鉄道駅 日本の鉄道駅

鉄道駅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/20 08:29 UTC 版)

日本の鉄道駅

歴史

1872年開業の日本初の鉄道の起点駅とされた初代新橋駅 (後の汐留駅)

日本では1872年に新橋と横浜の間に6駅を有する日本初となる鉄道路線が開通した[6]。日本における初期の鉄道は旅客輸送を主目的として建設されたが、鉄道創業期には輸送量が不確定であったため駅舎は木造平屋建ての簡素なものであった[6]

20世紀に入り鉄道の国有化が行われると、駅は改良期を迎え、吹き抜けをもつ入口広間から待合室を経てホームに出る様式が多く採用された[6]。20世紀初頭の駅建築には、新たに建設された東京駅のほか、2代目駅舎として建築された日光駅門司港駅原宿駅奈良駅などがある[6]

鉄道利用者は次第に増加したが、1923年関東大震災が起きると駅の不燃建築化が進められ、これを契機に駅待合室や通路の設計基準が策定された[7]。また、3大都市圏にある主要駅は高架化が進められ、特に三宮駅神戸駅名古屋駅などでは線路で市街を分断しないように駅構内での連絡も考慮されるようになった[7]

第二次世界大戦では日本にある鉄道施設の全面積の約20%が焼失[7]。復旧のための工事費は不足し、それを補うため民間資本の店舗と合築する民衆駅方式や国鉄債権地元引受方式による駅改良が進められた[7]

日本の駅の特徴

日本の都市の駅の特徴

『都市の価値を紡ぐ50のトピックス(日建設計総合研究所・都市のバリューを考える会)Topic19 鉄道駅の利用者に対するわかりやすさ』は、ケヴィン・リンチが著書『都市のイメージ』で提唱したイメージアビリティ5要素「パス」「エッジ」「ディストリクト」「ノード」「ランドマーク」という概念・用語を用いて、日本の都市における鉄道駅の多くは今やこれら5要素すべてを併せ持つ複雑な存在である、と論じている[8][9]

中規模程度の旅客駅の特徴

日本の中規模程度の旅客駅舎では典型的には、切符売り場、改札口、駅員がいる事務室、旅客が列車を待つあいだ椅子に座っていられる待合室などを備える。比較的大規模の駅の場合は、コンコース、売店、観光案内所など、様々な施設・設備を備えていることが多い。さらに、駅に本来の鉄道以外の機能をふんだんに足すために駅舎の建物を大きなビルとしたものを駅ビル(Station Building[注 5])と呼ぶ。駅ビルには、テナントとして百貨店をはじめとする各種の店舗、企業のオフィス、ホテルなどが入っていることが多い。 [注 6]

名称

明治時代に日本に鉄道が導入された際、英語station の日本語訳が確定せず、

などと呼ばれた[注 8]。明治10年代くらいから「停車場」が用いられ、正式な訳語となった[14]。一方で利用者は、街道駅路)の宿場(宿駅、駅家)を意味する「」(新字体「駅」)を用いた[14]。鉄道の発達に伴って、明治中頃までに街道の「駅」はその地位を失い、鉄道の「駅」に人々が集うようになったため、宿場を指して「駅」と言わなくなっていった[14]。鉄道関係者も station を時に「駅」、時に「停車場」と用語を混用したため、鉄道省は、1936年昭和11年)に職制を改正し、「駅」と「停車場」との呼び分けを明確にした。

駅には固有の名称である駅名がつけられている。駅名は主に所在地の地名や人物名など伝統的な呼称から採られることも多かったため漢字表記またはそれを主体としたものや鉄道の会社名や旧国名が冠されているもの(略して呼ばれる事が多い)が圧倒的に多いが、近年は施設名などに由来した平仮名や片仮名表記のものも散見される。


注釈

  1. ^ ちなみに、中国語では「駅」は「」(繁体字)または「驿」(簡体字)と書くが、鉄道駅の意味はない。鉄道駅の意味で用いるのは日本語および朝鮮語の用法である。中国語で鉄道駅は「車站」(chēzhàn)という。
  2. ^ 日本での法令上の呼称。索道トロリーバス(無軌条電車)においても停留場である。
  3. ^ 一般には停留所ともよばれた。
  4. ^ フランス語のstation(スタスィオン)は、基本的には路面電車停留場(電停)および地下鉄駅を指す。
  5. ^ この英語表記は一般的な「駅舎」についても用いられる。
  6. ^ 駅舎は「本屋」(ほんや・ほんおく)とも呼ばれるが、これは明治期に「Booking Office」を直訳したものである。駅舎と本屋は同義語と捉えて問題ない駅がほとんどであるが、本屋とは、鉄道事業者が定めた駅の中心点を含めた構造物またはエリアを示すものである。
  7. ^ 一例として、1900年(明治33年)初出の『鉄道唱歌』歌詞に見ることができる。
  8. ^ 「ステン所」や「蒸気車会所」という呼び名もあったとする者もいるが典拠不明。
  9. ^ 東武ワールドスクウェア駅(2017年開業)や、かつての博物館動物園駅(1997年休止、2004年廃止)、2017年現在は全ての普通列車が停車しているファミリー公園前駅(1985 - 1993年の間)、大外羽駅(1974 - 1986年の間)など。
  10. ^ 北新地駅のように、既設の地下街と接続するのみで、地上構造物が皆無な例もある。

出典

  1. ^ 数字でわかる東京駅 - トラベル (asahi.com(朝日新聞社) 2010年12月2日)
  2. ^ 大辞泉「駅」
  3. ^ a b c d e f g h 鉄道用語辞典 あ行 駅 日本民営鉄道協会、2020年4月9日閲覧。
  4. ^ a b c d 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、4頁。 
  5. ^ a b c d e f 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、5頁。 
  6. ^ a b c d 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、6頁。 
  7. ^ a b c d 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、7頁。 
  8. ^ “Topic19 鉄道駅の利用者に対するわかりやすさ”. 都市のバリューを考える会 都市の価値を紡ぐ50のトピックス(日建設計総合研究所). (2010年2月15日). http://www.nikken-ri.com/valueup/column19.html 2012年4月9日閲覧。 
  9. ^ この論に拠ると、例えば上述の乗り継ぎ点・パークアンドライドについては鉄道駅の「ノード(人々が入ることのできる点、接合点)」要素が強く表れたものと見ることができる。[要出典]
  10. ^ a b 火輪車がやってきた 〜公文書館所蔵資料でみる鉄道開業と東京〜 (PDF)東京都公文書館 2010年6月)
  11. ^ 東京名所内 新橋鉄道舘之図早稲田大学図書館
  12. ^ 新橋鉄道館之図 - 国立国会図書館デジタルコレクション、橋本貞秀1871年(明治4年)制作)
  13. ^ 東京汐留鉄道舘蒸汽車待合之図国立国会図書館。立斎広重作、1872年(明治5年)発行)
  14. ^ a b c d 駅とは?NHK「気になることば」 2011年10月13日)(インターネットアーカイブ)
  15. ^ 東京名勝之内「新橋新橋ステイーシヨヲン」(東京ガス「明治錦絵の世界」。揚堂玉英、1878年(明治11年)制作)(インターネットアーカイブ)
  16. ^ 新橋ステンション(東京ガス「明治錦絵の世界」。小林清親、1881年(明治14年)制作)(インターネットアーカイブ)
  17. ^ 特集「吉田禄在」(名古屋都市センター「まちづくり来ぶらり」第46号 2009年3月)(インターネットアーカイブ)
  18. ^ 京都駅の歴史京都駅ビル)(インターネットアーカイブ)
  19. ^ a b c d 小熊仁「鉄道駅開設による存在効果とその価値構成に関する分析〜JR高崎問屋町駅を事例として〜」『運輸と経済』第81巻第10号、交通経済研究所、2021年10月、 115-128頁、 NAID 40022724472


「鉄道駅」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「鉄道駅」の関連用語

鉄道駅のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



鉄道駅のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの鉄道駅 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2023 GRAS Group, Inc.RSS