091型原子力潜水艦 設計

091型原子力潜水艦

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/10 07:13 UTC 版)

設計

艦体

船体は涙滴型・複殻式構造であり、3番艦以降は艦体が8メートル延長されている。搭載する魚雷の数を減らすことなく対艦ミサイルを搭載できる垂直発射管を搭載しているとみられていたが、実際には従来の魚雷発射管から水平に発射されるものであった。艦体が延長された理由は、航行時の(『割れ鐘を叩いているような』と表現されるほどの)雑音対策によるものと見られている(このため401号艦、402号艦は母港で長期係留状態にある)。雑音の音圧レベルは、401号艦・402号艦が160~170デシベルで(スキップジャック級旧ソ連ノヴェンバー型などの初期の原潜と同水準)であるが、403号艦から405号艦は改善され、140~150デシベル(パーミット級と同程度。ロサンゼルス級は105~125デシベル)。しかし依然として静粛性に欠け、アメリカ海軍海上自衛隊には容易に探知されている。

機関

主機に加圧水型原子炉 ターボ・エレクトリック方式(タービン減速方式との説もある)を採用した。しかし、陸上用加圧水型原子炉を潜水艦用原子炉として十分な研究なしに改造・導入したため、構造的欠陥が原因と考えられる放射能漏れ事故が頻発した。1番艦は1974年に就役したが、約10年間は完全に運用できる状態ではなかった。また、中国国内には被曝した潜水艦乗員らを対象とする、放射能汚染障害専門病院「海軍409核傷専科医院」が新たに設立されている。

運用

中華人民共和国1950年代後期から原子力潜水艦開発に着手し、1番艦「長征1号」(401号艦)は1974年に完成した。続く4隻の潜水艦は1980年代に就役した(中国名:長征2~5号)。また本型の艦体を延長し、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を搭載した夏型も完成しているが1隻しかないため、出港は稀である。

5隻が建造され、全艦とも北海艦隊青島)に配備された。複数回の放射能漏れ事故を起こしたが、「長征1号」は2003年に予備艦となり、2013年に退役するまで、長らく艦籍にあった。

2004年11月ロサンゼルス級原子力潜水艦に追跡されていた1艦がグアム島近海まで航行した後、石垣島付近で漢級原子力潜水艦領海侵犯事件を起した。その際、海上警備行動が発令され、海上自衛隊に探知・追跡された。

海軍博物館に係留される「長征1号」(青島市)

既に2隻が退役しており、稼働するのは3隻のみである。2017年には、「長征1号」が中国人民解放軍海軍博物館中国語版に展示されることが報じられた[3]

同型艦

艦号 艦名 建造工廠 起工 進水 就役 退役 所属艦隊
401 長征1号 渤海造船廠 1968年 1970年 1974年 2013年
402 長征2号 1974年 1977年 1980年 2001年
403 長征3号 1980年 1983年 1984年 北海艦隊
404 長征4号 1984年 1987年 1988年
405 長征5号 1987年 1990年 1990年

注釈

  1. ^ 皮肉にも、原子力潜水艦の長所である足の速さで海上自衛隊潜水隊群を振り切る事が出来た。

出典

  1. ^ http://www.globalsecurity.org/military/world/china/type-93.htm
  2. ^ Type 091 Han Class
  3. ^ 「海外艦艇ニュース 中国の原潜第1号を博物館へ」 『世界の艦船』第863集(2017年8月特大号) 海人社


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