自由民主党総裁 総理・総裁分離論

自由民主党総裁

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/14 12:55 UTC 版)

総理・総裁分離論

自民党が与党である場合、自民党総裁はほぼ自動的に内閣総理大臣へ就任し、総裁は総理を兼任する。これは、内閣総理大臣指名選挙(首班指名)で自民党国会議員から内閣総理大臣を選出する場合、過去の特殊な例外(後述)を除き、現職の総裁に投票する原則となっているためである。しかし、首相権力の分散、責任の分担、党内融和の観点から、総裁以外の自民党議員を首相に就任させるという、総理・総裁分離案総総分離案)の議論が、過去に何度か浮上している。しかし、いずれの例も調整段階で頓挫している。

なお、自民党においてはこれまで、総裁を退いた場合ただちに首相も辞任(=内閣総辞職)する、あるいは首相を辞任した場合はただちに総裁も退くことが通例となっている。すなわち新総裁=新総理となるが、新総裁が国会での指名選挙を経て新首相になるまでの数日間は一時的に総理・総裁が別人になる(報道等において、内閣総理大臣=自民党総裁である場合は一般的には総理の肩書きが使用されるが、その数日間は総裁という肩書きが使用される)。

総総分離に類似した政局

上記の議論とは別の理由によって総裁以外の自民党議員が首相に指名されたり首班指名で投票した例がある。

  • 石橋湛山の総裁時代における岸信介の首相選出、池田勇人の総裁時代における佐藤栄作の首相選出(池田裁定
    • いずれも総理総裁であった人物が発病のために政務・党務が困難となり、直近の総裁選で2位であった人物が後継指名され、総裁選を経ずに首班指名されたものである。いずれも首相になったのちに後継総裁に選出された。その際前者の例では形式的に自由投票方式の総裁公選(1957年自由民主党総裁選挙)が実施された。いずれの例でも約1か月間、総裁と首相が別人になっていたが、総総分離とは呼ばれず、また総総分離体制の持続を意図したものともみなされていない。
  • 麻生太郎の総裁辞任直後[注釈 16]における若林正俊の首班指名
    • 2009年の衆院選大敗によって第1党から転落した責任を取る形で麻生執行部の退陣が決定した中、後継総裁はまだ選出されず、また自民党議員が首相になれないことが確実視されていたことから、自民党は全員一致で投票できる候補として両院議員総会長の若林を首相候補とした。

注釈

  1. ^ 就任時に前任者の残任期間を引き継いだ場合、その残任期間は算入されない。よって、この場合には、その残任期間に加えて最長で3期まで連続で在任できるため、最長で通算12年近く連続で在任できることになる。なお、一度退任した後の再就任については制限はなく、再就任の場合には、任期のカウントがリセットされる。
  2. ^ 1956年4月5日までは総裁代行委員が総裁職を代行した。
  3. ^ 比較第一党とは、過半数には達しないものの全ての政党のうち最も議席数の多い党のことである。
  4. ^ 第21代総裁の安倍晋三が退任後に再び第25代総裁となったため、以降の代数と人数には差異がある。
  5. ^ 1956年1月28日に死去後、後任に松野鶴平(旧自由党)が1956年2月10日から就任。
  6. ^ 日本国憲法下で最初の、任期満了により失職した衆議院議員。
  7. ^ a b c 在任中に逝去、副総裁西村英一が総裁代行に就任。
  8. ^ 総裁就任後、森派を離脱。
  9. ^ 麻生は第45回衆議院議員総選挙に大敗し、野党に転落した責任を取って、首相指名選挙を前に2009年9月16日午前に総裁を辞任[7][8]。麻生が後継総裁の選出を待たずに総裁を辞任したため、総裁は同日から後継総裁に谷垣が選出された9月28日まで空席となった。9月16日午後[9]特別国会で行われた首相指名選挙では、自民党は党総裁が空席のため、党両院議員総会長(当時)の若林正俊に投票した。
  10. ^ 麻生は第45回衆議院議員総選挙に大敗し、野党に転落した責任を取って、首相指名選挙を前に2009年9月16日午前に総裁を辞任[10][11]。麻生が後継総裁の選出を待たずに総裁を辞任したため、総裁は同日から後継総裁に谷垣が選出された9月28日まで空席となった。9月16日午後[12]特別国会で行われた首相指名選挙では、自民党は党総裁が空席のため、党両院議員総会長(当時)の若林正俊に投票した。
  11. ^ 一度退任した総裁(第21代)が再就任した唯一の例。
  12. ^ 所属派閥の清和政策研究会は、町村信孝衆議院議長就任により細田博之が後任会長に就任したため、通称が細田派となる。
  13. ^ 大平総裁は鈴木の幹事長起用を望んだが、反主流派が鈴木は田中に近いとして反対し断念。総務会長には3度就任。
  14. ^ 第1次大平内閣組閣の際、蔵相の提示を受けたが幹事長を要求し就任せず。
  15. ^ なお、このハプニング解散によって施行された衆参同日選挙中、総理・総裁の大平が急死するという事態となり、総理としての政務は内閣官房長官であった伊東正義が内閣総理大臣臨時代理として代行し、総裁としての党務は党副総裁であった西村英一が代行した。このため、結果的に総理・総裁の権力が分離する事態が生じた。この状態は、選挙後、西村裁定によって鈴木善幸が総裁として選出されるまで続いた。
  16. ^ 麻生は2009年9月16日午前、同日午後に行われる首班指名に先立って総裁を辞任した。
  17. ^ 安倍(第21代・第25代)が2回総裁を務めたため、代数と人数は一致しない。

出典

  1. ^ 党則・総裁公選規程
  2. ^ 中野光樹 (2020年9月10日). “「総理」と「総裁」似て非なる2つのポスト【記者が解説!】”. TBS (YouTube). https://www.youtube.com/watch?v=Z6lFom4TAa4 
  3. ^ a b 党則”. 自由民主党 (日本) (2017年3月5日). 2021年10月4日閲覧。
  4. ^ a b “自民党 総裁任期3期9年、延長決定 首相在任が21年まで可能 「改憲発議へ議論」”. 毎日新聞. (2017年3月6日). https://mainichi.jp/articles/20170306/ddm/001/010/168000c 2021年10月4日閲覧。 
  5. ^ “安倍内閣が総辞職 連続在任最長、2822日で幕”. 日本経済新聞. (2020年9月16日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO63896240W0A910C2MM0000/ 2021年10月4日閲覧。 
  6. ^ 自民党の歴史 自由民主党
  7. ^ “麻生首相、16日午前に総裁辞任”. 四国新聞社. (2009年9月8日). https://www.shikoku-np.co.jp/national/international/archive-201610https://www.shikoku-np.co.jp/national/international/flash/20090908000153 2020年8月30日閲覧。 
  8. ^ “麻生首相、16日に自民総裁辞任 首相指名選挙の直前”. asahi.com(朝日新聞社). (2009年9月8日). https://www.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200909080106.html 2020年8月30日閲覧。 
  9. ^ “第93代首相に鳩山由紀夫氏”. ネットアイビーニュース. (2009年9月16日). https://www.data-max.co.jp/2009/09/16/93_1.html 2020年8月30日閲覧。 
  10. ^ “麻生首相、16日午前に総裁辞任”. 四国新聞社. (2009年9月8日). https://www.shikoku-np.co.jp/national/international/archive-201610https://www.shikoku-np.co.jp/national/international/flash/20090908000153 2020年8月30日閲覧。 
  11. ^ “麻生首相、16日に自民総裁辞任 首相指名選挙の直前”. asahi.com(朝日新聞社). (2009年9月8日). https://www.asahi.com/senkyo2009/news/TKY200909080106.html 2020年8月30日閲覧。 
  12. ^ “第93代首相に鳩山由紀夫氏”. ネットアイビーニュース. (2009年9月16日). https://www.data-max.co.jp/2009/09/16/93_1.html 2020年8月30日閲覧。 
  13. ^ 朝日新聞政治面連載「政々流転」、2013年11月10日付け「野田聖子・自民党総務会長 体験から語る女性政策」
  14. ^ 村上誠一郎衆院議員に聞いた次期総理候補と「Y・M・O」で構想する超党派勉強会NEWSポストセブン
  15. ^ 石破氏“離党歴隠し”に批判噴出「不正直」 特設サイトに新党形成の過去は不掲載 自民党総裁選zakzak
  16. ^ 「安倍さんが総裁選で負けていたら、菅さんは維新に入っていたはず」 元首相二人と“維新”との蜜月の原点 AERAdot.
  17. ^ 9年ぶり自民応接室に/海部元首相の写真”. 四国新聞社 (2003年11月17日). 2020年11月5日閲覧。





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