首都圏新都市鉄道TX-2000系電車 内装

首都圏新都市鉄道TX-2000系電車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/20 10:54 UTC 版)

内装

内装に関する記述は先行試作車・量産車を基本とし、増備車の変更点については別途記載する。

車内は白色を基調とし、客用ドアも同色の化粧板仕上げである。各ドア下部には滑り止めを兼ねた黄色い点字ブロックが貼り付けられているのに加え、ドアの開閉に合わせてドアチャイムが鳴動するなど視覚障害者にも配慮したものとなっている。また、編成中2両(2・5号車)に車椅子スペースを持つ。

座席は全車両住江工業製であり、ロングシートを基本とするが、編成の中央部分の2両(3・4号車)はボックスシートとロングシートの混在するセミクロスシート配置とした。なお、混雑緩和を目的として23編成のうち16編成においてボックスシートをロングシートに改造することが首都圏新都市鉄道より発表されており[5]、2017年4月27日の時点で第54編成と第56編成の2編成がロングシート化の改造を終えて運用に就いている[6]。2018年6月には中期経営計画で未改修の7編成についてもロングシート化が発表されており[7]、2020年までに後述の事故で休車中の71編成を除いた全車が施工された。

また、着席区画の明確化と同時に混雑時につかむことが出来たり、着席・起立時の補助とすることも出来る握り棒(スタンションポール)が設置されている。つり革は握りやすい三角形タイプで、優先席部分はオレンジ色としてある[注釈 1]

側面の窓は大きな1枚ガラスを用いている。1990年代以降の新型車両では紫外線カット機能付きのガラスを採用する代わりにカーテンを廃するものも出てきたが、本系列では透明ガラスと巻き上げカーテンを採用した。この窓は開閉不能のはめ殺しであるが、空調設備が故障した時の換気用として車両連結面(妻面)に開閉可能な小窓を設置している。

乗客用車内案内表示装置としてLED式の文字スクロールによるものと路線図式のものが設置されている。他事業者では路線図式のものはLED式の文字スクロールによる表示に取って代わったところが多く、新たに採用しているところは少ない。また、自動放送装置を搭載しており、日本語英語に対応している。

増備車の変更点

1次増備車より

1次増備車から火災対策の強化として天井部の空調装置ルーバの材質をアルミ合金製に変更したほか、床敷物を塩化ビニル材からゴム材に変更した[3][1]。ドア戸袋部の引き込まれ防止ゴムの材質を硬くし、乗客の荷物等が引き込まれるのを防止できるようにした[3]。座席モケットのクッション材を改良し、より柔らかいものにした[3][1]。なお、このグループの床敷物設置方法には、のちに不備があることが判明し、国土交通省から改善指示が出されている(後述)。

また、安全対策から7人掛け座席間の枕木方向につり革を増設、女性専用車にもなるつくば方先頭車1号車と優先席部にある一部のつり革(落成時からオレンジ色)のつり高さを50mm低くした[3][1]。このほか、車内の非常用ドアコックなどの、車内ステッカーの一部を蓄光式ステッカーに変更、乗務員室背後の電磁鎖錠用の通行表示灯(仕切開戸解錠時に通行可を表示)を大型化した[3][1]

1次増備車以降は座席やガラスに記載される「優先席」のロゴが異なり、また携帯電話のマナーを記載したステッカーも別のものに変更されている[注釈 2]

2次増備車より

2次増備車では省エネルギー化のため、室内灯を蛍光管式からLED照明に変更した[8][9] 。LED照明を採用することで消費電力は蛍光灯よりも約23%削減されている[8][9]。座席については座り心地を改善するために座席構造を根本的に見直している[8][9]。ロングシート、クロスシートともに座席フレームの構造を改良することで座席詰め物を厚くさせた他、バケット形状が変更されており、座席座り心地の大幅な改善が図られている[8][9]

冬期の車内環境を改善するため、ロングシート車では約20%(1基あたりの容量は750W→960Wまたは750Wに)、クロスシート車では約10%(1基あたりの容量は400W→750Wまたは450Wに)暖房容量の増加が図られている[8][9]。同時に取り付け位置を若干下げたことにより、床面付近の足元温度を約3℃向上させ、車内輻射熱の増加が図られている[8]

視覚障害者への配慮として従来からのドア開閉チャイムに加えてドア開案内チャイムを付加し、駅停車中に5秒間隔でチャイムを鳴動させている[8]。つり革はロングシート一般席部のつり革のつり位置を50mm下げ、床面高さ1,600mmに統一した[8]。また、車内換気量増加のため、各車の車端部優先席部と車椅子スペース部の側窓を200mm開閉できるように改良した[8][9]

無線LAN

第60編成は落成時から、他編成は改造により無線LAN機器を搭載。2005年8月24日の開業日から翌2006年(平成18年)7月31日まで列車内無線LAN接続トライアル用に供された。

無線LAN接続商用サービス開始の決定により、2006年7月31日までに全16編成が無線LAN接続対応となり、商用サービスは同年8月24日から開始された。当初はNTTドコモの「Mzone」と「moperaU「公衆無線LAN」コース」のみが提供されていたが、同年11月9日からは東日本電信電話(NTT東日本)の「フレッツ・スポット」も提供が開始された。なお、トライアルユーザーに対しては8月24日から1か月間商用環境の体験キャンペーンなどが実施された。


注釈

  1. ^ 落成当初は白色だった。
  2. ^ 1次増備車以外ものちに優先席付近は1次増備車と同じものに交換されている。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j 鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2009年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2009年版「首都圏新都市鉄道TX-2000系増備車」記事。
  2. ^ 輸送力増強に向けて車両を増備! 3編成18両(TX-2000系車両)を導入します。 アーカイブ 2012年10月7日 - ウェイバックマシン(首都圏新都市鉄道株式会社 ニュースリリース)
  3. ^ a b c d e f g h i j 交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2008年8月号「TX-2000系増備車両について(第67 - 70編成)」記事。
  4. ^ 2008年度増備車については、交通新聞社「鉄道ダイヤ情報」2008年8月号においてTX-2000系増備車両ならびに鉄道図書刊行会「鉄道ピクトリアル」2009年10月臨時増刊号鉄道車両年鑑2009年版においてTX-2000系増備車との記載がある。ただし、2012年度増備車の解説記事『レールアンドテック出版「鉄道車両と技術」No.192』ならびに『日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2013年1月号』においては2008年度増備車は1次増備車(一次増備車)、2012年度増備車は2次増備車(二次増備車)との記載がある。
  5. ^ 平成31年度末の輸送力増強に向けて車両5編成(30両)を増備します”. 首都圏新都市鉄道 (2016年10月19日). 2019年1月3日閲覧。 アーカイブ 2019年1月11日 - ウェイバックマシン
  6. ^ TX-2000系にロングシート改造車が登場”. 鉄道ファン・railf.jp. 交友社 (2017年4月28日). 2017年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月29日閲覧。 アーカイブ 2017年4月29日 - ウェイバックマシン
  7. ^ つくばエクスプレス 中期経営計画(2018〜2020年度)” (PDF). 首都圏新都市鉄道 (2018年6月). 2019年1月3日閲覧。 アーカイブ 2018年11月22日 - ウェイバックマシン
  8. ^ a b c d e f g h i レールアンドテック出版「鉄道車両と技術」No.192「つくばエクスプレスTX-2000系 2次増備車の概要」記事。
  9. ^ a b c d e f g 日本鉄道車両機械技術協会「ROLLINGSTOCK&MACHINERY」2013年1月号研究と開発「TX-2000系 二次増備車の概要」記事。
  10. ^ 定格出力190kW、定格回転数2,310rpm
  11. ^ KW-167 KW-168/首都圏新都市鉄道TX-1000系(鉄道ホビダス台車近影・インターネットアーカイブ)。
  12. ^ 交通新聞社『鉄道ダイヤ情報』2005年9月号特集「開業目前!つくばエクスプレス」p.25。
  13. ^ a b c d e f 鉄道図書刊行会『鉄道ピクトリアル』2013年5月号「乗務員から見たATOシステム - 運転操作をしなくても良い運転士の実務 - 」pp.52 - 57。
  14. ^ a b c d e f 日本鉄道運転協会『運転協会誌』2017年11月号自動運転特集「首都圏新都市鉄道 ニーズに対応した快適性を求めて」pp.9 - 11。
  15. ^ つくばエクスプレス6両から8両編成に 混雑緩和へ沿線自治体は歓迎 アーカイブ 2019年9月30日 - ウェイバックマシン 毎日新聞2019年9月26日 09時32分
  16. ^ 開業10周年記念 春休み特別企画 2月27日(土)〜4月10日(日)まで『TXチャギントン スタンプラリー』を開催します。-TXチャギントントレインが運行します-”. 首都圏新都市鉄道 (2016年2月12日). 2017年2月27日閲覧。 アーカイブ 2017年1月14日 - ウェイバックマシン
  17. ^ 春休み特別企画 2月25日(土)〜 4月9日(日)までの期間『TXチャギントン スタンプラリー2017』を開催!〜期間中、TXチャギントントレインを運行!!〜”. 首都圏新都市鉄道 (2017年2月20日). 2017年2月27日閲覧。 アーカイブ 2017年2月28日 - ウェイバックマシン
  18. ^ つくばエクスプレスで「TXチャギントントレイン」運転 アーカイブ 2017年2月27日 - ウェイバックマシン - 交友社『鉄道ファン』railf.jp鉄道ニュース 2017年2月26日
  19. ^ TX(つくばエクスプレス)を運営する首都圏新都市鉄道(株)の公式Twitterです。
  20. ^ a b c 鉄道車両の床材料の交換指示について(国土交通省報道発表資料・インターネットアーカイブ)。
  21. ^ a b c 鉄道車両の床材料の改良計画について(国土交通省報道発表資料・インターネットアーカイブ)。
  22. ^ a b c d e TX 交直流車の構体床板(機器吊り用レール)の不具合対策とその後について” (PDF). 首都圏新都市鉄道 (2019年7月18日). 2019年10月12日閲覧。 アーカイブ 2019年10月12日 - ウェイバックマシン
  23. ^ a b c “重要機器を固定するボルトを支えるパーツに異常…つくばエクスプレスのTX-2000系”. レスポンス. (2019年5月27日). オリジナルの2019年10月12日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20191012140949/https://response.jp/article/2019/05/27/322804.html 2019年10月12日閲覧。 
  24. ^ a b 原因は製造過程に…不具合が発生したTX-2000系電車のその後”. レスポンス (2019年7月19日). 2019年10月12日閲覧。 アーカイブ 2019年10月12日 - ウェイバックマシン
  25. ^ TX 交直流車の構体床板(機器吊り用レール)の不具合について” (PDF). 首都圏新都市鉄道 (2019年5月24日). 2019年10月12日閲覧。 アーカイブ 2019年10月12日 - ウェイバックマシン





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