日向灘地震 日向灘地震の概要

日向灘地震

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/10 09:09 UTC 版)

赤線南海トラフ。日向灘地震の震源域はその西端部分から西側の海域一帯である。
1662年
1968年
17世紀以降に発生したM7.6前後の日向灘地震の震央を、1923年以降に発生したM7.0-7.2の日向灘地震の震央をで示した。

概要

宮崎県および大分県の沖合にあたる日向灘の海域では、過去より繰り返し大地震が発生する事が知られている。日本政府の地震調査研究推進本部 地震調査委員会の報告(2004年)によると、日向灘地震は規模により2つのタイプに分けられ、マグニチュード (M) 7.6前後のものと、M7.0 - 7.2程度のものが想定されている。いずれも陸側のプレート(ユーラシアプレート[1])とフィリピン海プレートの境界面で起こる低角逆断層(衝上断層)型のプレート間地震(海溝型地震)と推定され、震源域は具体的に特定できないものの深さは10 - 40km付近[2]

九州東岸の宮崎県串間市付近から大分県佐伯市付近までは海岸線が北北東-南南西方向に伸び、その南東側の沖には南海トラフの海溝軸[3]がほぼ平行に伸びている。地震調査委員会の報告に用いられた評価領域は、先述の海岸線を北東に愛媛県宇和島市付近まで延長した線の付近を陸側の外縁とし、そこから海溝軸までの間の幅およそ100 - 150kmを領域としている。海溝軸に近い幅50km程度は領域から除かれている[4]

今後日向灘地震が発生した場合、周辺の沿岸各地に地震の揺れによる被害のほか、震源域が浅い場合には津波による被害も生じることが予想されている。特に、九州では宮崎県や大分県、四国では愛媛県や高知県の太平洋側などで津波の被害が予想されている。

発生間隔

M7.6前後のものは約200年間隔で発生すると推定され、17世紀以降では1662年 (M7.6)と1968年 (M7.5)の2回が該当すると考えられており、2回とも津波を引き起こし人的被害を出している。また、M7.0 - 7.2程度のものは約20 - 27年間隔で発生すると推定され、1923年以降は1931年 (M7.1)、1941年 (M7.2)、1961年 (M7.0)の3回、ないし1984年 (M7.1)を含めて4回(1984年の地震は従来プレート間地震とされていたが、プレート内地震であり日向灘地震に含まれないという指摘もある。)発生しており、いずれも人的被害を出している[5]

2種類の地震を合わせると十数年から数十年に一度の割合で発生している。調査により判明している過去最大の地震は、1662年のM7.6と推定されている地震であり、日向灘の領域単独でM8以上となる巨大地震が発生した記録はないとされる[6]。しかし、震源域が東に隣接する南海地震などと同時発生してM8以上の連動型巨大地震となったことがあるという見方もある。例えば、東海・東南海・南海連動型地震と考えられていた1707年宝永地震は日向灘地震とも連動した可能性が指摘されている。そして、将来もそのような連動型巨大地震が発生する可能性があり、対策を取ろうとする動きがある。特に2011年東北地方太平洋沖地震東日本大震災)以降、そのような動きが強くなっている[7]

地震の発生確率

発生確率等の評価(地震調査委員会)
領域 様式 2004年2月27日時点[8] 2013年1月1日時点[9]
規模 (M) 30年以内の発生確率 規模 (M) 30年以内の発生確率
日向灘   プレート間地震 7.6前後 10%程度 7.6前後 10%程度
(ひとまわり小さいもの) プレート間地震 7.1前後 70 - 80% 7.1前後 70 - 80%

日向灘の既知の大地震は震源域が毎回同一ではないため、発生確率評価においては評価領域内のどこかの領域でランダムに発生するとみなして算出された[10]

東北地方太平洋沖地震後の連動型地震への関心の高まりなどを受けて、日向灘地震の震源域を含めた南海トラフにおける地震の評価見直しが行われており、2013年春に公表される予定と発表されている[9]


  1. ^ アムールプレート。(参考文献:Wei, Seno, Determination of the Amurian Plate Motion. Mantle Dynamics and Plate Interactions in East Asia, "Geodynamics Series"v.27, 419頁, 1998, M. F. J. Flowerら編, AGU. ISBN 9780875905297, doi:10.1029/GD027
  2. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文1-5, 8-9頁、図1
  3. ^ 海溝やトラフの最深部の溝をつないだ線。
  4. ^ 地震調査委員会、2004年、図1
  5. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文1-7, 19-21頁
  6. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文17頁
  7. ^ 東海・東南海・南海地震で震源域は日向灘に延びる恐れ」日本経済新聞、2011年4月21日付、2013年4月2日閲覧。
  8. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文3-4, 12頁
  9. ^ a b 九州・沖縄地方の地震活動の特徴」、地震調査研究推進本部 地震調査委員会、「地震のリスト」節参照、2013年4月2日閲覧。
  10. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文17頁
  11. ^ a b c d e f g h i 吉井敏尅「日本付近のおもな被害地震年代表」、日本地震学会、2013年4月2日閲覧。
  12. ^ 震度データベース検索」気象庁、2013年4月2日閲覧
  13. ^ Search Earthquake Catalog”. アメリカ地質調査所 (2024年). 2024年1月25日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『世界の被害地震の表』1, 2, 3、宇津。Web 2013年4月2日閲覧。
  15. ^ 都司嘉宣2004年インドネシア・スマトラ島西方沖地震津波の教訓」東京大学地震研究所
  16. ^ 瀬川茂子 (2017年8月21日). “室町時代の日向灘地震「なかった」 東大研究者ら指摘”. 朝日新聞. http://www.asahi.com/articles/ASK8H5SMDK8HPLZU001.html 2017年8月21日閲覧。 
  17. ^ a b 地震調査委員会、2004年、評価文20頁
  18. ^ 武村雅之ら (2009). “20世紀初頭に九州・南西諸島のサブダクション帯で発生した2つの地震の震度分布と地震規模” (PDF). 歴史地震 24: 7-31. http://www.histeq.jp/kaishi_24/HE24_007_031_05Takemura.pdf 2018年12月13日閲覧。. 
  19. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文20頁
  20. ^ 八木勇治, 菊地正幸, 吉田真吾 ほか、「1968年4月1日, 日向灘地震 (MJMA7.5) の震源過程とその後の地震活動との比較」『地震 第2輯』 1998年 51巻 1号 p.139-148, doi:10.4294/zisin1948.51.1_139
  21. ^ a b 羽鳥徳太郎、「最近45年間の日向灘津波の規模」『地震 第2輯』 1971年 24巻 2号 p.95-106, doi:10.4294/zisin1948.24.2_95
  22. ^ 日向灘を震源とする地震による被害及び 消防機関等の対応状況(第3報)” (PDF). 総務省消防庁 (2019年5月10日). 2019年5月14日閲覧。
  23. ^ 令和元年5月10日08時48分頃の日向灘の地震について”. 気象庁 (2019年5月10日). 2019年5月13日閲覧。
  24. ^ a b 令和4年1月22日1時8分頃の日向灘の地震について”. 気象庁. 2022年1月22日閲覧。
  25. ^ 推計震度分布図”. 気象庁. 2022年1月22日閲覧。
  26. ^ 日向灘を震源とする地震による被害及び消防機関等の対応状況(第5報) (PDF) - 総務省消防庁
  27. ^ 地震調査委員会、2004年、評価文21頁
  28. ^ 緊急地震速報の内容
  29. ^ 「日向灘地震」は誤報 宮崎日日新聞
  30. ^ 地震調査委員会、2005年、評価文3頁
  31. ^ 宮崎県、2003年、6-8,14-23,30-31頁
  32. ^ 宮崎県、2004年、13-30頁
  33. ^ 地震防災ライブラリー 被害予測調査(鹿児島県)」鹿児島県、2008年2月12日更新版、2013年4月2日閲覧。


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