総理各国事務衙門 洋務運動の推進

総理各国事務衙門

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/06 08:42 UTC 版)

洋務運動の推進

外交面以外にも、いち早く諸外国と相対した総理衙門は洋務化による富国強兵の必要性を痛感しており、ロバート・ハート等の建議を受け入れて関連事業の近代化も推進した。そのため同文館では本来の語学に留まらず、交通・工業・経済(特に貿易)・軍事といった面での近代教育を行い、「洋務内閣」と揶揄されたほどである。

しかしこれらの活動も諸外国から見れば「改革の歩みが遅い」と見られ、国内保守派からは「売国行為」と見られた。結局外交事務と同様、洋務運動についても1870年代からはその中心は李鴻章に移っていき、総理衙門は中心から外れていった。

組織体制

総理衙門への謁見(1896年)

総理衙門は最高の外交機関ではあったが正規の政府機関ではなく、暫定的に発足した「軍機処の下部組織」のような位置づけであったため、編成及び要員の官品などの規定もなかった。

総理衙門の場所は北京の東堂子胡同(現在の東城区の一角)である。当時の総理衙門は東西に分かれ、東は京師同文館として使われ、西側を外交活動に利用していた。

要員構成

総理衙門の首脳部は親王や郡王、ベイレ(貝勒)といった満洲貴族層と、数人の大臣[4]によって構成され、各人が協力して事案に当たるよう配置された。複数大臣とは言ってもそれぞれが軍機大臣内閣大学士六部尚書(長官)、侍郎といった国政の中心にいる官僚が兼務していた。大臣の下には各種文書を扱う章京が16人(満人・漢人各8名)配置された。

最初の責任者は恭親王奕訢であり、大臣には上奏時のメンバーである桂良・文祥らが就任した。

組織機構

総理衙門は以下のような構成となっていた。(「股」は「課」にあたる。)

  • 英国股 - イギリスとの交渉全般、西欧諸国との通商貿易・海関の税務を扱う。
  • 法国股 - フランス・オランダ・スペイン・ブラジルとの交渉全般、キリスト教関連、海外華僑の保護、中越国境に関することを扱う。
  • 俄国股 - ロシア・日本との交渉全般、モンゴル方面の対露貿易、中露国境、海外留学生を扱う。
  • 美国股 - アメリカ合衆国・ドイツ・ペルー・イタリア・スウェーデン・ノルウェーの各国を担当。
  • 海防股 - 北洋海軍・南洋海軍、沿海に敷設された砲台・造船場の管理、汽船や銃・砲弾の購入、電信・鉄道・鉱山の開発・運用を扱う。

またその付属機関として、関税関連の事案を統括する海関総税務司署と[5]、中国最初の外国語学校である京師同文館(現在の北京大学外国語学院の前身)があった。

総理衙門大臣経験者

満洲人・モンゴル人・旗人

奕訢桂良文祥、宝鋆、倭仁、成林、崇厚景廉、麟書、奕劻、錫珍、福錕、崑岡、続昌、敬信、栄禄裕禄、桂春、聯元載漪、啓秀、溥興、那桐、裕庚、崇綸、恒祺、崇礼

漢人

董恂薛煥徐継畬譚廷襄沈桂芬毛昶熙、夏家鎬、郭嵩燾李鴻藻王文韶、周家楣、丁日昌左宗棠陳蘭彬、呉廷芬、張佩綸、周徳潤、閻敬銘許庚身張蔭桓徐用儀廖寿恒、鄧承修、孫毓汶、沈秉成、曾紀沢洪鈞、汪鳴鑾、翁同龢李鴻章、許応騤、袁昶許景澄胡燏棻趙舒翹


  1. ^ 天津条約で開港を約束したのは、牛荘(奉天省)、登州(山東)、漢口(長江沿岸)、九江(長江沿岸)、鎮江(長江沿岸)、台南(台湾)、淡水(台湾)、汕頭(広東省)、瓊州海南島)、南京(長江沿岸)の10港
  2. ^ ロバート・ハート(英:Sir Robert Hart、中:羅伯特·赫德, 1835年 - 1911年)は、1853年から1908年まで清に滞在した中国通。祖国イギリスでは男爵位に叙され、清朝からも1889年に正一品官に任ぜられた。
  3. ^ アンソン・バーリンゲーム(英:Anson Burlingame、中:蒲安臣1820年 - 1870年)の欽差大臣任命:通常であれば外国公使を大臣に任命する事は有り得ないが、この時は「他に適任無し」として恭親王から上奏して認められた。この使節団はアメリカからヨーロッパに渡り、イギリス・フランス・プロイセン・ロシアを歴訪した。
  4. ^ 総理衙門の大臣数は、初期は3~5人だったが、後に9~11人に膨れ上がった。
  5. ^ 但し海関総税務司署を統べる総税務司は「最大貿易国がイギリスである限りはイギリス人を登用する」という約束に従って、代々イギリス人が務めていた。


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