渡辺謙 来歴

渡辺謙

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/29 09:25 UTC 版)

来歴

デビューまで

新潟県北魚沼郡広神村にて共に教師をしていた両親の元に生まれる。両親の転勤で、幼少期を新潟県内の入広瀬村守門村(ともに現・魚沼市)、高田市で過ごす。新潟県立小出高等学校在学時には吹奏楽部に所属し、幼少の頃から親しんできたトランペットを担当。高校卒業後の1978年、東京の武蔵野音楽大学進学を目指す。しかし音大受験に必要な本格的な音楽教育は受けておらず、また渡辺が中学生の時、父・亮一が病に倒れ、仕事ができなくなったこともあり、学費捻出の困難などの問題から断念した。

同年、芥川比呂志演出による演劇集団 円公演『夜叉ヶ池』を観劇して感銘を受け、翌年に同劇団附属の研究所に入所。アルバイト先で知り合った猪俣公章の紹介で唐十郎作、蜷川幸雄演出『下谷万年町物語』のオーディションを受け、研究生ながら主演の青年役に抜擢された。

1982年、演劇集団 円の劇団員に昇格し、『未知なる反乱』でテレビデビューを果たした。1984年には『瀬戸内少年野球団』で映画デビュー。その後も『タンポポ』、『海と毒薬』などの映画に相次いで準主役級で出演。1986年のNHK連続テレビ小説はね駒』にも出演した。

『独眼竜政宗』『藤枝梅安』と闘病

1987年のNHK大河ドラマ独眼竜政宗』で主役(伊達政宗役)を演じ、39.7%という大河ドラマ史上最高の平均視聴率を獲得。一躍全国的な人気を獲得、スターダムにのし上がる。また、その頃から歌手としても1992年頃まで活動していた。

以降、舞台・テレビドラマなどで次々と大役を演じ、前途洋々に見えた1989年、映画初主演となるはずであった『天と地と』の撮影中に急性骨髄性白血病を発症し、降板。再起はおろか生命も危ぶまれたが約1年間の闘病後、治療を続けながらも俳優業に復帰。定期的に入院治療を続けながら、『仕掛人・藤枝梅安』を中心に活動するが、大きな仕事はできなかった。経過は良好に見え、一応治療が終了した1993年、NHK大河ドラマ『炎立つ』に再び主演、完全復活をアピールした。しかし、発病から5年が経った1994年に再発。再治療を行い、経過は良好となり、翌年、無事復帰を果たす。

方向性の模索

病気再発を経て再復帰した時期と前後して、初の本格的娯楽時代劇シリーズドラマ『御家人斬九郎』、2時間ドラマでは『わが町』『鍵師』などが当たり役となりシリーズ化されたが、渡辺はあまりにも強烈な「政宗」のイメージと、俳優としての評価以前にまず病気のことを持ち出されることなどに悩んでいたという。30代の終わりを機に、これらの人気シリーズを全て終了させるとともに、従来彼のイメージにはなかった悪役・ダメ男役・格好悪い役柄などを積極的に演じるようになる。2000年には、『池袋ウエストゲートパーク』に出演。2001年、久々に演劇集団 円の公演『永遠 Part2』で舞台に立つが、これが結局「円」での最後の舞台となった。2002年元日をもって演劇集団 円を退団、所属をケイダッシュに移す。

世界進出と映画初主演

日本国外映画初出演となったアメリカ映画『ラスト サムライ』(2003年公開)で、渡辺は同年度の第76回アカデミー賞助演男優賞ならびに第61回ゴールデングローブ賞 助演男優賞第30回サターン賞 助演男優賞にノミネートされる等高い評価を得る[3]。これを機にロサンゼルスに居を構え、『バットマン ビギンズ』や『SAYURI』など日本国外映画に立て続けに出演。当初通訳を要していた英会話に関しても猛勉強の末、殆どの会話を自らこなしている(現地での生活ぶりや英語学習の様子は「AERA English」に掲載された)。2005年には、米国の『タイム誌』の表紙にグラビアが掲載されたり、『ピープル誌』が企画する「最もセクシーな外国人男性」の1人に選出された。

日本映画では2006年に、荻原浩の小説『明日の記憶』映画化作品で映画初主演[4]。同作品の映画化に当たっては各映画会社の駆け引きがあり、渡辺を含む複数の日本を代表する大物俳優達が候補に挙がったが、自らも闘病経験があり原作に人一倍の共感を持てた渡辺が、荻原に映画化を熱望する旨の手紙を直接送付したことで(荻原は最初誰かの悪戯だと思ったが、紛れもなく渡辺本人からのものだと知り仰天したという)、渡辺の主演で映画化された。白血病の発症以降、患者役や医療関係者役、難病を扱った作品は避けてきたが、この作品で若年性のアルツハイマー病に冒されていくという主人公を演じている。また、映画公開と同じ時期に発表した自らの著書『誰? - WHO AM I?』で、かつて白血病の治療中頻繁に受けた輸血(主に血小板輸血)が原因でC型肝炎ウイルスに感染し、『明日の記憶』の撮影はその治療の副作用に悩まされながら敢行していたことを告白。現在は急性骨髄性白血病・C型肝炎ウイルス感染ともに問題のない良好な状態を保っているという。更にこの作品で初めてエグゼクティブ・プロデューサーを兼任[5]。映画の普及とアルツハイマー病への理解を促進するため全国各地を奔走した(ただし、渡辺本人は「自分はプロデューサーというよりも『イントロデューサー(紹介者)』である」と述べている)。

2006年には、クリント・イーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』に、栗林忠道役で日本国外映画初主演。他の主要日本人キャストはオーディションの末選出されたが、渡辺だけは監督から直接出演要請があった。外国語映画賞を受賞したゴールデングローブ賞の授賞式において、壇上のクリント・イーストウッド監督は「偉大なるケン・ワタナベに敬意を表したい」と渡辺に言葉を贈った。

2007年2月25日(現地時間)、第79回アカデミー賞授賞式に出席し、カトリーヌ・ドヌーヴと2人で非英語圏の俳優代表として舞台に立ち、賞が設定されて50周年を迎えた外国語映画賞の歴史を紹介した[6][7]

2008年2月に撮影開始された映画『ダレン・シャン』にも、サーカスのオーナー、Mr.トールで出演。また、『バットマン ビギンズ』で仕事をしたクリストファー・ノーラン 監督の新作サスペンス『インセプション』で再び起用されている。

2009年10月、山崎豊子原作の映画『沈まぬ太陽』に恩地元役で主演し、第33回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、第34回報知映画賞主演男優賞を受賞。映画公開初日の舞台挨拶にて作品・撮影の厳しさを語り、男泣きした。

2014年には、『GODZILLA ゴジラ』にメインキャストの一人として出演。この作品の中で「ガッズィーラ」という英語の発音を頑なに拒否し、「ゴジラ」と日本語の発音にこだわったとインタビューに答えている[8][9][10][11]

韓国の釜山国際映画祭では日本人として初めて開幕式の司会をした[12]

2015年、ミュージカル『王様と私』でトニー賞・ミュージカル部門主演男優賞にノミネートされる[13][14][15]

2016年2月9日、早期の胃がんが発見され、手術を受けたことを明らかにした[16]。2時間弱の手術と4日間の入院後、自宅療養を経て、3月5日に渡米し、再び『王様と私』でブロードウェイミュージカルに出演を果たす[17]

2022年12月30日、21年間所属したケイダッシュを同年末をもって退社し2023年1月1日から独立することを明らかにした[18]

栄誉賞

  • 2014年11月1日、魚沼市制施行10周年記念式典で「名誉市民称号」を授与[19]
  • 2015年9月2日、新潟県民栄誉賞授与[20]

注釈

  1. ^ 妻夫木聡とW主演。

出典

  1. ^ 画家。
  2. ^ a b PROFILE / プロフィール”. 渡辺謙. ケイダッシュ. 2011年10月28日閲覧。
  3. ^ 「たそがれ清兵衛」と渡辺謙さんがアカデミー賞にノミネート”. News. CINEMA TOPICS (2004年1月28日). 2015年5月10日閲覧。
  4. ^ 渡辺謙初主演作「明日の記憶」初日に感激”. シネマ ニュース. 日刊スポーツ (2006年5月14日). 2015年5月10日閲覧。
  5. ^ 明日の記憶”. 作品. Walkerplus. 2015年5月10日閲覧。
  6. ^ “<第79回アカデミー賞>会場に渡辺謙が登場”. 「MODE PRESS」AFPBB News(AFP通信). フランス通信社 / 株式会社クリエイティヴ・リンク. (2007年2月26日). https://www.afpbb.com/articles/modepress/2187661?pid=1373293 2022年9月5日閲覧。 
  7. ^ 外国語映画賞のプレゼンターで、謙さん登場!- 第79回アカデミー賞”. シネマトゥデイ. 株式会社シネマトゥデイ (2007年2月26日). 2022年9月5日閲覧。
  8. ^ 渡辺謙「ゴジラに国境も国籍もない」『GODZILLA』ハリウッドで初お披露目”. レポート. cinemacafe (2014年5月10日). 2015年5月10日閲覧。
  9. ^ 渡辺謙「GODZILLA」に確かな手応え「ゴジラに国境ない、世界中に愛されている」”. 映画ニュース. 映画.com (2014年5月10日). 2015年5月10日閲覧。
  10. ^ 渡辺謙 こだわりの発音!「GODZILLA」ではなく「ゴジラ」”. スポーツニッポン (2014年5月10日). 2015年5月10日閲覧。
  11. ^ ハリウッドが「ゴジラ」に熱狂! 映画の聖地 “ドルビー・シアター”で、「ゴジラ」を初上映!!”. 映画トピックス. 東宝 (2014年5月8日). 2013年5月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年5月10日閲覧。
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  13. ^ 日本人初の快挙!渡辺謙、トニー賞主演男優賞にノミネート”. シネマトゥデイ (2015年4月28日). 2015年4月29日閲覧。
  14. ^ Kelli O'Hara and Ken Watanabe in THE KING AND I”. YouTube (2015年4月28日). 2015年4月29日閲覧。
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  17. ^ a b 胃がん手術の渡辺謙 「王様と私」に予定前倒し出演、ツイッターで発表”. スポニチアネックス (2016年3月9日). 2016年3月9日閲覧。
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  22. ^ ABCラジオドッキリ!ハッキリ!三代澤康司です』より
  23. ^ "渡辺謙が語る「俳優とは何か?」、移住した長野・軽井沢での生活も笑顔で報告"スポニチ(2020年01月15日)
  24. ^ "〈山ろく清談〉俳優・渡辺謙さん 映画人、文化担う意識を"信濃毎日新聞(2021年07月27日)
  25. ^ "渡辺謙、1人で軽井沢のスーパーでワイン物色「あの世界のケンが…」"週刊女性(2018年8月21・28日号)
  26. ^ [1],goo
  27. ^ 阪神の快進撃に各界の虎党も大興奮 乾貴士「むっちゃ応援」SNSで近本にエール”. デイリースポーツ (2019年10月8日). 2021年6月11日閲覧。
  28. ^ 「世界の渡辺謙」がローカル番組で阪神愛を熱弁「大山の背中に炎が見えた」「湯浅登場に“ここで行くのか”と」”. デイリースポーツ (2023年11月3日). 2023年11月8日閲覧。
  29. ^ 熱烈阪神ファンの渡辺謙が関西ローカル出演で「サンテレビ」トレンド入り ネット上では「ギャラどうなっとん」”. 中日スポーツ・東京中日スポーツ (2023年11月3日). 2023年11月4日閲覧。
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  33. ^ 渡辺謙の不倫はなぜ大々的に報道されたのか? 裏側にバーニング系所属事務所との関係悪化が exciteニュース 2017年4月2日
  34. ^ 世界の渡辺謙さんに「不倫」報道 お相手は元ホステスの36歳清楚系美人…「週刊文春」報じる産経新聞』2017年4月2日
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  36. ^ 渡辺謙、21歳年下・元ホステスの不倫相手と再々婚発表も「どうでもいい」意外と騒がれない背景に“薄れゆく世間の興味”「世界のワタナベ」が「過去の人」に(2ページ目) | 週刊女性PRIME
  37. ^ “渡辺謙さんが再婚「のんびりとやってまいります」…18年に南果歩さんと離婚”. 読売新聞オンライン (読売新聞). (2023年6月30日). https://www.yomiuri.co.jp/culture/20230630-OYT1T50210/ 2023年7月2日閲覧。 
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  40. ^ 【謙&杏】親子で料理をしました【Cooking】,YOUTUBE,2022年8月28日
  41. ^ 杏、フランス移住! 父・渡辺謙と初共演した自身のユーチューブで発表「2つのおうちを持つみたいな」中日スポーツ,2022年8月28日
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  43. ^ 渡辺謙、新国立計画をチクリ「不思議なニュース」『スポーツ報知』2015年7月8日
  44. ^ <上海万博>「遣唐使船」が到着、12日のジャパン・デーにお披露目―上海市”. Record China (2010年6月11日). 2018年3月3日閲覧。
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