斧 斧の形式

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/31 07:23 UTC 版)

斧の形式

木の切断・成型のための斧

フェリングアックス(伐採斧)
両刃式の伐採斧
木を伐るなど、木材を木目と垂直に切るためのもの。木の繊維を軽快に切断できるよう、刃は薄く、鋭い。片刃または両刃があり、また重量、形、柄の形状、切断する素材の特性に合わせた切断形状には様々なものがある。特に北米では、伐る樹木の硬さに合わせて刃を使い分けるために「両刃斧」が広く使用されている。日本式の伐採斧は「よき」とも呼ばれ、木に深く打ち込めるよう、刃渡りが狭く、峰から刃までが長い。特に北海道のサッテ(去手)と呼ばれる斧はそれが顕著で横に振る際にブレを生じやすく、操作には熟練を要する。
スプリッティングアックス(薪割り斧)
薪割りなど。木材を木目の方向に分割するために使用される。刃は分厚くて重く、くさびに近い形状。西洋式の斧でも、柄は直線の場合が多い。
ブロードアックス(はつり斧・まさかり)
ブロードアックス
斧よりも刃渡りの部分が長く、柄に差し込む部分(ひつ)と刃の間がくびれている縦斧。
丸太の側面を削ぎ、角材を作り上げるために使われる。刃の形状はのみ状(片面は平らで、もう片面は斜角がつけられた刃)で短い柄が装着されより精密な作業が可能なように作られている。「」「刃広」「たつき」と呼ばれる日本式のそれは土佐のものを除き、そのような刃の形状ではなく、1回での作業量を多くするために、刃渡りは20センチメートル以上、柄の長さは1メートル以上に達し、重量3 - 4キログラム弱の非常に大型の斧である。
製材時に丸太の表面を削ぎ落とすほか、小さい木の枝を落とす(枝払い)、木の成長過程で育ちの悪い枝を除去する(枝打ち)ことなどに主眼を置いた工具である。
釿(ちょうな)
に似た形状をした横斧。木材の粗削り用工具として世界中で使われた。

武器としての斧

中世の戦斧

斧は庶民の生活の道具であったがために規制を受けず、と異なり訓練を受けることなく利用できたことから、古今東西に武器として特化した斧が存在する。日本の律令時代では兵が装備するものとして、斧1つ、小斧1つ、手鋸1つなどが記されており[10]、斧が兵装として認識されている。また、漢字の「王」の字は闘斧に由来し、クレタ島ミノス文明における王権の象徴も双闘斧がたびたび用いられている[11]

柄を長くして破壊力を増したもの
目標に向かって投擲する投げ斧

また、戦場では武器として以外にも攻城用(壁、石垣の破壊等)や陣地整備用の工具としても使用された。フランス外人部隊の工兵は、通常の服装・装備は他部隊と共通である一方、式典の礼装では小手付き手袋と革製エプロンとを着用し、右肩に斧を携えた姿となる。

その他の目的の斧

消防斧を持つ消防士
消防器具ハリガン・バーと斧を合わせた「set of iron」
木工用の横斧。木を削る作業に使われる。
消防斧、消火斧
刃の反対側にピッケル状の尖った台が付いた斧。消火活動の際、建物に侵入するため窓を壊したり、障害物を破壊するために使う。
プラスキー
刃の後部につるはしを備えた斧。根のまわりを掘ったり根を切ったりするために使う。マクラウド(くわと熊手を組み合わせたような道具)に加えて、山火事の消火、道路建設、やぶの開墾などに利用される。
スプリッティングモール
単純な「くさび」から複雑な意匠へ発展した割るための道具。スレッジハンマーの打撃面の反対側に重いくさび形の頭を持つ。このほか、円錐形の「刃」や、旋回する「小くさび」をもつものもある。
ハリガン・バー
もしくは横斧とバールを組み合わせた道具。警察や消防が建造物に突入する際に使用する。通常の斧や消防斧と合わせmarried setまたはset of ironと呼ばれる。
ピッケルアイスバイル
積雪期の登山に使うつるはしのような形の道具。薄い刃が付けられており「Ice axe」と呼ばれる。

  1. ^ a b 山で働く”. 熊本県総合博物館ネットワーク・ポータルサイト. 2019年11月2日閲覧。
  2. ^ アメリカのマーブルス社製の「セーフティアックス」など。
  3. ^ 砧斧. コトバンクより。
  4. ^ 戸田藤成. 武器と防具 日本編. 新紀元社 
  5. ^ 近藤好和. 騎兵と歩兵の中世史. 吉川弘文館 
  6. ^ トマス・D・コンラン. 図説 戦国時代武器防具戦術百科. 原書房 
  7. ^ 悠久の美―中国国家博物館名品展 東京国立博物館
  8. ^ 日本書紀 景行天皇
  9. ^ 日本書紀 神功皇后
  10. ^ 日本思想大系 律令』 岩波書店 1976年
  11. ^ 角田文衛上田正昭 監修 『古代王権の誕生 Ⅰ 東アジア編』 角川書店 2003年 p.12.
  12. ^ 使用例として、『土佐物語』巻第十五「信親死骸葬る事」に、天正14年(1586年)の一揆の際、「大の男が大斧(まさかり)をもって打ちかかるが、中島重房16歳は打ってきたと同時に飛び、斧を踏み落として、斬りつけた」という記述がみられる。


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