鉄道駅
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/20 08:29 UTC 版)


日本語では一般に「駅(えき)」と呼ぶ[注 1]が、「停車場」(ていしゃじょう、ていしゃば)などとも呼ばれる。なお、もっぱら貨物の取り扱いをする駅は「貨物駅」と言い、もっぱら旅客の乗り降りをするための駅は旅客駅と言う(後述)。
路面電車(軌道)の発着場所は、停留場(ていりゅうじょう)[注 2]、電停(でんてい)とも呼ばれる。呼称については地域差が大きい。たとえば東京都内の場合、都電ではかつては「電車の停留場」と呼ばれ[注 3]、現在は「都電の停留場」と呼ばれている。一方で、東急世田谷線は鉄道線と同様に「駅」と呼ばれているが路面電車の根拠となる軌道法による正式名称ではない。
英語では「station ステーション」、フランス語では「gare ギャール(ガール)」と言う[注 4]。
概説
鉄道駅とは、列車が止まり旅客が乗降したり貨物を積降したりする場所である。鉄道駅で扱われるものは、大きく分けて貨物と旅客に大別できる。
さまざまな分類法があるが、基本の分類法としては、鉄道路線の中における位置によって、終端駅(ターミナル駅) / 中間駅 / 分岐駅 / 接続駅 / 交差駅 などに分類される[3]。 また他の分類法としては、貨物列車に貨物を積み降ろしすることを目的とした貨物駅 / 旅客の乗降のために設けられた旅客駅 と分類する方法もある。→#種類・分類
貨物駅は、引込み線に移動させてから荷物の積み卸しを行う方式の駅と、着発線上に荷役ホームがあり本線上の列車からコンテナを積卸しするE&S方式の駅がある。プラットホームが無い貨物駅もある。
旅客駅は、一般的には、駅舎、プラットホーム、線路などから構成される。 特に簡素な旅客駅では、単線の線路とひとつのプラットホームだけしかなく、駅舎が無い場合もある。線路数が多い旅客駅の場合は複数のプラットホームを有する。
欧州の鉄道駅
歴史
世界初の旅客鉄道は1830年にイギリスのリヴァプール - マンチェスター間に誕生したが、初期の鉄道駅はプラットホームと出発及び到着の建物が別々に建てられたもので簡素な構造であった[4]。
ヨーロッパの大都市では中世に築かれた都市を取り囲む城壁の外側に鉄道各社の駅が配置され地方都市への始発駅となった[4]。そのためヨーロッパの大規模な駅は平面で見ると櫛形になったいわゆる頭端駅となっている[4]。
鉄道事業の成功が見込まれるようになると鉄道各社は路線拡大に努めたが、鉄道建設の資金調達の際、会社の信頼性と技術力を示すため駅への投資にも力を入れた[4]。
1840年代末になると鉄道駅に複数路線が集中するようになり複数のプラットホームをつなぐ横通路を有する構内ホールや送迎用ホールが接続して建設されるようになり、駅機能は一つの建物に集約されることが多くなった[5]。
構造
ヨーロッパの都市部の鉄道駅では鉄とガラスの大アーチをもつ構内ホールを設けた鉄道駅が多くみられる[5]。このような構造は1851年にロンドンで開催された第一回世界博覧会の水晶宮(バクストン設計)が契機になったといわれている[5]。
1850年代までの鉄道駅は待合室が主たる設備であったため、旅客は待合室からそのまま構内ホールに向かう構造であることが多かった[5]。しかし、1860年代になると待合室が駅の中心から後退する設計が多くなり、入口ホールと構内ホールを結ぶコンコースが誕生した[5]。この時期には旅客の利便向上のために駅構内に売店が出現したほか、ターミナルに併設してホテルが建設されるようになった[5]。
ロンドン、セント・パンクラス駅のユーロスター・ターミナルの大アーチ
セント・パンクラス駅の大アーチの下、ユーロスターが停車中のホーム
イギリス・ロンドンのキングス・クロス駅の西コンコース
ロンドン・ヴィクトリア駅のコンコース
ロンドンのウォータールー駅のコンコース
アメリカのニューヨーク市のグランド・セントラル駅の大アーチ(1873年)
アメリカのニューヨーク市のグランド・セントラル駅のメインコンコース
注釈
- ^ ちなみに、中国語では「駅」は「驛」(繁体字)または「驿」(簡体字)と書くが、鉄道駅の意味はない。鉄道駅の意味で用いるのは日本語および朝鮮語の用法である。中国語で鉄道駅は「車站」(chēzhàn)という。
- ^ 日本での法令上の呼称。索道、トロリーバス(無軌条電車)においても停留場である。
- ^ 一般には停留所ともよばれた。
- ^ フランス語のstation(スタスィオン)は、基本的には路面電車停留場(電停)および地下鉄駅を指す。
- ^ この英語表記は一般的な「駅舎」についても用いられる。
- ^ 駅舎は「本屋」(ほんや・ほんおく)とも呼ばれるが、これは明治期に「Booking Office」を直訳したものである。駅舎と本屋は同義語と捉えて問題ない駅がほとんどであるが、本屋とは、鉄道事業者が定めた駅の中心点を含めた構造物またはエリアを示すものである。
- ^ 一例として、1900年(明治33年)初出の『鉄道唱歌』歌詞に見ることができる。
- ^ 「ステン所」や「蒸気車会所」という呼び名もあったとする者もいるが典拠不明。
- ^ 東武ワールドスクウェア駅(2017年開業)や、かつての博物館動物園駅(1997年休止、2004年廃止)、2017年現在は全ての普通列車が停車しているファミリー公園前駅(1985 - 1993年の間)、大外羽駅(1974 - 1986年の間)など。
- ^ 北新地駅のように、既設の地下街と接続するのみで、地上構造物が皆無な例もある。
出典
- ^ 数字でわかる東京駅 - トラベル (asahi.com(朝日新聞社) 2010年12月2日)
- ^ 大辞泉「駅」
- ^ a b c d e f g h 鉄道用語辞典 あ行 駅 日本民営鉄道協会、2020年4月9日閲覧。
- ^ a b c d 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、4頁。
- ^ a b c d e f 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、5頁。
- ^ a b c d 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、6頁。
- ^ a b c d 建築思潮研究所 『建築設計資料 (72) 地域の駅』建築資料研究社、1997年、7頁。
- ^ “Topic19 鉄道駅の利用者に対するわかりやすさ”. 都市のバリューを考える会 都市の価値を紡ぐ50のトピックス(日建設計総合研究所). (2010年2月15日) 2012年4月9日閲覧。
- ^ 「この論に拠ると、例えば上述の乗り継ぎ点・パークアンドライドについては鉄道駅の「ノード(人々が入ることのできる点、接合点)」要素が強く表れたものと見ることができる。[要出典]」
- ^ a b 火輪車がやってきた 〜公文書館所蔵資料でみる鉄道開業と東京〜 (PDF) (東京都公文書館 2010年6月)
- ^ 東京名所内 新橋鉄道舘之図(早稲田大学図書館)
- ^ 新橋鉄道館之図 - 国立国会図書館デジタルコレクション、橋本貞秀、1871年(明治4年)制作)
- ^ 東京汐留鉄道舘蒸汽車待合之図(国立国会図書館。立斎広重作、1872年(明治5年)発行)
- ^ a b c d 駅とは?(NHK「気になることば」 2011年10月13日)(インターネットアーカイブ)
- ^ 東京名勝之内「新橋新橋ステイーシヨヲン」(東京ガス「明治錦絵の世界」。揚堂玉英、1878年(明治11年)制作)(インターネットアーカイブ)
- ^ 新橋ステンション(東京ガス「明治錦絵の世界」。小林清親、1881年(明治14年)制作)(インターネットアーカイブ)
- ^ 特集「吉田禄在」(名古屋都市センター「まちづくり来ぶらり」第46号 2009年3月)(インターネットアーカイブ)
- ^ 京都駅の歴史(京都駅ビル)(インターネットアーカイブ)
- ^ a b c d 小熊仁「鉄道駅開設による存在効果とその価値構成に関する分析〜JR高崎問屋町駅を事例として〜」『運輸と経済』第81巻第10号、交通経済研究所、2021年10月、 115-128頁、 NAID 40022724472。
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