芸術 語源

芸術

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 09:30 UTC 版)

語源

ギリシャ語の「τέχνη(tékhnē, テクネー)」や、その訳語としてのラテン語の「ars(アルス)」、英語の「art(アート)」、フランス語の「art(アール)」、ドイツ語の「Kunst(クンスト)[注釈 1]」などは、もともと単に「人工(のもの)」という意味の医術や土木工学などの広い分野を含む概念で、現在でいうところの「技術」にあたる。現在でいう「芸術」は、近代以前には、単なる技術と特に区別して呼ぶ場合「よい技術、美しい技術」(beaux arts, schöne Kunstなど)と表現され、本来の「art」の一部を占めるに過ぎない第二義的なものであった。

18世紀ごろから加速する科学技術の発展とともに、それまで「ものをつくる」という活動において大きな比重を占めた装飾的な部分よりも、科学的知識を応用した実用性の向上が圧倒的な意味をもつようになる。これにともなって各種の技術は分業化と細分化が進み、現代でいう技術(technics,technology)に再編されるのに対し、建築などの人工物を装飾する美的要素がこれと分化独立しながら、従前の「art」という呼称を引き継ぐことになった。

現代の日本語における「芸術」は、伝統的に継承された単語ではなく、明治時代に西周によってリベラル・アーツの訳語として用いられたことに由来する[1]。現在では、英語の音写「アート」が用いられることも多い。[2][3][注釈 2][4]

表記(藝術󠄁・芸術

正字表記では「藝」だが、第二次大戦後の日本における漢字制限当用漢字常用漢字教育漢字)により、「藝」が「芸」と略記されることになった。なお、「芸」は、もともと「云」を声符として「ウン」と読み、ヘンルーダ等の植物をあらわす別字だが、本来「藝」の字とはまったく関係がない。

「藝」の原字の「埶」は、「木」+「土」+「丮」からなる会意文字で、人が両手に持った植物を土に植えるさまを表す。のち、植物であることを強調するため「艸」が加えられ「蓺」となり、さらに「云」が加えられて「藝」となった。「芸」はその中央部を省略した略字である。本来、植物を植えることを意味したが、転じて技芸・技能一般、特に文芸を表すようになった。


注釈

  1. ^ ドイツ語では、Kunst(芸術)、Kunstwissenschaft(芸術学)、allgemeine Kunstwissenschaft(一般芸術学)、Kunstverhalten(芸術態度)、Kunstwollen(芸術意志)などの用語分岐もある。
  2. ^ 佐久間象山は「東洋道徳西洋芸術」という言葉を遺している(全文:「象山先生七絶 : 題地球儀詩 / 象山 [撰]」が、ここでいう芸術は技術のことである(和魂洋才と同様の意味)。

出典

  1. ^ a b c d e 佐々木健一 1995, p. 31.
  2. ^ 後漢書』5巻孝安帝紀の永初4年(110年)2月の五経博士の劉珍及による「校定東觀 五經 諸子 傳記 百家蓺術 整齊脫誤 是正文字」の「蓺術」等の用例に由来する。
  3. ^  范曄 (中国語), 後漢書/卷5, ウィキソースより閲覧。 
  4. ^ 早稲田大学図書館古典籍総合データベース https://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/html/chi06/chi06_03890_0185/index.html
  5. ^ ウィキペディア項目「芸能」参照
  6. ^ 世界大百科事典内言及. “聴覚芸術(ちょうかくげいじゅつ)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2023年6月5日閲覧。






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