梅雨 各地の梅雨

梅雨

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/15 06:38 UTC 版)

各地の梅雨

日本

梅雨の平均期間・平均降水量[6]
1971年~2000年 平年値
地点名 代表地点 梅雨入り 梅雨明け 日数 降水量
北海道地方 - - - - -
東北北部 青森 06月12日 07月27日 46日 141mm
東北南部 仙台 06月10日 07月23日 44日 243mm
北陸地方 新潟 06月10日 07月22日 43日 276mm
関東地方 東京 06月08日 07月20日 43日 288mm
東海地方 名古屋 06月08日 07月20日 43日 312mm
近畿地方 大阪 06月06日 07月19日 44日 296mm
中国地方 広島 06月06日 07月20日 45日 327mm
四国地方 高知 06月04日 07月17日 44日 201mm
九州北部 福岡 06月05日 07月18日 44日 338mm
九州南部 鹿児島 05月29日 07月13日 46日 540mm
奄美地方 奄美 05月10日 06月28日 50日 511mm
沖縄地方 那覇 05月08日 06月23日 47日 234mm
各地域の極値[10]
最早値 最晩値 降水量の平年比
地点名 梅雨入り 梅雨明け 梅雨入り 梅雨明け 最少 最多
北海道地方 - - - - - -
東北北部 06月02日 07月08日 07月03日 08月14日 030% 169%
東北南部 06月01日 07月05日 06月30日 08月09日 041% 153%
北陸地方 05月22日 07月02日 06月28日 08月14日 036% 176%
関東地方 05月06日 06月29日 06月22日 08月04日 050% 174%
東海地方 05月04日 06月22日 06月28日 08月03日 050% 193%
近畿地方 05月22日 07月03日 06月27日 08月03日 040% 184%
中国地方 05月08日 07月03日 06月26日 08月03日 038% 195%
四国地方 05月12日 07月01日 06月26日 08月02日 056% 187%
九州北部 05月11日 07月01日 06月26日 08月04日 031% 192%
九州南部 05月01日 06月24日 06月21日 08月08日 033% 182%
奄美地方 04月25日 06月10日 05月27日 07月20日 032% 185%
沖縄地方 04月20日 06月08日 06月04日 07月10日 034% 214%

北海道地方

実際の気象としては北海道にも道南を中心に梅雨前線がかかることはあるが、平均的な気象として、つまり気候学的には北海道に梅雨はないとされている[11]1970年(昭和45年)に気象庁は梅雨の定義を統一し過去の梅雨入り・明けも遡って決定したが、このとき、北海道については梅雨がはっきりしないことから梅雨入り・明けを定めないことになった。「蝦夷梅雨」(えぞつゆ)の俗称が登場したのはこれ以降とされる[12]。梅雨前線が北海道に到達する梅雨末期は勢力が衰え、北上する速度が速まることが背景にある。

北海道の中でも南西部太平洋側(渡島胆振日高)では本州の梅雨末期に大雨が降る事がある。また、北海道の広い範囲でこの時期は低温や日照不足が起こりやすいほか、釧路など東部で海霧の日数が多くなるのも、東北や関東・甲信越の梅雨と同じくオホーツク海高気圧の影響を受けている[11]。特に、5月下旬から6月上旬を中心として見られる一時的な低温は、北海道ではリラ(ライラック)の花が咲く時期であることから俗に「リラ冷え」とも呼ぶ[注 4][13][14]。また、このようにぐずついた肌寒い天気が、年によっては2週間程度、本州の梅雨と同じ時期に続くことがあり、「蝦夷梅雨」と呼ばれることも決して少なくない[15]

1990年代以降より、北海道では限りなく梅雨に近い天候が現れる年が次第に増加している。梅雨の特徴のひとつである日照の顕著な減少を指標とした研究では、本州以南で毎年みられるような「メリハリ」のある日照変化が札幌では1960年代 - 1980年代に約4年に1回だったが、1990年代以降は約2年に1回になり頻度が増している。レジームシフトに伴う気候変動で北海道でも梅雨が発生するようになるのではないかという議論はあるが、気候モデルの梅雨前線帯に対応する亜熱帯ジェットが現在より南に偏るとする予測はこれに反している。梅雨らしい天候は主にラニーニャの発生時にみられ、毎年ではない。頻度増加の原因にはPDO指数の負偏移などが指摘されている[12]

沖縄地方〜東北北部

日本では各地の地方気象台気象庁が、数個の都府県をまとめた地域ごとに毎年梅雨入り・梅雨明けの発表をする(北海道を除く)。まず、梅雨入り・梅雨明けしたと思われるその日(休日の場合は、以降最初の平日)に「速報値」として発表が行われ、その発表に従って「梅雨入りしたとみられる」・「梅雨明けしたとみられる」と報道される。その後、5月から8月の天候経過を総合的に検討し、毎年9月に最終的な梅雨の時期を「確定値」として発表する。その際、速報値での梅雨入り・梅雨明けの期日の修正が行われたり、最終的に「特定せず」という表現になることもある。一般に、南の地域ほど梅雨の到来は早く、沖縄は5月中旬から6月下旬、東北・北陸では6月下旬から7月下旬頃となるのが平均的である。

梅雨入りや梅雨明けの発表は通常、次のようにして行われる。各気象台は主に、1週間後までの中期予報とそれまでの天候の推移から、晴れが比較的多い初夏から曇りや雨の多い梅雨へと変わる「境目」を推定して、それを梅雨入りの日として発表している。端的には、管轄地域で曇りや雨が今後数日以上続くと推定されるときにその初日を梅雨入りとする。梅雨明けの場合は逆に晴れが数日以上つづくときである。中期予報の根拠になるのは、誤差が比較的少ないジェット気流などの上空の大気の流れ(亜熱帯ジェット気流と梅雨前線の位置関係は対応がよい)の予想などである。ただ、この中期予報自体が外れると、発表通りにいかず晴れたりする。梅雨入りや梅雨明けの発表は、確定したことを発表するのではなく、気象庁によれば「予報的な要素を含んでいる」ので、外れる場合もある。

ただし、梅雨前線が停滞したまま立秋を過ぎると、梅雨明けの発表はされない。立秋の時期はちょうど、例年梅雨前線がもっとも北に達するころであり、これ以降はどちらかといえば秋雨の時期に入る。しかし、この場合でも翌年には通常通り「梅雨入り」を迎えるが、「梅雨明けがないまま一年を越して重畳的にまた梅雨入りとなる」わけではない。つまり、梅雨明けがない場合は「はっきりと夏の天気が現れないまま梅雨から秋雨へと移行する」と考える。

梅雨期間の終了発表のことを俗に梅雨明け宣言という。基本的に、梅雨前線の北上に伴って南から北へ順番に梅雨明けを迎えるが、必ずしもそのようにならない場合もある。前線が一部地域に残存してしまうような場合には、より北の地方の方が先に梅雨明けになる場合もある。過去に、先に梅雨入りした中国地方より後に梅雨入りした北陸地方が先に梅雨明けしたり、関東地方の梅雨明けが西日本より大幅に遅れたりした例がある。

梅雨の末期は太平洋高気圧の勢力が強くなって等圧線の間隔が込むことで高気圧のへりを回る「辺縁流」が強化され、暖湿流が入りやすくなるため豪雨となりやすい[16]。逆に梅雨明け後から8月上旬くらいまでは「梅雨明け十日」といって天候が安定することが多く、猛暑に見舞われることもある。

梅雨の期間はどの地方でも40日から50日前後と大差はないが、期間中の降水量は大きく異なる。本土では西や南に行くほど多くなり、東北よりも関東・東海・近畿、関東・東海・近畿よりも九州北部、九州北部よりも九州南部の方が多い。一方南西諸島では、石垣島や那覇よりも名瀬の方が期間降水量は多く、総合的に日本付近の梅雨期の雨量は九州南部が最も多い[16]

ただし、梅雨前線が北上したまま小暑を過ぎると、梅雨入りの発表はされない。小暑の時期はちょうど、明確な区切り無く梅雨明けに移る。小暑以降の梅雨明けという。つまり、梅雨入りがない場合は「はっきりと梅雨の天気が現れないまま梅雨から夏空へと移行する」と考える。

小笠原諸島

小笠原諸島が春から夏への遷移期にあたる5月には、気団同士の中心が離れているため前線が形成されず、雨が長続きしない。そして初夏を迎える6月頃より太平洋高気圧の圏内に入ってその後ずっと覆われるため、こちらも梅雨がない[17]

中国

中国中部・南部でも梅雨がみられる。中国では各都市の気象台が、梅雨入りと梅雨明けの発表をしている。ある研究では、1971年 - 2000年の各都市の梅雨入り・梅雨明けの平均値で、長江下流域の梅雨入りは6月14日、梅雨明けは7月10日、淮河流域の梅雨入りは6月18日、梅雨明けは7月11日となっている[5]

目安として、華南では5月中旬ごろに梅雨前線による長雨が始まり6月下旬ごろに終わる。時間とともにだんだんと長雨の地域は北に移り、6月中旬ごろから7月上旬ごろに華東(長江中下流域)、6月下旬ごろから7月下旬ごろに華北の一部が長雨の時期となる。長雨はそれぞれ1か月ほど続く。

朝鮮半島

韓国各地方の梅雨の平均期間・平均降水量[18]
地域 梅雨入り 梅雨明け 日数 期間降水量
中部地方 6月23 - 24日 7月23 - 24日 32日 238 - 398 mm
南部地方 6月22 - 23日 7月22 - 23日 199 - 443 mm
済州道 6月19日 7月20 - 21日 33日 328 - 449 mm

朝鮮半島では6月下旬ごろから7月下旬ごろに長雨の時期となり、1か月ほど続く。北にいくほど長雨ははっきりしないものになる[19]


注釈

  1. ^ a b 梅雨前線のもととなる対流)は、大気の相当温位θeの減率が大きいほど強くなる。大気の温度湿度が高いほどθeは大きいので、乾と湿、あるいは寒と暖の性質を持つ気団の衝突によって大気のθe減率が大きくなることで、前線の雲が発生しやすくなる。
  2. ^ 2004年に小暑の2日以降になってもまだ梅雨に入っていない場合は梅雨入りを発表(特定)しないことを定めた。また7月31日の時点でもまだ梅雨入りがなされていない場合は、梅雨入りそのものが存在しなかったとの発表となる(扱いは梅雨入り特定なしと同じ)。
  3. ^ 2004年に立秋の2日以降になってもまだ梅雨が明けない場合は梅雨明けを発表(特定)しないことを定めた。また8月31日の時点でもまだ梅雨明けしない場合は、梅雨明けそのものが存在しなかったとの発表となる(扱いは梅雨明け特定なしと同じ)。梅雨明け特定なしは何度があるが、梅雨明けそのものがなかったのは、現時点では唯一、1993年だけである。1993年の記録的長雨では、沖縄と北海道以外での梅雨が、8月も月末まで梅雨となり(8月の梅雨は度々発生する青森岩手秋田北東北3県を除き観測史上では極めて稀である)、3か月近くにわたって梅雨が続いた状態であったため、梅雨明けそのものがなかった。
  4. ^ なお、「リラ冷え」は1970年代から知られるようになった言葉で、俳人の榛谷美枝子が初めて俳句に用いたものを、辻井達一が著書で紹介、それがさらに渡辺淳一によって引用され小説『リラ冷えの街』となり、テレビドラマ化もされたことが契機となって広まったと伝えられている。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i キーワード 気象の事典、加藤内蔵進「梅雨」221-226頁
  2. ^ 甲東哲、先田光演 編、『分類沖永良部島民俗語彙集』、p258、2011年、鹿児島、南方新社、ISBN 978-4-86124-209-0
  3. ^ 岩倉市郎、『喜界島方言集』p192、1941年、東京、中央公論社
  4. ^ 내일 첫 장맛비…올 장마 짧지만 굵다” (朝鮮語). KBS 뉴스 (2019年6月25日). 2023年7月16日閲覧。
  5. ^ a b c K.Iwata (2005年6月25日). “中国語の落とし穴026【出梅】”. 中国語学習ノート. 2009年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月11日閲覧。
  6. ^ a b 夏(6〜8月)の天候』(PDF)(プレスリリース)気象庁、2021年9月1日https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/data/stat/tenko2021jja_besshi.pdf2021年9月2日閲覧 
  7. ^ a b Yahoo!百科事典『梅雨(ばいう)』
  8. ^ 二宮、81-84頁
  9. ^ 二宮洸三 『豪雨と降水システム』、121-122頁、東京堂出版、2001年 ISBN 4-490-20435-3
  10. ^ 昭和26年(1951年)以降の梅雨入りと梅雨明け(確定値)”. 気象統計情報. 気象庁. 2022年9月2日閲覧。
  11. ^ a b 『気象予報士ハンドブック』、2008年、§1-3-5
  12. ^ a b 藤川典久 (2018). “北海道に梅雨のない時代は終わったのか?”. 細氷 (日本気象学会北海道支部) (64). http://www.metsoc-hokkaido.jp/saihyo/pdf/saihyo64/64_17_fujikawa.pdf. 
  13. ^ 榛谷美枝子さん:季語「リラ冷え」の俳人、1月に96歳で永眠、香る花に託した思い /北海道」毎日新聞、2013年5月31日北海道版
  14. ^ 豊島秀雄「ことば(放送用語) > 放送現場の疑問・視聴者の疑問 > 北海道の「リラ冷え」、本州の「花冷え」と同じ?」、NHK放送文化研究所、1999年5月1日付
  15. ^ “えぞ梅雨? 北海道内で雨や曇り続く 札幌は11日連続の降水”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年6月16日). オリジナルの2014年7月14日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140714160247/http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/545685.html 
  16. ^ a b 『気象予報士ハンドブック』、2008年、§1-3-2
  17. ^ 森田正光 (1999年8月30日). “小笠原に梅雨はある?”. 森田さんのお天気ですかァ?. TBSテレビ. 2009年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年8月16日閲覧。
  18. ^ 장마의 시작과 끝(평년값)(梅雨の開始と終了 平年値)』(html)(プレスリリース)大韓民国気象庁、2009年5月26日https://data.kma.go.kr/climate/rainySeason/selectRainySeasonList.do?pgmNo=1202021年3月5日閲覧 
  19. ^ 幡野泉 (2006年5月30日). “韓国にも「梅雨」はあるの?”. 季節から学ぶ韓国語. All About. 2009年8月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年6月11日閲覧。
  20. ^ a b c 最新気象の事典 p.429.朝倉正「走り梅雨」
  21. ^ a b 最新気象の事典 p.46.平塚和夫「送り梅雨」
  22. ^ エルニーニョ現象に伴う日本の天候の特徴”. エルニーニョ/ラニーニャ現象に関するデータ. 気象庁. 2007年6月29日閲覧。
  23. ^ ラニーニャ現象に伴う日本の天候の特徴”. エルニーニョ/ラニーニャ現象に関するデータ. 気象庁. 2007年6月29日閲覧。
  24. ^ a b c “梅雨って何?(3) どう生かす 「梅雨」への高い関心”. asahi.com (朝日新聞社). (2005年6月13日). http://www.asahi.com/special/june2005/TKY200506130497.html 2017年6月7日閲覧。 
  25. ^ 浅野芳『お天気おじさんうちあけ話』家の光協会(原著1981年7月)、p. 123頁。ASIN B000J7XODO 
  26. ^ a b c 最新気象の事典 p.389.平塚和夫「菜種梅雨」
  27. ^ a b 日本国語大辞典、世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、デジタル大辞泉、とっさの日本語便利帳、大辞林 第三版、日本大百科全書(ニッポニカ)、精選版. “菜種梅雨(なたねづゆ)とは”. コトバンク. 2020年5月31日閲覧。
  28. ^ a b c d 「春の長雨」と「菜種梅雨」、同じ意味? | ことば(放送用語) - 放送現場の疑問・視聴者の疑問 | NHK放送文化研究所”. www.nhk.or.jp. 2020年5月31日閲覧。
  29. ^ a b c 最新気象の事典 p.28.平塚和夫「卯の花くたし」
  30. ^ a b 最新気象の事典 p.226.朝倉正「秋霖」






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