池田大作に対する訴権の濫用 訴訟の周辺

池田大作に対する訴権の濫用

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/02 16:31 UTC 版)

訴訟の周辺

自民党

1993年以降、自民党は創価学会の金銭、選挙運動など実態を調査、公明党及び新進党(1994年末に公明党が合流した)に対する政教分離問題を中心とした追及を続けていた。その中には創価学会元顧問弁護士の山崎正友龍年光など離反した元幹部を党の勉強会に招き、実態の把握に努めた[注 3]。そんな中、1994年に創価学会の政教一致批判を目的とした自民党内勉強会「憲法20条を考える会(会長は亀井静香)」が結成され、さらに同会の影響下で他宗派の宗教者や有識者による「四月会」(信教と精神性の尊厳と自由を確立する各界懇話会)が設立された。宗教法人法改正案(1995年末に可決・成立)の審議過程で自民党が池田の証人喚問を要求し、新進党の公明党系議員が議場でピケを張るなど強硬に反対した[注 4]亀井静香は1994年、宗教法人法の改正で答弁した際「池田大作さんに宗教法人特別委員会に参考人として出てきてもらい、宗教法人法の改正に反対の理由を述べてもらいたい」と発言、[注 5]、創価学会との対立姿勢をあらわにした。白川勝彦によると、自民党の1996年頭の運動方針には「いま、わが国の政治にとって最も憂うべきは、宗教団体・創価学会が新進党という政党の皮をかぶって国民を欺き、政治の権力を握ろうと画策していること」という文言があったという[10]

このような厳しい対立の構図の中で第1次橋本内閣が発足し、直後の第136回国会(住専国会)では、衆議院予算委員会(1996年4月1日)で白川勝彦が「選挙について記述がある」として女性の手記を資料提出し、女性を「池田大作にレイプされたという衝撃の告白をした●●さん」と紹介して、「創価学会の選挙運動への関与を究明する」という名目で池田と女性の証人喚問を要求した[11]。金融問題等に関する特別委員会(5月28日)でも、原田昇左右が池田と女性の証人喚問を求めた[12]。自民党機関誌『自由新報』は、1996年から1997年にかけて俵孝太郎内藤国夫らによる「シリーズ新進党=創価学会ウオッチング」を連載、そのうち4回で「レイプ疑惑」を取り上げた。このように、自民党は女性の手記発表や裁判をさまざまな形で利用した。

橋本内閣は1996年に衆議院を解散して総選挙に臨んだ。自民党は消費税率の引き上げなど不利な公約を掲げたにもかかわらず議席を伸ばした。朝日新聞社『AERA』・毎日新聞社『エコノミスト』等の雑誌は、自民党の勝因としてや亀井静香、白川勝彦が中心となった反創価学会キャンペーンを挙げた。総選挙後に行われた新進党の総括では敗因として、『比例は新進党、選挙区は人物本位』という戦略で臨んだが新進党の組織選挙が先の参議院選挙ほど機能しなかった[注 6]ことや重複立候補を立てなかったことに対する失敗、民主党も消費税増税批判をしていたため、新進党と民主党がともに候補者を擁立した選挙区では有権者の消費税増税批判票が二党に分裂した結果、自民党候補が小選挙区で棚ぼた的に当選した実例を挙げた[注 7]。しかし、内部対立のしこりは残り、一部議員は自民党へ引き抜かれ、新進党は1997年末に自由党、公明党などの6党に分離し解散した。

また、社会党(後に社民党に改名)が1996年の総選挙で惨敗したこともあって、自民党は社会党の連立離脱を想定し、代替の連立相手となり得る存在だった公明党との関係修復を模索し、それまでの方針を180度転換する。まず、1997年10月に「シリーズ新進党=創価学会ウオッチング」の連載を休止(事実上の中止)し、創価学会側とパイプのあった自民党の旧竹下派を仲介役として、連立政権樹立に向けた協議をスタートした。そして、1998年4月に自民党は(創価学会の抗議に応じて)『自由新報』記事に関して、レイプ疑惑については事実無根だったとして、橋本龍太郎首相(当時)ら自民党執行部が公式に謝罪した。このため、自民党に裏切られた格好となった夫妻は自民党に対し、名誉毀損による損害賠償を求めて告訴した[13]

その後、1998年の参院選での大敗を経て、翌1999年10月に自民党は自由党との連立政権公明党を加えた。この後、憲法20条を考える会は解散、2001年には四月会も解散し、白川勝彦は自民党を離党して「創価学会の政治支配と戦う」を掲げ、自公連立政権の打倒を目指す新党・自由と希望を立ち上げた。女性は、2001年7月の参議院選挙では、白川新党から立候補した法華講員を応援したが、この候補は落選した[14]

週刊新潮

創価学会員は『週刊新潮』や新潮社に対し抗議の電話を繰り返し、JCJ機関紙「ジャーナリスト」では、機関誌である『第三文明』や『潮』が電車の中吊り広告などにおいて、デマ雑誌やデマ出版社(週刊新潮のこと)は潰れろという内容や『週刊新潮』に勝訴した内容を中吊りに掲載していると批判した。[15]創価学会系出版社が刊行する『第三文明』・『潮』は『週刊新潮』の報道姿勢を非難する記事を再三掲載した[16]

手記掲載記事は、雑誌編集者の互選による「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」で第3回スクープ部門賞に選出された(1997年)。夫妻は敗訴し、『週刊新潮』も判決で「本件のような事実的根拠が極めて乏しい事柄について、しかも、スキャンダラスな内容のものをいたずらに報道されるいわれはない」と指摘されたが、『週刊新潮』は屈することなく創価学会のスキャンダル報道を続け、敗訴すると司法にも批判を向けている[注 8]。夫妻の敗訴確定後に『週刊新潮』は山田直樹による連載記事「新・創価学会を斬る」を掲載、この裁判を「事実審理に入らないまま終結した」「世にも奇妙な裁判」と呼んだ[3]。この連載は、2004年に「編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」第10回大賞(2004年)を受賞した。


注釈

  1. ^ 創価学会による被害者の会 WEBサイトに団体代表者の名前の掲載がなく記載されている住所は私書箱
  2. ^ (不法行為による損害賠償請求権の期間の制限) 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
  3. ^ 山崎は1993年12月9日 自民党民主政治研究会の勉強会に出席し発言している
  4. ^ 最終的には当時の秋谷栄之助会長を参議院の特別委員会に参考人招致することで落ち着いた。
  5. ^ 1994年5月24日衆議院予算委員会
  6. ^ 参議院では旧公明党を重視し、比例上位は旧公明党議員が独占したが、衆議院では他派閥の反対もあり均等に振り分けられたことも要因の一つ。
  7. ^ 実際、小選挙区において1万票以内の小差で落選した新進党の立候補者が多かった。
  8. ^ 例えば、「秋田経法大学(現ノースアジア大学)を乗っ取った『創価学会』弁護士の『伝書鳩スパイ網』恐怖政治」(2007年11月8日号)が大学側に訴えられて謝罪広告と損害賠償630万円を命じられると[1]、2010年4月29日号に謝罪広告と並べて批判記事を掲載し「噂の掲載に対して噂の内容の真実性(または真実相当性)の根拠を求めるのは不当」「意に沿わない謝罪広告は日本国憲法第19条(良心の自由)違反」と糾弾した。

出典

  1. ^ a b 平成8年(ワ)第10485号 損害賠償請求事件 東京地裁判決(2000年5月30日)。HTMLテキスト(抜粋)。高裁判決とともに『判決 訴権の濫用―断罪された狂言訴訟』(倉田卓次他3名 日本評論社 2002年 ISBN 4535513260)に全文が収録されている。
  2. ^ a b 平成12年(ネ)第3364号 損害賠償請求控訴事件 東京高裁判決(2001年1月31日)。テキスト(抜粋)。((『民事手続判例研究】))にも一部が転載されている
  3. ^ a b c 『週刊新潮』2002年11月27日号 新・創価学会を斬る 第4回
  4. ^ FCCJ Press Conference(2014年3月8日時点のアーカイブ
  5. ^ 月刊潮2001年9月号: 最高裁で完全敗訴!
  6. ^ 『民事手続判例研究』.
  7. ^ 裁判所から「訴権濫用」と弾劾された事件(月刊潮 2000年11月号)
  8. ^ 聖教新聞 2005年3月21日掲載の対談記事など
  9. ^ 『週刊新潮』2005年12月1日号
  10. ^ 創価学会党化した自民党6 (『FORUM21』123号(2007年4月1日)
  11. ^ 第136回国会 衆議院予算委員会 会議録 第22号
  12. ^ 第136回国会 衆議院金融問題等に関する特別委員会 第3号
  13. ^ 地湧の電子書庫 - 言論のテロリズム:巻末資料
  14. ^ 『慧妙』2001年8月1日号
  15. ^ JCJ機関紙「ジャーナリスト」2003年11月号
  16. ^ 訴権の濫用とメディアの罪 (渡辺武達、潮2000年8月号)断罪された「●●手記」――嘘を垂れ流した『週刊新潮』の責任問う (山本栄一、潮2000年10月号)第三文明:『週刊新潮』が●●問題に狂奔する「理由」など。
  17. ^ 山本栄一 『言論のテロリズム 週刊新潮「捏造報道事件」の顛末』 鳳書院、2001年。ISBN 4871221245 (全文)


「池田大作に対する訴権の濫用」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「池田大作に対する訴権の濫用」の関連用語

池田大作に対する訴権の濫用のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



池田大作に対する訴権の濫用のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの池田大作に対する訴権の濫用 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS