失職
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/20 10:05 UTC 版)
国会議員・地方自治体の首長・地方議員の失職(退職)
マスコミ用語では「失職」というが、国会法や地方自治法等では「退職」という用語を用いている。
共通
- 公職への立候補による失職
- 公職選挙法第89条・第90条の規定により、首長及び議員が公職の候補者となった(立候補した)ときは失職する(当選を失う)。この理由には、公職に就いたまま、他の選挙に漫然と出馬してあわよくば鞍替えしようとする不誠実な行為の防止や、選挙運動が公務の妨げになることを防ぐ意味があるとされる。
- ただし、本人の任期満了を控えて行われる当該選挙に再選を目指して立候補するときは、失職せず任期満了まで務めることができる。
- このような公職への立候補に伴う失職は、特に自動失職と呼ばれることがある[1]。
- 被選挙権喪失による失職
- 公職選挙法第99条の規定により、選挙後に被選挙権を有しなくなったときは、失職する(当選を失う)。具体的には、次のような場合がある。
- 禁錮以上の刑に処せられた(執行猶予中の者を除く)
- 公職在任中の収賄罪・斡旋利得罪、公職選挙法違反、政治資金規正法違反などの罪により有罪となった(執行を猶予された場合、罰金以下の場合も含む)
- 公職在任中の収賄罪・斡旋利得罪、公職選挙法違反、政治資金規正法違反などの罪により禁錮以上の刑に処せられた後で一定期間を経過していない
- 秘書、親族、選挙の総括責任者などが、当該選挙に関連して公職選挙法違反で有罪となり、いわゆる連座制を適用された
- 日本国籍を喪失した
国会議員
- 比例代表選出議員の失職
- 公職選挙法第99条の2[3]及び国会法第109条の2の規定により、比例代表選出議員が当選後、所属政党が選挙で競合した他政党に所属することとなったときは、失職する(当選を失う)。
- なお、当選時の所属政党から離党した(自発的離党、除名処分など)だけでは失職しない[4]。また、当選時の所属政党を離れた後、当選後に結成された新党に入党することでは失職しない[5]。
地方自治体の首長
- 不信任決議
- 地方自治法第178条の規定により、地方自治体(都道府県、市町村、東京特別区)の首長がその議会から不信任決議を可決された場合、10日以内に自ら辞職するか議会を解散することを選択することになる。辞職も解散もせずに10日を経過すると、失職する。解散した場合は、議会選挙後に初めて招集された議会で再び不信任決議を受けると、直ちに失職する(議会を再度解散することはできない)[6]。
- リコール(解職請求)
- 地方自治法第76条 - 第88条の規定により、当該自治体の有権者の3分の1以上の署名を集めることで首長の解職を請求することができる。解職請求が認められると住民投票が行われ、有効投票総数の過半数の賛成により、首長は失職する。
地方自治体の議員
- 転出による被選挙権喪失
- 都道府県議会議員は他の都道府県へ、市区町村議会議員は他の市区町村へ転出すると、選挙権を喪失し、同時に被選挙権を喪失するため失職する。転出届を行わず形式的に住民登録を残していても、生活の本拠がなくなったと認められれば失職する[7]。
- 除名処分
- 地方自治法第135条の規定により、対象議員の所属する地方議会において、議員の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の賛成があれば、その議員は身分を失う。
- リコール(議会の解散請求・解職請求)
- 地方自治法第76条 - 第88条の規定により、当該自治体の有権者の3分の1以上の署名を集めることで、議会の解散請求または、特定の議員の解職請求をすることができる。請求が認められると住民投票が行われ、有効投票総数の過半数の賛成により、議会の解散請求なら全議員が失職、特定の議員の解職請求なら当該議員が失職する。
- 首長による解散
- 議会が首長に対する不信任決議を可決した場合、首長がそれに対抗して議会を解散すると全議員は身分を失う。
- 自主的な解散
- 地方公共団体の議会の解散に関する特例法の規定により、議員の4分の3以上が出席し、その5分の4以上の賛成があれば、議会は自主解散することができ、全議員は身分を失う。
- ^ 自動失職(じどうしっしょく) JLogos、2023年4月20日閲覧。
- ^ 成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律(平成25年法律第21号)
- ^ 公職選挙法第99条の2の規定は比例代表選挙において、選挙人が投票するのは議員個人でなく個々の政党に対してであるとの考え方を基礎とし、当選時の党籍を保有していることが比例代表選挙制における「全国民を代表する選挙された議員」の要件であると考え、党籍を失った以上、憲法第43条第1項との関係で、当然議員資格を喪失すると考えるべきであることを根拠に定められた規定である。
- ^ 憲法 第五版(芦部他)は、「議員の所属政党変更の自由を否認したり、党からの除名をもって議員資格を喪失させたりすることは、自由委任の原理に矛盾する。もっとも、議員の自発的な党籍の変更や離脱に限って議員資格を喪失させる規定を設けることは許される、と解する少数説もある。」としている。
- ^ 2002年に保守党が民主党の比例代表選出議員を入党させるにあたって、いったん保守党を解党して、保守新党を結成する形を採ったのは、このような事情による。離合集散の容易な小政党だからできたことであるが、法律の抜け穴との指摘もある。しかし、政党を解党した上で新党を結成すると、たとえ構成員が同じでも、結成した年の政党交付金(政党助成金)を受けられないデメリットがある。
- ^ 内閣に対する内閣不信任決議の場合は、「10日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」(憲法第69条)となっているので、「失職」という選択肢はない。
- ^ 昭和29年10月20日 最高裁大法廷判決は、「およそ法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をなすべき特段の事由のない限り、その住所とは各人の生活の本拠を指すものと解するを相当とする。」としている。
- ^ ただし、公正取引委員会委員長及び委員、中央選挙管理会委員、国家公安委員会委員、公害等調整委員会委員長及び委員、公安審査委員会委員長及び委員、中央労働委員会委員、運輸安全委員会委員長及び委員、原子力規制委員会委員長及び委員、衆議院議員選挙区画定審議会委員、教育委員会委員、選挙管理委員会委員、監査委員、人事委員会委員、公平委員会委員、公安委員会委員、都道府県労働委員会委員、農業委員会委員、収用委員会委員、漁業調整委員会委員(広域漁業調整委員会の委員を除く)、内水面漁場管理委員会委員(広域漁業調整委員会の委員を除く)、固定資産評価審査委員会委員(広域漁業調整委員会の委員を除く)を除く。
- ^ a b この規定には、「何年を経過しない者」等の限定規定は置かれていないが、執行猶予を取り消されることなく期間を満了する(刑法第27条)、あるいは禁錮以上の刑について、刑期を満了してから罰金以上の刑を受けずに10年間経過した場合(刑法第34条の2第1項)など、一定の場合には刑の言い渡し自体が効力を失うため、「刑に処せられた者」に該当しなくなると解されている。
- 1 失職とは
- 2 失職の概要
- 3 国会議員・地方自治体の首長・地方議員の失職(退職)
- 4 その他公務員の失職
- 5 外部リンク
品詞の分類
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