航空機の離着陸方法 航空機の離着陸方法の概要

航空機の離着陸方法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/25 02:30 UTC 版)

CTOL

滑走して離着陸する通常の固定翼機CTOL(conventional take-off and landing、シートール)機と称する[1]。下記のSTOL(短距離離着陸)機、VTOL(垂直離着陸)機と対比される概念である[2]

CATOBAR

ジェット機のような大重量のCTOL機を航空母艦艦上機として運用する場合、発艦・着艦ともに補助が必要になる。このうち、発艦装置としてカタパルトを使用する方式をCATOBAR (Catapult Assisted Take Off But Arrested Recovery) と称する[3]

着艦の際はアレスティング・ギアを用いて制動することになる。このときアレスティング・ワイヤーに引っ掛けるため、航空機の側にもアレスティング・フックが装備される[3]

STOBAR

STOBAR(Short TakeOff But Arrested Recovery、ストーバー)方式では、カタパルトの補助を受けずに、艦上機が自力で飛行甲板上を滑走して発艦する。一方、着艦の際にはCATOBAR方式と同様に、艦の着艦装置の補助を受けることになる[3]。艦上機自身の短距離発進 (STO) 能力に加えて、発艦装置としてスキージャンプ台を使用するのが通例である[3]

ただしこの方式では、発艦のためにCATOBAR方式よりも長い滑走距離が必要となるため、航空機の運用効率が低くなり[4]最大離陸重量も制約される[5]。このため、STOBAR方式は、CATOBAR方式の導入を志向する海軍にとっての過渡的な存在とも評されている[6]

STOL

通常の固定翼機(CTOL機)よりも短い滑走距離で離着陸できる航空機を短距離離着陸(short take-off and landing, STOL、エストール)機と称する[7]

明確な定義はなく、離着陸に必要な滑走路長については、305メートル以下とする場合や610メートル以下とする場合などがある。一般には、巡航速度に対する離着陸速度がCTOL機より低いことも条件とされている。STOL機では翼面荷重の低減や高揚力装置の強化,プロペラ後流またはターボファン・エンジンの排気を翼で下方に偏向するパワードリフト方式等により、離着陸速度の低下を図っている事が多い[1]

VTOL

垂直離着陸可能な航空機をVTOL機(: Vertical Take-Off and Landing Aircraft、ブイトール)と称する。飛行船気球などの軽航空機回転翼機を含む場合もあるが、固定翼機に限定するのが一般的である[1]

STOVL

垂直離着陸機の多くはVTOLとSTOLの両方に対応しており、このような機体は垂直/短距離離着陸機と称される[8]。この場合、実際の運用では垂直離陸 (VTO) はめったに行われず、短距離離陸 (STO) と垂直着陸 (VL) を組み合わせたSTOVL方式(short takeoff/vertical landing、ストーブル)での運用がほとんどとなる[3]

離陸の際には、たとえ垂直離陸できるだけの推力があったとしても、少しでも滑走してに風を当て、揚力を発生させれば、それだけ離陸重量が大きくなり、搭載量を増やすことができる。例えば地上静止推力10,659 kgfF402-RR-408(ペガサス11-61)エンジンを搭載したAV-8B攻撃機の場合、VTO時の最大離陸重量は9,414 kgなのに対し、STO時には14,061 kgまで増大する。この際にスキージャンプ勾配を使用すれば、搭載量を更に増やすことができる[3]

これに対し、着艦の際には、燃料などを消費した分だけ機体の重量が軽くなっているため、安全確実な垂直着艦を選択することになる[3]。垂直着艦では上下する飛行甲板にも安全に降りることができ、艦の動揺や風向風速による制約が小さいとされる[8][注 1]

イギリス海軍のクイーン・エリザベス級では、大きな艦型のおかげで滑走レーンが長いことを活用して、着艦の際に、垂直にではなく斜めに下降するSRVL (Shipborne rolling vertical landingを行うこともある。これは60ノット程度の低速で前進しながら、艦尾方向からストレート・インで進入・接地するもので、若干ながら前進速度をつけることで主翼が揚力を発揮できるようになり、より重い状態でも着艦できるようにすることで、兵装を投棄せずに済むと期待されている[注 2]。空母の飛行甲板と戦闘機のリフトエンジン双方の損耗を少なくする効果もある[10]。一方で、接地後の制動は車輪ブレーキに依存するため、この方法を用いるのは天候条件が良好なときに限られるという制約もある[11]


注釈

  1. ^ フォークランド紛争の際に増援として派遣された空軍ハリアーGR.3攻撃機は、初めての艦上展開でも問題なく適応した[8]
  2. ^ 前任のインヴィンシブル級航空母艦シーハリアーFA.2を運用していた際には、特に中東など気温が高い状態では、エンジンのオーバーヒートを避けるために出力を上げることができず、着艦する際に燃料や兵装を投棄せざるをえないケースが発生した[9]

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