阿弥陀如来 信仰

阿弥陀如来

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/16 20:05 UTC 版)

信仰

浄土真宗

浄土真宗においては、阿弥陀如来一仏を本尊とする。中心教義も阿弥陀如来の本願力[注釈 3]にのみ帰依することとする(詳細は、他力本願を参照)。真宗においては、『観無量寿経』の「住立空中尊」という表現から、立像であるべきとされる。

末法濁世の衆生は、煩悩具足の凡夫であり、自らの力(自力[注釈 4])では、いかなる善も完遂しえないとする。そのため「他力[注釈 5]」によってのみ救済されるとする。

釈尊が「浄土三部経」によって説かれたことに由来し、善導は『観無量寿経疏』にて、法然は『選択本願念仏集』(『選択集』)にて注釈し、それらを受けた親鸞が『顕浄土真実教行証文類』(『教行信証』)において引用・注釈する。この事は『歎異抄』の第二章に、端的に述べられている。

最も優れた仏としての阿弥陀仏

浄土教諸宗において主に用いられる『仏説無量寿経』では、「無量寿仏の威神光明、最尊第一にして、諸仏の光明及ぶこと能わざるところなり」、親鸞の著書『顕浄土真実教行証文類』では、「十方恒沙の諸仏如来、みな共に無量寿仏の威神功徳不可思議なるを讃嘆したまう。また言わく、無量寿仏の威神、極まりなし。十方世界無量無辺不可思議の諸仏如来、彼を称嘆せざるはなし」「諸仏中の王なり、光明中の極尊なり」とする。[4]

根本仏としての阿弥陀仏

西山深草派の顕意は、阿弥陀如来を一切の仏の根本とし、諸仏は阿弥陀仏を化主とすると主張する。この理解の教証として顕意は、善導が『般舟経』に依拠して説いた言葉である「三世の諸仏は念弥陀三昧[注釈 6]によって正覚を得た」をあげる。しかし、鎮西派良忠は「念阿弥陀仏三昧」は『般舟経』においては説かれず、一切の仏は阿弥陀仏を念じて成仏した訳ではないとし、「念仏三昧」を「念阿弥陀仏三昧」とする理解は阿弥陀仏を「法門の主」とするための善導の独自解釈だとする[5]

チベット仏教

チベット仏教では、無量寿仏と無量光仏は区別されている。また、ゲルク派第二位のパンチェン・ラマは無量光仏の化身とされる。チベット死者の書によれば、(大日如来阿閦如来宝生如来に続いて)死後の4日目に魂の救済に現れるとされる。

その他の経典における阿弥陀如来

浄土三部経以外にも阿弥陀如来は多くの大乗経典に登場する。 法華経の薬王菩薩本事品にも阿弥陀如来は登場し、サンスクリット語原文においては法華経の観世音菩薩普門品にも阿弥陀如来について言及されている。 仏説出生菩提心経においても阿弥陀如来の願力が言及されている。 大乗離文字普光明蔵経においても、大乗離文字普光明蔵経の持経者が阿弥陀如来の来迎を得ることが説かれている。


注釈

  1. ^ 五劫思惟(ごこうしい)…「五劫」とは、無限に近い、非常に長い期間のこと。思惟とは、「作是思惟」とは、心を集中し、物事の道筋を立てて深く願が進むこと。
  2. ^ 生まれる方法…浄土教諸宗各々で、「浄土三部経」の解釈が異なるため、このことに関しての詳細は省略する。それぞれの宗旨・宗派のページを参照。
  3. ^ 阿弥陀如来の本願力…阿弥陀如来のはたらき。
  4. ^ 「自力」とは、「自己に備わった能力」をいう。「仏・菩薩などのはたらきを意味」する「他力」に対する[3]
  5. ^ ここでの「他力」は、阿弥陀仏の本願力(はたらき)のこと。
  6. ^ 阿弥陀仏を念ずることによる精神統一。
  7. ^ 新義真言宗等一部宗派では『オン・アミリタ・テイイ・カラ・ウン』と読む

出典

  1. ^ a b 「阿弥陀仏」 - 日本大百科全書(ニッポニカ)
  2. ^ 『うちのお寺は浄土宗』2015年、双葉文庫、14ページ。
  3. ^ 『岩波仏教辞典』岩波書店、2002年、560頁より引用。
  4. ^ 聖教電子化研究会 仏説無量寿経巻上 p.30聖教電子化研究会 仏説無量寿経巻上 p.158聖教電子化研究会 仏説無量寿経巻上 p.323
  5. ^ 中村玲太「法然門流における弥陀法身/報身説の検討」『現代と親鸞』第30巻、真宗大谷派 親鸞仏教センター、2015年、19-22頁、doi:10.24694/shinran.30.0_2ISSN 1347-4316 
  6. ^ 筑波大学教授の平山朝治は、阿弥陀信仰の成立にはキリスト教のインド西漸の影響があり、阿弥陀という名の由来を聖トマスの遺骨がある都市「アミダ(Amida)」に求めている(平山朝治「大乗仏教の誕生とキリスト教」、『筑波大学経済学論集』第57号 (2007年3月)p.155)
  7. ^ a b 阿彌陀佛心咒及祈請文 - 侯松蔚
  8. ^ Buddha Amitabha mantra and seed syllable in Siddham and Tibetan - including Amitayus mantra, the Shingon Amitabha Mantra, and the Nembutsu. (Jayarava ATTWOOD)
  9. ^ 金色堂堂内諸像及天蓋 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  10. ^ 銅造阿弥陀如来坐像 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  11. ^ 木造阿弥陀如来坐像〈定朝作/(鳳凰堂安置)〉 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  12. ^ 木造阿弥陀如来坐像(講堂安置) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  13. ^ 木造阿弥陀如来及両脇侍像(金堂安置) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  14. ^ 木造阿弥陀如来坐像(阿弥陀堂安置) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  15. ^ 木造阿弥陀如来及両脇侍坐像(往生極楽院阿弥陀堂安置) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  16. ^ 木造阿弥陀如来及両脇侍坐像(棲霞寺旧本尊) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  17. ^ 木造阿弥陀如来坐像(本堂安置) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  18. ^ 銅造阿弥陀如来及両脇侍像(伝橘夫人念持仏) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  19. ^ 木造阿弥陀如来及両脇侍立像(浄土堂安置) - 国指定文化財等データベース(文化庁
  20. ^ 木造阿弥陀如来坐像 他 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  21. ^ 絹本著色山越阿弥陀図 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  22. ^ 絹本著色山越阿弥陀図 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  23. ^ 絹本著色阿弥陀二十五菩薩来迎図〈/(早来迎)〉 - 国指定文化財等データベース(文化庁
  24. ^ 宇津野善晃 『よくわかる仏像の見方』 JTB






阿弥陀如来と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「阿弥陀如来」の関連用語

阿弥陀如来のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



阿弥陀如来のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの阿弥陀如来 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS