頭上の敵機
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頭上の敵機 | |
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Twelve O'Clock High | |
ポスター(1949) | |
監督 | ヘンリー・キング |
脚本 |
ヘンリー・キング(クレジット無し) サイ・バートレット バーン・レイ・Jr |
原作 |
バーン・レイ・Jr サイ・バートレット 『Twelve O'Clock High』(1948年出版) |
製作 | ダリル・F・ザナック |
出演者 |
グレゴリー・ペック ヒュー・マーロウ ゲイリー・メリル ミラード・ミッチェル ディーン・ジャガー |
音楽 | アルフレッド・ニューマン |
撮影 | レオン・シャムロイ |
編集 | バーバラ・マクリーン |
製作会社 | 20世紀フォックス |
配給 |
20世紀フォックス セントラル映画社 |
公開 |
1949年12月21日 1950年11月14日 |
上映時間 | 132分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
興行収入 | $3,225,000 (アメリカ国内のみ)[1] |
『頭上の敵機』は第22回アカデミー賞で4部門にノミネートされ、ディーン・ジャガーが助演男優賞を、トーマス・T・モールトンが録音賞を受賞している[2]。1998年にアメリカ議会図書館アメリカ国立フィルム登録簿に文化的、歴史的、芸術的に顕著な作品として登録されている。
ストーリー
1949年、イギリスで休暇中のアメリカの弁護士で元アメリカ陸軍航空軍のハーヴィ・ストーヴァル(ディーン・ジャガー)は、ある骨董品店のショーウインドウにみなれたトビー・ジョッキ(老人の顔を象った陶器製のビアジョッキ)を見つける。ストーヴァルは店主からそのトビー・ジョッキがイギリス空軍とアメリカ陸軍航空軍の飛行場がかつてあり、ストーヴァルが第2次世界大戦中に第918航空群の一員として勤務したアーチベリーで手に入れられたものであることを知る。そのジョッキはストーヴァルのよく知るものそのものだった。ストーヴァルはそのジョッキを買い求め、列車と自転車で滑走路、誘導路、管制塔、事務所を残したまま今は牧草地として利用されているアーチベリー飛行場跡へと向かった。ストーヴァルがアーチベリー時代を思い出しながら、時間は1942年にさかのぼり、映画は本編に入る。
第918航空群はアメリカ本国からイギリスに移駐してアメリカ軍の白昼爆撃に投入された。ドイツの対空砲火とドイツ空軍戦闘機による被害が甚大となったことにより士気が低下、目標破壊失敗も相次いだことから、「不運な航空群」との評判をとるようになっていた。第918航空群の航空司令キース・ダヴェンポート大佐(ゲイリー・メリル)は指揮下の兵士たちと親密になるあまり、航空群内の士気を向上させる手が取れないでいた。爆撃精度向上のため低空での作戦が命令されたとき、その危険性の高さからダヴェンポート大佐は司令部に駆け込み、彼の旧友でもあるフランク・サヴェージ准将(グレゴリー・ペック)と作戦方針について対立する場面もあった。ダヴェンポート大佐のこの様な行動を見たサヴェージ准将は、第8空軍司令官パトリック・プリチャード少将(ミラード・ミッチェル)の部屋を訪ね、ダヴェンポート大佐が航空司令として不適格であると進言する。プリチャード少将はサヴェージ准将の進言を容れ、ダヴェンポート大佐を解任、第918航空群の航空司令にサヴェージ准将を据えた。
規律維持のためサヴェージ准将は指揮下の全員に対して厳しく臨み、指揮下兵士から嫌われるようになったうえ、サヴェージ准将の厳格なリーダーシップに驚いた第918群の操縦士全員が異動願を出す事態となる。サヴェージ准将は航空群の副官であるストーヴァル少佐に時間稼ぎのために異動願の処理を遅らせるよう頼み、ストーヴァル少佐は「お役所仕事」は時間がかかるもの、と応じる。厳しい再訓練のあと第918航空群は戦列に復帰したが、サヴェージ准将自らがB-17爆撃機に搭乗して出撃、他の航空群が悪天候による帰還命令に従って帰還する中、無線機の故障により第918航空群が単独で爆撃、1機も失うことなく目標の破壊に成功した後、指揮下兵士のサヴェージ准将に対する態度に変化が見られるようになった。
無線機の故障を口実に帰還命令を無視したことをプリチャード少将がサヴェージ准将に詰問したが、サヴェージ准将はそれに屈することなく、単独で目標を破壊した戦果でプリチャード少将に第918航空群を表彰するよう求めた。監察官が第918航空群の異動願滞留などの問題を確認するため到着した際、サヴェージ准将は解任を覚悟して荷づくりを行っていたが、兵士全員が異動願を取り下げ、サヴェージ准将は現職にとどまることになった。隊員とともに作戦に参加するうち、かつてダヴェンポート大佐がサヴェージ准将を訪ねた際に忠告した通り、サヴェージの兵士に対する態度も軟化していった。第918航空群のバーの暖炉にはあのトビー・ジョッキがあった。
航空戦がドイツ深部に及ぶにつれ、ドイツ軍の迎撃も厳しくなり、作戦行動距離が延びたことと併せて白昼爆撃のリスクも増大していた。サヴェージ准将配下のコッブ少佐、ビショップ中尉を含む優秀な搭乗員たちが失われていった。プリチャード少将は第8空軍本部にサヴェージ准将を戻すよう画策したが、サヴェージ准将は第918航空群がサヴェージ准将抜きでは成り立たないことを理由に異動に応じず、プリチャード少将も渋々サヴェージ准将の意見を容れざるを得なかった。
しかし、最も危険な作戦の出撃直前、B-17に乗り込もうとした時にサヴェージ准将は突然心身が不安定となり、B-17に搭乗するために体を引き上げることが出来なくなったため、サヴェージ准将抜きで第918航空群は作戦に参加して行った。航空群が帰還するのを待つ間にサヴェージ准将はカタトニー(緊張病)とみられる状態になったが、第918航空群が目標を破壊し、比較的軽微な損害で帰還したとき、サヴェージ准将は落ち着きを取り戻し、親友であり、かつて第918航空群率いたダヴェンポート大佐の見守る中、眠りに落ちていった。
物語はここで1949年のストーヴァルの目線にもどる。ストーヴァルは買い求めたトビー・ジョッキをもとあった第918航空群のバーの暖炉の上に置き、アーチベリーをあとにした。
キャスト
役名 | 俳優[3] | 日本語吹替 | |
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NETテレビ版 | PDDVD版 | ||
フランク・サヴェージ准将 (第918航空群航空司令) |
グレゴリー・ペック | 城達也 | 大塚智則 |
ハーヴィ・ストーヴァル少佐 (第918航空群司令副官) |
ディーン・ジャガー | 宮川洋一 | 咲野俊介 |
ベン・ゲートリー中佐 (第918航空群先任将校) |
ヒュー・マーロウ | 家弓家正 | |
キース・ダヴェンポート大佐 (前第918航空群航空司令) |
ゲイリー・メリル | 小林修 | 勝沼紀義 |
カイザー大尉 (第918航空群軍医) |
ポール・スチュワート | 和田文夫 | |
パット・プリチャード少将 (第8空軍司令) |
ミラード・ミッチェル | 久松保夫 | 木澤智之 |
ジョー・コッブ少佐 (第918航空群航空隊長) |
ジョン・ケロッグ | 大塚周夫 | |
ジェセ・ビショップ中尉 (第918航空群航空機長) |
ロバート・パットン | 井上真樹夫 | 相原嵩明 |
マクレニー軍曹 (第918航空群司令部付下士官) |
ロバート・アーサー | 宮本和男 | |
ジマーマン中尉 (第918航空群航空航法士) |
リー・マグレゴール | ||
バードウェル中尉 (第918航空群兵士) |
サム・エドワーズ | ||
査問官 | ロジャー・アンダーソン | ||
トワンプリ―大尉 (第918航空群従軍牧師) |
ローレンス・ドブキン[4] | ||
ケラー軍曹 (第918航空群守衛) |
ケネス・トビー[4] | ||
爆撃手 | ポール・ピセルニ[4] | ||
無線士 | ヘンリー・ローター[4] | ||
ホーホー候 (ドイツのプロパガンダ放送) |
バーリー・ジョーンズ[4] | ||
ナース | ジョイス・マッケンジー | ||
第918航空群病院の患者 | ドン・ゴードン[4] | ||
マケッソン中尉 (第918航空群兵士) |
リチャード・アンダーソン[4] | ||
不明 その他 |
嶋俊介 杉田郁子 井上弦太郎 野本礼三 緑川稔 木原正二郎 納谷六朗 青野武 矢田耕司 清川元夢 村松康雄 国坂伸 浅井淑子 |
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演出 | 春日正伸 | ||
翻訳 | 鈴木導 | ||
効果 | |||
調整 | |||
制作 | 日米通信社 | ||
解説 | 淀川長治 | ||
初回放送 | 1971年2月7日 『日曜洋画劇場』 |
NETテレビ版は20世紀フォックス発売のDVD・BDに収録。(約69分)
注釈
- ^ テイベッツは広島に原爆を投下したB-29エノラ・ゲイの操縦士である。
- ^ 306×3は918である。
- ^ このトールマンの主張は映画撮影中に20世紀フォックスが発表した内容とも、ダフィンとマーセイスがThe 12 O'Clock High Logbook執筆用に行った調査とも矛盾する。 1961年にグレゴリー・ボードがB-17の単独飛行を行ったとEverything But the Flakの"The Amazing Mr. Board"章でマーチン・カイディンが記している[12]ほか、1947年にアート・ラセイがB-17を単独で飛ばしたとされているが、後者の事例は、ラセイがB-17を破損した際に天候によるもの、と記録されたためにあまり有名ではない。[13]
出典
- ^ "The Top Box Office Hits of 1950." Variety, January 3, 1951.
- ^ a b “"The 22nd Academy Awards (1950) Nominees and Winners." oscars.org.]”. 2011年8月18日閲覧。
- ^ “"Twelve O'Clock High Full credits."”. IMDb. 2009年10月21日閲覧。
- ^ a b c d e f g クレジット無し
- ^ a b Bowman, Martin. “"12 O'Clock High."”. Osprey Publishing,. 2014年5月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h Correll, John T.. “The Real Twelve O’Clock High.”. The Air Force Association via airforce-magazine.com, Volume 94, Issue 1, January 2011. 2014年5月25日閲覧。
- ^ Duffin and Matheis 2005, p. 61.
- ^ a b c d “Notes: Twelve O'Clock High.”. Turner Classic Movies. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “Filming locations: Twelve O'Clock High”. IMDb. 2009年10月21日閲覧。
- ^ Duffin and Matheis 2005, p. 87.
- ^ “Trivia: Twelve O'Clock High”. Turner Classic Movies. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “Gregory Board”. 'IMDb. 2013年5月9日閲覧。
- ^ Cheesman. Shannon (2010年6月16日). “Boast + adult beverages = a B-17 on the roof.”. KVAL.com. 2012年2月5日閲覧。
- ^ “The War Lover (1962)”. aerovintage.com (2007年10月28日). 2012年12月15日閲覧。
- ^ a b Orriss 1984, p. 149.
- ^ Duffin and Matheis 2005, pp. 65–67.
- ^ “Locations: Twelve O'Clock High (1949)”. IMDb. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “Overview: Twelve O'Clock High”. Turner Classic Movies. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “Release dates: Twelve O'Clock High (1949).”. IMDb. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “Misc. notes: Twelve O'Clock High”. 'Turner Classic Movies'. 2009年10月21日閲覧。
- ^ Crowther, Bosley (1950年1月28日). “Twelve O'Clock High (1949)”. The New York Times. 2011年3月1日閲覧。
- ^ a b “Awards”. Allmovie. 2009年10月21日閲覧。
- ^ Correll, John T.. “The Real Twelve O’Clock High”. Air Force Magazine, Vol. 94, No. 1, January 2011. 2014年2月7日閲覧。
- ^ “Twelve O'Clock High (1949)”. IMDb. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “頭上の敵機”. 映画.com. 2014年5月27日閲覧。
- ^ “Awards: Twelve O'Clock High (1949)”. IMDb. 2009年10月21日閲覧。
- ^ “Hooray for Hollywood - Librarian Names 25 More Films to National Registry”. Library of Congress. 2014年5月28日閲覧。
- ^ Duffin and Matheis
- ^ “番組ガイド:「頭上の敵機」「爆撃命令」”. 【海外ドラマ番組ガイド☆テレプレイ】. 2014年5月28日閲覧。
- ^ Orriss 1984, p. 122.
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