恋をするなら (ビートルズの曲)とは? わかりやすく解説

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恋をするなら (ビートルズの曲)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/23 17:29 UTC 版)

ビートルズ > 曲名リスト > 恋をするなら (ビートルズの曲)
ホリーズ > 恋をするなら (ビートルズの曲)
恋をするなら
ビートルズ楽曲
収録アルバム ラバー・ソウル
英語名 If I Needed Someone
リリース 1965年12月3日
録音
ジャンル
時間 2分23秒
レーベル パーロフォン
作詞者 ジョージ・ハリスン
作曲者 ジョージ・ハリスン
プロデュース ジョージ・マーティン
ラバー・ソウル 収録曲
ウェイト
(B-5)
恋をするなら
(B-6)
浮気娘
(B-7)

恋をするなら」(こいをするなら、原題 : If I Needed Someone)は、ビートルズの楽曲である。イギリスでは1965年に発売された6作目のイギリス盤公式オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル』に収録され、アメリカでは1966年に発売されたキャピトル編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録された。作詞作曲はジョージ・ハリスンで、作曲の面ではバーズの影響を受けていて、音楽評論家からは肯定的な評価を得ている。

本作は翌年にハリスンの妻となったパティ・ボイドに向けて書かれた楽曲で、3声のハーモニーリッケンバッカー・360/12で演奏されたギター・パートが特徴となっている。『ラバー・ソウル』発売後に行なわれたイギリスツアーで演奏され、ビートルズのライブで演奏された唯一のハリスンの作品となった。

『ラバー・ソウル』と同日にホリーズによるカバー・バージョンが発売され、全英シングルチャートで最高位20位を記録したが、ハリスンはホリーズによるカバー・バージョンに対して否定的な評価をしている。後にステンドグラス英語版ザ・キングスメン英語版らによってカバーされ、ハリスンも1991年にエリック・クラプトンと行なった日本公演で演奏している。

背景・曲の構成

ハリスンのインドの伝統音楽への関心の反映に加え[4]、「恋をするなら」はバーズの影響を受けた楽曲となっている。バースは、1964年に公開されたビートルズ主演の映画『ハード・デイズ・ナイト』に触発され、自分たちの音楽に対してビートルズの演奏スタイルなどを取り入れた[5][6]。1965年8月初旬にバーズとビートルズ間での交流が始まり[7]、同月下旬にハリスンはデヴィッド・クロスビーと会話をし、その中でシタール奏者のラヴィ・シャンカルの名が挙がった[8]。以降、ハリスンはインドの伝統音楽や古代のヒンドゥー教の教えへの関心を深めていき、1966年にはインドに渡ってシャンカルに師事してシタールの演奏を習得した[9][10]

曲中におけるギター・パートはDのポジションで演奏され、本作についてハリスンは「世の中にごまんとあるDコードスタイルの曲。少し指を動かせばあのフレーズになる」と語っている[11]フォークロック調の楽曲で[2]、一部インドの伝統音楽の影響が見られる[12]。なお、ハリスンはバースの「リムニーのベル英語版」のリフに触発されて本作を書いており、ドラム・パートは同バンドの「シー・ドント・ケア・アバウト・タイム英語版」から一部拝借している[13]。歌詞について、ハリスンは「(翌年に妻となった)パティ・ボイドに向けたラブソングとして書いた」と語っている[14][15]

レコーディング

アルバム『ラバー・ソウル』のレコーディング・セッションでは、プロデューサーのジョージ・マーティンが「『ラバー・ソウル』は、成長を続ける新しいビートルズを世界に向けて発表した初のアルバム[16]」と評するように録音技術の革新が行われた[17]。「恋をするなら」においては、『ラバー・ソウル』のためのセッションの最後にレコーディングされたレノン作の「ガール」と同様に、ギターのネックの中間ほどにカポタストをつけて演奏することで、楽曲により明るい印象を持たせた[18]

「恋をするなら」のレコーディングは、1965年10月16日にEMIレコーディング・スタジオで開始され、同日にリズムトラックが1テイクで録音された[19]。本作のレコーディングでハリスンは、1965年製のリッケンバッカー・360/12を使用した[20]ポール・マッカートニーは、「レイン」をはじめとした1966年にレコーディングされた楽曲でも確認できるオスティナートを多用したベース・パート[21]リッケンバッカー・4001S[22]で弾いている。

10月18日にボーカルオーバー・ダビングが行われた[23][24]。間奏やエンディングで聞けるハーモニー部分では、マッカートニーが高音部、レノンが低音部を歌っている。同日のセッションでリンゴ・スタータンバリンのパートを加えた[23][24]。なお、本作のレコーディングに関して、「マーティンがハーモニウムを演奏した」とする文献も存在している[12]

10月25日にモノラル・ミックスが作成され、翌日にステレオ・ミックスが作成された[25]

リリース・評価

「恋をするなら」は、1965年12月3日にパーロフォンから発売された[26]オリジナル・アルバム『ラバー・ソウル』のB面6曲目に収録された[27]。アメリカで発売された『ラバー・ソウル』では、当時の慣習により収録内容が変更されたことにより未収録となり[28][29]、翌年6月に発売されたキャピトル編集盤『イエスタデイ・アンド・トゥデイ』に収録された[30]。本作は、ハリスンがこれまでに書いた楽曲の中で最高の楽曲とされ[4][31]オールミュージックリッチー・アンターバーガー英語版は本作と「嘘つき女」について「実に人々を奮い立たせる曲」と評し[1]、『ニュー・ミュージカル・エクスプレス』誌のアレン・エヴァンスは「テンポの速いアップビーター」「繰り返し聞きたくなる楽曲」と評している[32][33]。なお、マッカートニーは本作を「ハリスンがバンドのために初めて書いた“画期的”な曲」としている[34]

1965年12月に行なわれたイギリスツアー以降、カール・パーキンスのカバー曲「みんないい娘」に代わるハリスンのボーカル曲として演奏され[35][36]、1966年に日本武道館で行われた来日コンサートでも演奏された。これにより、本作は1963年から1966年までのコンサート活動中に演奏された唯一のハリスンの作品となった[1][37][注釈 1]。また、『ラバー・ソウル』に収録された楽曲で、ビートルズ時代のライブで演奏された2曲のうちの1つともなっている[注釈 2]。ビートルズ解散後、ハリスンは1974年にシャンカルと共に行なったアメリカツアー[39]や、1991年にエリック・クラプトンと共に行なった日本ツアーでも演奏している[40]

1995年11月にジュークボックス用に制作されたシングル盤『ノルウェーの森』のB面に収録された。また、本作はハリスンとEMIの契約が終了した1976年[41][42]に発売されたコンピレーション・アルバム『ザ・ベスト・オブ・ジョージ・ハリスン』にも収録されている[43]

クレジット

※出典[12]

カバー・バージョン

ホリーズによるカバー

「恋をするなら」
ホリーズシングル
B面 アイヴ・ガット・ア・ウェイ・オブ・マイ・オウン
リリース
録音
ジャンル
時間
レーベル パーロフォン
作詞・作曲 ジョージ・ハリスン
プロデュース ロン・リチャーズ英語版
チャート最高順位
ホリーズ シングル 年表
  • 恋は窓から英語版
  • (1965年)
  • 恋をするなら
  • (1965年)
テンプレートを表示

1965年10月下旬、ジョージ・マーティンから「恋をするなら」のデモ音源を受け取ったロン・リチャーズ英語版は、そのデモ音源をホリーズに提出した[46]。当時発売されていたホリーズのシングル曲の多くは外部のソングライターによって書かれていたが、ビートルズのメンバーの故郷であるリヴァプールとホリーズのメンバーの故郷であるマンチェスターが古くから対立関係にあったことから、バンド内ではビートルズの楽曲をカバーするか否かで意見が分かれていた[47]。その後、11月17日に3テイクでレコーディングが行われ、ビートルズ・バージョンが収録された『ラバー・ソウル』と同じ日にパーロフォンよりシングル盤として発売された[48]

ホリーズによるカバー・バージョンは、全英シングルチャートで最高位20位を記録し[45]、ハリスンが作詞作曲した楽曲がチャートインした初の例となった[49]。しかしながら、当時のホリーズのシングル作品では最もチャート成績が芳しくない作品の1つとなった[50]。ハリスンは、ホリーズの作品について「最悪」とし、「即席バンドのように呼吸が合っていない」と語っている[51]

その他のアーティストによるカバー

脚注

注釈

  1. ^ ただし、ハンブルク時代のライブではレノンとの共作によるインストゥルメンタル「クライ・フォー・ア・シャドウ」が演奏されていた[38]
  2. ^ もう1曲は「ひとりぼっちのあいつ」。

出典

  1. ^ a b c Unterberger, Richie. If I Needed Someone - The Beatles | Song Info - オールミュージック. 2020年11月6日閲覧。
  2. ^ a b The Editors of Rolling Stone 2002, p. 199.
  3. ^ O'Grady 1983, p. 94.
  4. ^ a b The Editors of Rolling Stone 2002, p. 185.
  5. ^ Kruth 2015, pp. 104–106.
  6. ^ Miles 2001, p. 218.
  7. ^ Miles 2001, p. 205.
  8. ^ Lavezzoli 2006, pp. 153, 169.
  9. ^ MacDonald 1998, pp. 386, 388.
  10. ^ Everett 1999, p. 71.
  11. ^ Harrison 2002, p. 90.
  12. ^ a b c MacDonald 2005, p. 168.
  13. ^ Rogan 1998, pp. 142, 223.
  14. ^ Williamson, Nigel (February 2002). “Only a Northern Song: The songs George Harrison wrote for The Beatles”. Uncut: 60. 
  15. ^ Kruth 2015, p. 103.
  16. ^ Hertsgaard 1996, p. 149.
  17. ^ Babiuk 2002, p. 170.
  18. ^ Everett 2006, p. 80.
  19. ^ Winn 2008, p. 364.
  20. ^ Womack 2014, p. 439.
  21. ^ MacDonald 2005, p. 197.
  22. ^ Guesdon & Margotin 2013, p. 307.
  23. ^ a b Lewisohn 2005, p. 64.
  24. ^ a b Winn 2008, p. 365.
  25. ^ Lewisohn 2005, p. 66.
  26. ^ Miles 2001, p. 215.
  27. ^ Castleman & Podrazik 1976, p. 50.
  28. ^ Schaffner 1978, p. 55.
  29. ^ Rodriguez 2012, pp. 24–25.
  30. ^ Castleman & Podrazik 1976, p. 54.
  31. ^ Smith, Alan (10 December 1965). “Beatles Terrific ... and Rest of Bill”. NME: 20. https://www.rocksbackpages.com/Library/Article/the-beatles-the-moody-blues-odeon-glasgow. 
  32. ^ Evans, Allen (3 December 1965). “Beatles Tops”. NME: 8. 
  33. ^ Sutherland, Steve (ed.) (2003). NME Originals: Lennon. London: IPC Ignite!. p. 34 
  34. ^ Simmons, Michael (2011年9月28日). “Paul McCartney on George Harrison: Part 2”. mojo4music.com. 2011年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年11月6日閲覧。
  35. ^ Lewisohn 1996, p. 209.
  36. ^ Everett 2001, p. 335.
  37. ^ Rodriguez 2012, p. 6.
  38. ^ Lewisohn 2013, pp. 456, 464–65.
  39. ^ Lavezzoli 2006, p. 196.
  40. ^ Leng 2006, p. 270.
  41. ^ Schaffner 1978, p. 188.
  42. ^ Womack 2014, p. 148.
  43. ^ Inglis 2010, pp. 65, 150.
  44. ^ Kruth 2015, p. 107.
  45. ^ a b Official Singles Chart Top 50”. Official Charts Company (1966年1月13日). 2020年10月28日閲覧。
  46. ^ Clayson 2003, p. 194.
  47. ^ Southall 2015, pp. 37–38, 82–83.
  48. ^ Eden, Dawn (1993). 30th Anniversary Collection 1963-1993 (booklet). The Hollies. EMI Records. D 202205。
  49. ^ Kruth 2015, p. 108.
  50. ^ Nash 2013, pp. 81–82.
  51. ^ Kruth 2015, pp. 106–107.
  52. ^ Harry 2003, p. 58.
  53. ^ Billboard Review Panel (25 June 1966). “Spotlight Singles”. Billboard: 16. https://books.google.com/books?id=MikEAAAAMBAJ&q=%22If+I+Needed+Someone%22&pg=PA16. 
  54. ^ Shea & Rodriguez 2007, pp. 313–14.
  55. ^ Unterberger, Richie. Sugar & Spice - The Cryan' Shames | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月6日閲覧。
  56. ^ Kruth 2015, p. 109.
  57. ^ Kanis, Jon (2012年12月). “I'll See You in My Dreams: Looking Back at the Concert for George”. San Diego Troubadour. 2020年11月6日閲覧。
  58. ^ Griffith, Jackson (2004年11月4日). “The Jangle Factor”. Sacramento News & Review. https://www.newsreview.com/sacramento/jangle-factor/content?oid=32182 2020年11月6日閲覧。 
  59. ^ Erlewine, Stephen Thomas. This Bird Has Flown: 40th Anniversary Tribute to Rubber Soul - Various Artists | Songs, Reviews, Credits - オールミュージック. 2020年11月6日閲覧。
  60. ^ Various Artists Rubber Folk Album Reviews, Songs & More - オールミュージック. 2022年6月10日閲覧。

参考文献

外部リンク




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