Super Audio CD 仕様

Super Audio CD

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/12 14:14 UTC 版)

仕様

規格書はその表紙の色からScarlet Book(スカーレットブック)と呼ばれ、Part 1のPhysical Specification、Part 2のAudio Specification、Part 3のCopy Protection Specificationから構成される[4][1]

ディスクの構造

SACDの2層構造

CDと同様に直径120 mm、厚さ1.2 mmの円盤である[5]。スーパーオーディオCDには2層分の記録領域があり、このうち1層を通常のCD-DAとすることもできる(SACD/CDハイブリッド仕様)[5]。1層(SL)でSACDプレーヤーのみで再生できるソフトや、2層(DL)ともSACD層で構成された長時間SACDも製作可能である[5]。SLディスクの容量は4.7 GBで、DLディスクの容量は8.5 GBであり[5]、物理的な構造ではCDよりはDVDに近い。

オーディオフォーマット

符号化方式にはCDで採用されたリニアPCMではなく、Direct Stream Digital(DSD)が採用された[5]。DSDはΔΣ変調を施したデジタル信号がそのまま記録され、PCMでのデシメーション英語版や補間などによるフィルタ処理によって生じる量子化誤差の影響を受けないため、音源により忠実なデジタル信号を保持できる[5]

サンプリングレートは2.8224 MHzでSACDに記録されたデジタル信号は原理的にはローパスフィルタを通すだけでアナログ音声信号に変換することができる。

ステレオ(2 ch)とサラウンド(最高5.1 chサラウンドまで)をサポートする。ステレオおよびマルチチャネルにはそれぞれ最大255のトラックを納めることが可能であり、各トラックには最大255のインデックスを付与することが可能である[6]

記録されるDSDには非圧縮かロスレス圧縮があり、ロスレス圧縮にはDirect Stream Transfer(DST)が採用されている[6]。ステレオ録音の場合、片面1層でも4時間以上の収録が可能であり、長大なオペラなども1枚に収められる。ただし、CDフォーマットとのハイブリッド盤の場合、そちらの収録時間(1枚70分余り)に合わせることになる。

ボリューム構造

ファイルシステムISO 9660およびUDFが採用されている[6]。TOCにはディスクのタイトル、アーティスト名、ジャンル、ディスク作成日などが最大8言語で記録される[6]。その次はステレオエリアもしくはマルチチャネルエリアであり、それぞれのエリアには、エリアTOCとトラックエリアの領域がある。エリアTOCには総演奏時間、トラック数、演奏開始時間などが記録され、トラックエリアにはDSDが記録される[6]

著作権保護

スーパーオーディオCDは、コンテンツを再生させるまでに、電子透かしウォーターマーク)、SACD Mark、Pit Signal Processing(PSP)というデータ保護機構(コピーガード)が採用されている[6]。電子透かしでは正規品か否かを判別し、SACD Markではライセンスを受けていないドライブからの認識ができないようにし、PSPによってアクセス制御を行う[6]。加えて、TOC以外の領域にはスクランブルが施されており、これはPSPなどから生成される鍵によってのみ復号できる[6]。このようにデジタルデータを複写できても、それだけでは再生できないようにしている。

当初は著作権保護のため、S/PDIFなどからのデジタル出力が許可されていなかったが、これではD/Aコンバーター分離型プレーヤーすら製作できないことから、2005年にはデノンアキュフェーズといったオーディオ機器メーカーが、各社独自の方式でデジタル出入力が可能な機器を発売、伝送にはi.LINKを用いた機種が多く登場した。HDMI 1.2a以降では、DSDデータの転送が可能となっている。


注釈

  1. ^ もっとも、パイオニアは当初DVDオーディオ陣営であったが、2001年以降に発売された新規機種からスーパーオーディオCD対応のDVDオーディオプレーヤーを発売している経緯がある(2008年度に発売された製品まで)。

出典

  1. ^ a b 鈴木 & 前田 2001, p. 808, 3.1 基本コンセプトと規格書.
  2. ^ 三浦孝仁「『ハイレゾ、発展の10年』: ハイレゾオーディオ発展の流れ」『JASジャーナル』第62巻第4号、日本オーディオ協会、2022年。 
  3. ^ 鈴木 & 前田 2001, p. 806, まえがき.
  4. ^ Specification Books (SACD) Orders”. フィリップス. 2020年8月8日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 鈴木 & 前田 2001, p. 808, 3.2 DSD信号とディスク・バリエーション.
  6. ^ a b c d e f g h 鈴木 & 前田 2001, p. 809, 3.3 コンテンツ.
  7. ^ DV-RA1000HD
  8. ^ News and Information "SCD-1"』(プレスリリース)ソニー、1999年4月6日https://www.sony.jp/CorporateCruise/Press/199904/99-002/2024年2月11日閲覧 
  9. ^ Super Audio CD Player”. ソニー. 2024年2月11日閲覧。





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