるなら」という意味なので、相手の能力をみくびっているようなニュアンスになりかねないからです。最上級の敬語にしたいときは「可能」を別の言葉にして、丁寧に懇願する「お願い申し上げます」を付け加えるのが適切です。「可能であれば」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
「可能であれば」の敬語はビジネスシーンでも頻繫に使われてきました。以下、ビジネスメールや手紙における「可能であれば」の敬語の例文です。「可能でしたら、来週中にお客様のもとまでご訪問したいです。御社のご都合はいかがでしょうか。私は火曜日以降は調整できます」
「現在の生産管理システムに問題点があるとうかがいました。可能でありましたら、詳しくお話をうかがえないでしょうか」
「可能でございましたら、御社からもご提案してください。正直なところ、弊社からの提案だけではプロジェクトが行き詰っております」
「差し支えなければ、明日の午前中に打ち合わせをお願い申し上げます。それから、先方に向かうのはいかがでしょうか」
「ご都合がよろしければ、セミナー講師をお願い申し上げます。弊社といたしましては、ほかに適任となる方を思いつきません」
「お心遣いありがとうございます。確かに、御社の車で向かった方が効率的かと存じます。差し支えなければ、お願い申し上げます」
「よろしければ、詳しいご説明をお願い申し上げます。御社の新商品について、弊社の担当者は非常に興味を示しております」
「可能でしたら、私が部長にお会いしたいです。おそらく、直接お話をすることで解決することはたくさんあると思います」
「可能であれば」を上司に伝える際の敬語表現
「可能であれば」を上司に伝えるときは、「差し支えなければ~お願い申し上げます」「よろしければ~お願い申し上げます」などの形にしましょう。なぜなら、「可能」という言葉は上司に適切ではないからです。「可能でしたら」「可能でございましたら」と伝えてしまうと、下の立場から上司の能力を疑っているような印象になりかねません。ただし、「差し支えなければ~お願い申し上げます」などの表現はかなり堅苦しいので、立場が近い上司相手には「可能でしたら」「可能でありましたら」でも通用します。「可能であれば」の敬語での誤用表現・注意事項
「可能であれば」の最上級の敬語でよくある間違いが「差し支えございませんでしたら」です。「差し支えない」の「ない」を丁寧語の「ございません」に変えてしまった文章です。「差し支えない」はそれだけでひとつの言葉になっているので、「ない」を丁寧語に変える必要はありません。ただ、「差し支えない」だけでは敬語表現が含まれていないので、その後に「お願い申し上げます」「お願いできないでしょうか」などを付け加えるのが一般的です。「可能であれば」の敬語表現を使うときは、シチュエーションやタイミングに注意しましょう。どのような場合でも「可能でしたら」と言ってしまうと、「可能でなければやらなくてもいい」という意味になりかねません。切羽詰まっている状態で「可能でしたら」を使うのは得策でないといえます。そのようなときは「どうしてもしてほしい」という意思を伝えられるよう、「申し訳ございませんがお願いします」「なにとぞよろしくお願いします」などと、はっきり要求しましょう。
そのほか、自明の理に対して「可能であれば」を使うのは、いくら敬語表現に直していても失礼にあたります。たとえば、デザイナーに「可能でしたら、設計をお願いできませんか」というのは、相手の能力を評価していない言葉になりかねません。デザイナーが設計を仕事にしているのは自明の理になるからです。可能かどうかが明らかに分かっている状況では、「可能であれば」の敬語表現を用いないようにしましょう。
「可能であれば」の敬語での言い換え表現
「可能であれば」の敬語は「差し支えなければ」「問題ございませんでしたら」「お手すきでしたら」などに言い換えられます。いずれも、何らかのお願いをしたいときのクッション言葉として使われてきました。特に目上へのお願いは直接的に伝えにくいので、これらの言葉を前置きするのが賢明です。そのほか、婉曲表現で「~していただけたら幸いです」という言葉遣いもあります。このフレーズははっきりとお願いをしているわけではありません。ただし、「もしもこれをしてもらえるなら、私はとても助かります」という意味が込められています。つまり、「可能でしたら」の後にお願いをする形とほとんど同じ意味だといえるでしょう。社外の人間や立場の離れた上司など、強くお願いできない相手に使う言い回しです。
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