灰色藻 分布

灰色藻

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/08 16:30 UTC 版)

分布

淡水域にのみ出現する。特に、ある程度標高の高い湿原などに多い。低地の池にも見られるが、水量の少ない池よりもある程度水量や水質が安定した大型の湖沼を好む。このような分布を踏まえ、灰色藻の培養を行う場合には腐葉土泥炭を煮出した抽出液を培地に添加すると良い。

分類

灰色植物門

Cyanophora

Cyanoptyche

Gloeochaete

Glaucocystis

灰色藻類の系統関係[1]

上位分類としては、緑色植物・紅色植物と共に、一次共生植物のグループであるアーケプラスチダに含まれる。灰色植物門内には1綱3目4科4属のみが知られる[2]

Division Glaucophyta 灰色植物門
Class Glaucophyceae 灰色藻綱
  • Genus Cyanophora
シアネレ数は少なく、C. paradoxaで2つ、C. tetracyaneaで4つ。二本の不等長鞭毛を持ち遊泳する。細胞壁は無い。
  • Genus Gloeochaete
多数の小さなシアネレを持つ。遊泳細胞と不動細胞の両方のステージを持つグループ。不動細胞は寒天質に包まれたコロニーを形成する。細胞壁はあるが、その組成はセルロースではないとされる。
  • Genus Cyanoptyche
多数の小さなシアネレを持つ。細胞は不動で、寒天質に包まれたコロニーを形成する。Gloeochaete の不動細胞に似るが、二本の鞭毛を伸ばしている点が異なる。
  • Genus Glaucocystis
ソーセージ型のシアネレを10〜20個前後持つ。運動性の無い不動の細胞で、鞭毛は痕跡的である。セルロース性の細胞壁を持つ。

なお、かつて灰色藻として分類されていたが、その後の研究で別の系統のである事が判明した生物もある。

  • Glaucosphaera
単細胞紅藻(Bhattacharya et al. 1995)。葉緑体の色素組成から、灰色藻のような色を呈する。
  • Paulinella chromatophora
ケルコゾア有殻糸状根足虫。この生物も藍藻由来の葉緑体であるシアネレを持ち、膜間にペプチドグリカン層を保持している。ただし、宿主の系統が離れている為に灰色藻には含めない。Paulinella のシアネレは、アーケプラスチダの生物とは別の一次共生によって獲得されたと考えられている。

歴史

ドイツの医師Hermann Itzigsohnが1854年にデンブノ英語版の泥炭地から見出した生物にGlaucocystisと名付けたのが始まり(正式な記載は1868年)である。当時はまだ真核生物原核生物という区別がはっきり認識されておらず、細胞核プラスチドが分化した藍藻だと考えられていた。

20世紀に入ってからは、アドルフ・パッシャーが提唱した何らかの藻類に藍藻が共生した生物であるという考え方が広く受け入れられていた[3]。この場合、共生した藍藻をCyanelle、結果生じる総体をCyanomと呼ぶ。また形態的な観点から、Cyanophoraクリプト藻Glaucocystis緑藻が宿主となっていると考えられていた。ほかにも渦鞭毛藻紅藻が宿主だとする各種の説があった。

灰色藻として独立した位置づけが与えられたのは20世紀半ば以降のことである。ハインリッヒス・スクーヤは宿主も共生体も独立しては生存できないことから、1954年に新エングラー体系中で一個の生物としてGlaucophytaと命名した[4]。これはなかなか受け入れられなかったが、1979年にLudwig Kies電子顕微鏡による微細構造観察で、宿主とされる側に他の藻類とは異なる独自の特徴を認めた[5]ことで定説となった。


  1. ^ Chong et al. (2014). “Molecular markers from different genomic compartments reveal cryptic diversity within glaucophyte species”. Mol. Phylogenet. Evol. 76 (1): 181-188. doi:10.1016/j.ympev.2014.03.019. 
  2. ^ Hofbauer, W. K. (2015). “Glaucocystophyta”. In Frey, W. (ed.). Syllabus of Plant Families. Volume 2/1 (13th ed.). Gebrüder Borntraeger. pp. 4-10 
  3. ^ Pascher, A. (1929). “Studien über Symbiosen. Über einige Endosymbiosen von Blaualgen in Einzellern”. Jahrbücher für Wissenschaftliche Botanik 71: 386-462. 
  4. ^ Skuja, H., 1954: Glaucophyta. in Engler, A. Syllabus der Pflanzenfamilien, 12 Auf. (Hrsg.) Melchior, H., Werdermann, E. Bd. 1, 56–57. Gebrüder Borntraeger, Berlin.
  5. ^ Kies, Ludwig (1979). “Zur systematischen Einordnung von Cyanophora paradoxa, Gloeochaete wittrockiana und Glaucocystis nostochinearum”. Ber. Deutsch. Bot. Ges. Bd. 92 (1): 445-454. doi:10.1111/j.1438-8677.1979.tb03291.x. 


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