90式戦車 価格と調達

90式戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/15 20:34 UTC 版)

価格と調達

冬季迷彩が施された90式
陸上自衛隊広報センターにて2020年春より屋外展示となった試作車
92式地雷原処理ローラを装備した車輌

1990年(平成2年)度-2009年(平成21年)度までの19年間で341輌が調達された[35]。年平均の調達台数は約18輌。調達価格は整備用工具や予備消耗部品が含まれた総合価格となっている。バブル景気の真っ只中に採用が決定され、量産効果による価格低下も見込まれて1輌約11億円という価格でも迅速に配備が可能という見通しだったが、制式化直前のバブル崩壊と翌年のソビエト連邦の崩壊に伴う防衛費の減少・削減、こんごう型護衛艦イージス艦)など他の正面装備の拡充や戦車保有数の削減などと時期が重なったこともあって、予想通りの調達ペースは得られなかった。

調達当初の3年間は1輌約11億円前後であり、少数生産にとどまる以上は、開発費や設備投資の消化も考えると1輌当たりの価格が高騰する事情があるが、4年目以降は1輌約9.4億円となり、継続的な調達による量産効果で2001年(平成13年)度以降は1輌約8億円(最低は約7億9,000万円)まで単価が減少した。

90式戦車は他国の第3世代戦車に比べて高価であり、外国産戦車を輸入すべきだったと批判されることがあるが、他国戦車を輸入した際の価格に関しては軍事情報雑誌Jane's発行のレポートによれば、アメリカM1A2エイブラムス及びドイツレオパルト2A6は輸出実績でいずれも1輌あたり10億円を超えており、フランスルクレールは自国型でもそれに並ぶ価格となっている。

90式の調達は2009年(平成21年)度で終了し、2010年(平成22年)度からは10式戦車の調達が行われている。

90式戦車の調達数[36][37]
予算計上年度 調達数
平成2年度(1990年) 30輌
平成3年度(1991年) 26輌
平成4年度(1992年) 20輌
平成5年度(1993年) 20輌
平成6年度(1994年) 20輌
平成7年度(1995年) 20輌
平成8年度(1996年) 18輌
平成9年度(1997年) 18輌
平成10年度(1998年) 17輌
平成11年度(1999年) 17輌
平成12年度(2000年) 18輌
平成13年度(2001年) 18輌
平成14年度(2002年) 18輌
平成15年度(2003年) 17輌
平成16年度(2004年) 15輌
平成17年度(2005年) 12輌
平成18年度(2006年) 11輌
平成19年度(2007年) 9輌
平成20年度(2008年) 9輌
平成21年度(2009年) 8輌
合計 341輌

注釈

  1. ^ かつては第1機甲教育隊にも配備されていた。
  2. ^ 後継の10式戦車では情報モニターの設置など、操作計器の簡素化も行われている。
  3. ^ 各国の軍事機関を例に挙げても米軍のMIL規格、日本の防衛省規格NDSなど様々な基準・仕様・規格が存在する。
  4. ^ 自己位置評定のみ。
  5. ^ 90式より高腔圧に対応
  6. ^ 2008年度予算から初度費が一括計上されており、10式の単価には初度費は含まれていない。
  7. ^ 平成元年度防衛白書中の資料「平成元年度主要事業の経費」によれば、56両に対し22,175百万円。
  8. ^ 1965年と2022年の物価を消費者物価指数で換算。
  9. ^ 2005年の9月12日・9月19日に90式戦車と74式戦車が、2006年の8月31日・9月13日と2007年の8月31日・9月12日と2008年の9月2日・9月10日と2009年9月1日・9月9日に90式戦車が移動。
  10. ^ 90式より5トンから10トン以上重い主力戦車を保有する欧米でもゴムパッド付きの履帯で、一般公道を自走しての移動が行われている。
  11. ^ 上富良野駐屯地から上富良野演習場、鹿追駐屯地から然別演習場北千歳駐屯地または北恵庭駐屯地から北海道大演習場といった各駐屯地から演習場までの国道や道道・市道にはアスファルトでは無くコンクリート補強された道路が設置されており、当該路面を戦車が通常の履帯で走行する状態を確認する事ができる。
  12. ^ JR・旧国鉄の在来線は横幅3メートル弱の車両を前提に設計されているが、74式以降はいずれも車幅が3メートルを超えている。なお、戦車以外では、在来線で施設科などの小規模な輸送が行われている。

出典

  1. ^ 第3世代戦車の最高峰「90式戦車」、攻守の能力を高次元でまとめた陸上自衛隊の現用主力”. Motor-Fan (2021年9月25日). 2023年4月3日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g 古是三春 & 一戸崇雄, p. 113.
  3. ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 112.
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  5. ^ 『90式戦車を制式化』”. 戦車兵のブログ. 2022年11月8日閲覧。
  6. ^ a b c d 古是三春 & 一戸崇雄, p. 114.
  7. ^ a b 防衛庁技術研究本部五十年史 II 技術研究開発 2.技術開発官(陸上担当). 防衛省. (2002-11-15). pp. 44-45. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_04.pdf?contentNo=4&alternativeNo= 
  8. ^ a b c d e f 古是三春 & 一戸崇雄, p. 115.
  9. ^ 自衛隊新戦車パーフェクトガイド 2011, p. 36.
  10. ^ 自衛隊新戦車パーフェクトガイド 2011, p. 34.
  11. ^ a b c 90式 走行中射撃も可能”. 時事ドットコム. 2021年1月14日閲覧。
  12. ^ a b 丸 2002, p. 73.
  13. ^ a b 丸 2002, p. 74.
  14. ^ 丸 2002, p. 76.
  15. ^ 『月刊グランドパワー』2006年4月号では、記者が「ほぼ100パーセント」と表現している
  16. ^ コーエー刊『戦車名鑑1946〜2002 現用編』51頁
  17. ^ 『月刊グランドパワー』2006年3月号
  18. ^ a b c d e 丸 2002, p. 77.
  19. ^ 三菱重工(株)”. 活動報告 その他. 衆議院議員 坂本剛二 (2004年11月11日). 2006年1月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月28日閲覧。
  20. ^ http://i.imgur.com/EHxDs87.jpg
  21. ^ a b 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊)
  22. ^ [1](2007年9月28日時点のアーカイブ)、[2](2012年6月12日時点のアーカイブ
  23. ^ 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊p135、一戸崇雄)
  24. ^ テレビ朝日 『カーグラフィックTV』 1996年8月24日放映 No.564「陸上自衛隊の働くクルマ逹」より
  25. ^ http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23054E_0601.pdf MTU社MB873エンジン公式資料 (PDF)
  26. ^ http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23112E_0601.pdf MTU社MT883エンジン公式資料 (PDF)
  27. ^ 防衛庁技術研究本部五十年史 II 技術研究開発 9.第4研究所. 防衛省. (2002-11-15). p. 302. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_11.pdf?contentNo=11&alternativeNo= 
  28. ^ a b https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/13/jizen/honbun/17.pdf 平成13年度政策評価書 事前の事業評価(本文) (PDF)
  29. ^ 柘植優介「陸自期待のルーキー、10式戦車の姿」『PANZER』第470集、アルゴノート社、2010年9月、22-33頁。 
  30. ^ “「イーグル・アイ」 「玄武2010」で2師団 C4ISRで継戦能力保持”. 朝雲新聞. (2010年11月4日). http://www.asagumo-news.com/news/201011/101108/10110901.html 2010年11月17日閲覧。 
  31. ^ 鈴木利治「第2戦車連隊−訓練検閲でC4I能力を存分に発揮」『陸上自衛隊の戦闘力−10式戦車』イカロス出版〈イカロス・ムック〉、2021年、18-23頁。ISBN 978-4802210492 
  32. ^ https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/21/jizen/honbun/02.pdf 平成21年度政策評価書 事前の事業評価(本文) (PDF)
  33. ^ Forecast International Re-evaluates Main Battle Tank Market
  34. ^ http://doc.danfahey.com/Tanks-ArmorMag.pdf ARMOR-July-August 1999 (PDF)
  35. ^ 装甲車両・火器及び弾薬の開発・調達について (PDF) - 防衛省経理装備局艦船武器課 平成23年2月
  36. ^ JapanDefense.com
  37. ^ 防衛白書の検索
  38. ^ 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会 - 第5回配布資料 「防衛生産・技術基盤」平成22年(2010年)4月(防衛省) (PDF)
  39. ^ レオパルト2の方向指示器(後部)が見える写真/ルクレールの方向指示器(前部)が見える写真
  40. ^ “戦車、民間フェリーで移動…北海道から大分へ”. 読売新聞. (2011年10月26日). オリジナルの2011年10月28日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111028183556/http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111026-OYT1T00596.htm 
  41. ^ “自衛隊、南西シフト鮮明=九州・沖縄で相次ぎ演習-鉄道、民間船で列島縦断”. 時事通信. (2011年11月3日). http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011103100019&google_editors_picks=true [リンク切れ]
  42. ^ 追跡・静岡:戦車砲身破裂 重なった人為ミス 届かなかった中止命令 /静岡
  43. ^ 戦車横転で隊員死亡 北海道、陸自訓練中
  44. ^ 20170604 90式戦車と音楽隊の共同演奏@真駒内駐屯地 - Youtube






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