直交周波数分割多重方式 実用

直交周波数分割多重方式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/08 08:48 UTC 版)

実用

OFDMシステム比較テーブル

さまざまな一般的なOFDMベースのシステムに関する重要な特徴を以下の表に示す。

規格名 DAB Eureka 147 DVB-T DVB-H DMB-T/H IEEE 802.11a
批准された年 1995 1997 2006 1999
現在の機器の周波数レンジ
(MHz)
174 - 240
1452 - 1492
470 - 862 470 - 862 470 – 862 4915 - 5825
Channel spacing B
(MHz)
1.712 8 8 8 20
サブキャリアの数 N 192, 384, 768 or 1536 2K mode: 1705
8K mode: 6817
1705, 3409, 6817 1(シングルキャリア)
3780(マルチキャリア)
52
サブキャリアの変調方法式(一次変調) DQPSK QPSK, 16QAM or 64QAM QPSK, 16QAM or 64QAM 4QAM, 4QAM-NR,[2]
16QAM, 32QAM and 64QAM.
BPSK, QPSK, 16QAM or 64QAM
使用されるシンボル長 (symbol length) TU
(μs)
2K mode: 224
8K mode: 896
224, 448, 896 3.2
追加されるガードインターバル TG
(Fraction of TU)
1/4, 1/8, 1/16, 1/32 1/4, 1/8, 1/16, 1/32 1/4, 1/6, 1/9 1/4
サブキャリアの配置間隔
Δf = 1/(TU) ≈ B/N
(Hz)
2K mode: 4464
8K mode: 1116
4464, 2232, 1116 8 M (single-carrier)
2116 (multi-carrier)
312.5K
Net bit rate R
(Mbit/s)
0.576 - 1.152 4.98 - 31.67
(typically 24)
3.7 - 23.8 4.81 - 32.49 6 - 54
スペクトル効率 R/B
(bit/s/Hz)
0.34 - 0.67 0.62 - 4.0 0.62 - 4.0 0.60 - 4.1 0.30 - 2.7
FEC 畳み込み符号

code rates:1/4, 3/8 or 1/2

畳み込み符号

code rates:1/2, 2/3, 3/4, 5/6 or 7/8

畳み込み符号

code rates:1/2, 2/3, 3/4, 5/6 or 7/8

BCH符号 畳み込み符号

code rates:1/2, 2/3 or 3/4

その他のFEC(もしあれば) None RS(204,188,t=8) RS(204,188,t=8) + MPE-FEC LDPC

code rates:2/5, 3/5 or 4/5

Maximum travelling speed
(km/h)
200 - 600 53 - 185
Time interleaving depth
(ms)
385 0.6 - 3.5 0.6 - 3.5 200 - 500
適応伝送
(ほかにあれば)
None None
多元接続の方式
(ほかにあれば)
None None
データ圧縮の種類 192 kbit/s
MPEG2 Audio
layer 2
4 Mbit/s
MPEG2
Not defined
(MPEG-2 or H.264 w/MP2)

ADSL

OFDMはG.DMT (ITU G.992.1) 規格に従い、既存の銅線(電話線)を用いた高速データー通信を行うADSL接続で使われている。

長い銅線では信号の高周波成分が減衰する。OFDMは周波数選択性減衰や狭帯域干渉に対処することが可能であり、この事実がOFDMがADSLモデムのようなアプリケーションで多用される主な理由である。しかしながら、DSLはすべての銅線の組で使うことができない。もし電話交換局に入っている電話回線の25%以上がDSLのために使われた場合、干渉が大きな問題となる可能性がある。

実験用アマチュア無線用途では、ユーザーは商業的でいつでもすぐ買えるADSL機器に、そのユーザーが認可されている無線周波数帯域へと周波数を単に移動させるラジオトランシーバーを取り付けたりしていた。

電力線搬送通信

OFDMによるノッチ
(サブキャリア5個ごとに1個(1サブキャリア分)のノッチの例)

OFDMは家庭内の電力配線を用いて通信回線を構築する電力線搬送通信に使用されている。OFDMで可能な適応変調(例:QPSKから16-QAMへの変更)は特に電力配線のような雑音が多い伝送路に対して重要となる。

なお高速PLCにおいては、漏洩電波(電磁両立性のエミッション)などの問題で、OFDM信号に「ノッチ」と呼ばれる特定の周波数帯域を減衰させる技術が使われる。ノッチ帯域を作り出すには、OFDMの一部のサブキャリアを使用停止にする。

無線LANおよびMetropolitan Area Network (MAN)

OFDMはIEEE 802.11a/g/nやWiMAXなどのワイヤレスLAN/WANアプリケーションにおいて使用されている。

IEEE 802.11aは5GHz帯域を使用し、6-54Mbit/sの通信速度が規定されている。変調方式にはBPSK、4-QAM (QPSK)、16-QAM、64-QAMの4つといくつかの畳み込み符号誤り検出訂正)が使用される。これによりその時々の通信状況に合わせて最適な通信速度とエラーレートに変更することが出来る。

米国ではワイヤレスISPであるClearwire社が2.5GHz帯のWiMAXネットワーク拡大において変調方式にOFDMを使用している。日本でもUQコミュニケーションズ社がモバイルWiMAXのサービス事業を展開している。

パーソナル・エリア・ネットワーク (PAN)

地上デジタルラジオおよびテレビ

地上デジタルテレビ方式の分布図。緑がISDB-T、青がDVB-Tを採用している地域である。

ヨーロッパとアジアでは主にOFDMが用いられるデジタルテレビ及びラジオ規格が採用されている。

地上デジタルテレビでは日本、ブラジルでは日本放送協会が中心となって策定されたISDB-Tが採用されており、またヨーロッパ・アジアの多くの地域ではDVB-Tが採用されている。

OFDMを利用していることにより、アナログ放送ではゴースト現象として問題となったマルチパスによる問題が緩和され、SFNが実現可能であるため中継時に周波数変換をして再送する必要がなく、周波数を有効活用できるメリットがある。

DVB-T

欧州委員会の指示により、欧州共同体内の視聴者に送信される全てのテレビサービスは認められたヨーロッパの標準化団体によって標準化された変調システムを使用しなければならないことになっている[3]。 そしてその標準規格はデジタルビデオブロードキャスティングプロジェクト (DVB Project) によりフレーム構造、チャネルコーディング、変調方式が策定された[4]。 この標準規格は慣習的にDVB-Tと呼ばれており、これには変調にCOFDMが必要となっている。現在DVB-Tはデジタルテレビシステムとしてヨーロッパを中心に広い地域で利用されている。

ISDB(日本の地上デジタル放送)で使われるBST-OFDM

日本ではBST-OFDMシステムが提唱されており、日本のデジタル放送規格であるISDB-T、ISDB-TSB、ISDB-C放送システムで使われるものである。BST-OFDMはいくつかのOFDMキャリアが同一多重内で異なる変調が可能であるということを利用し、COFDMを改善している。既にCOFDMのいくつかの形式は階層的な変調が可能であるが、BST-OFDMはこれをさらに柔軟にすることを目的としている。6MHzの1つのテレビチャンネル帯域は「セグメント」に分割することができ、セグメント毎に異なる変調を行い、異なるサービスに使用される。

例えば、BST-OFDMでは音声、データ、映像といったサービスをそれぞれ数本のキャリアから成る異なるセグメントに分けて同一の6MHzの帯域内で送信することが可能である。さらに例えばテレビ放送を高いマルチパス環境内の固定受信に最適化しつつ、音声やデータは移動体受信に最適化できるといった異なるパラメータで変調することが可能である。

地上デジタル放送規格であるISDB-Tでは1つのチャンネルに割り当てられる周波数帯を13個のセグメントに分割し、中心の1セグメントは移動体受信(ワンセグ)向けにビットレートを落としてその引き換えに低性能なアンテナでの受信などを可能にし、残りの12セグメントは固定受信向けにビットレートを高くしている。また今後予定されているデジタルラジオについても同様の手法が使用される予定であったがこれは中止された。







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