図形の合同 図形の合同の概要

図形の合同

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/22 00:29 UTC 版)

図形の合同の例。左の二つの図形が互いに合同、その隣はそれらに相似である。一番右は他のどれとも合同でも相似でもない。注意すべき点は、図形の合同において位置や向きといった一部の性質・量は変わるが、距離角度といった性質・量は変わらないということである。このように変わることのない性質・量を不変量と呼ぶ。

初等幾何学では以下のような形で「合同」という語がしばしば用いられる。[2]

  • ふたつの線分が合同であるのは、それらの長さが同じときである。
  • ふたつの角度が合同であるのは、それらの角度が同じときである。
  • ふたつのが合同であるのは、それらの直径が同じときである。

これらの言い回しにおいて、「合同」というべきところを「等しい」「同じ」という語を充てることもよく行われる。この意味において、「二つの平面図形が合同である」ということは、それらの持つ対応する特徴(これには辺や角だけでなく、対角線や周長、面積などといったものも含まれる)が「合同」あるいは「同じ」であることを含意するものと捉えられる。

合同性と関連する概念として相似性は図形の形は同じで大きさだけが違いうることを意味する。ゆえに合同は相似の特別の場合である。

どのような図形を互いに同じと見なすかという基準は考察している対象や状況によって変わりうる。ユークリッド幾何学では合同を基準とするが、例えば基準を大幅に緩めてできる幾何学が位相幾何学(トポロジー)であり、他にも様々な幾何学が考えられる。エルランゲン・プログラムを参照。

解析幾何学的な定義

まず2次元の場合を考える。A, B を平面上の二つの図形としよう。ABユークリッドの運動、すなわち

  1. 平行移動:図形上の全ての点を、一定の向きに一定の距離だけ移動すること、
  2. 回転移動:平面上のある点を中心にしてそこからの距離を保ちつつ、図形上の全ての点を同じ角度だけ移動すること、
  3. 対称移動:平面上のある直線に関して、線対称の位置にある点に図形上の全ての点をそれぞれ移動すること、

を繰り返すことによって重ねる、すなわちAの全ての点が対応するBの点を持つようにできるとき、AB と合同である、または合同関係にあるという。

現代数学では、ユークリッド空間 E のある部分集合 AB に対して、E から E への等長写像 (isometry) f が存在して、f(A) = B となるとき、AB に合同である、と定義することが普通である。ユークリッド空間における自己等長写像は上のユークリッドの運動に一致するという定理があるのでこれらの定義は合致する。

2つの図形 A, B が互いに合同であるとき、"AB " と表す。合同関係は同値関係の一つである。

多角形の合同問題

橙と緑の四辺形は合同、青はそれらとは合同でない。三つとも周長面積は等しい(青の四辺形は辺の順番を「混ぜ」て、二つの内角と一つの対角線が合同でないようにしてある)。

二つの多角形が合同であるためには、それらの辺の数が(従って頂点の数も)等しくなければならない。n-辺形が互いに合同となるための必要十分条件は、それらが持つ n 個の辺と n 個の角を「辺-角-辺-角-…」のように順番に辿る(場合によっては一方を時計回りに、他方を反時計回りに辿ることを許すこともある)とき、それらの数値が数列として一致することである。

多角形の合同は、以下のように視覚的に述べることができる:

  1. 二つの図形の対応する頂点を合わせてラベルを付ける。
  2. 一方の図形から他方へ向けて、互いの図形の対応する頂点の間に矢印を書き、矢印に従った「平行移動」によって一組の頂点同士を一致させる。
  3. 平行移動で一致させた頂点の周りの「回転」によって一組の対応する辺同士を一致させる。
  4. 回転で一致させた辺に関する「鏡映」によって図形の残りの部分を一致させる。

この各ステップの何れかの部分で完遂できないことがあるならば、それらの図形は合同でないことになる。


  1. ^ Oxford Concise Dictionary of Mathematics, Congruent Figures”. Addison-Wesley. p. 167 (2009年). 2013年9月閲覧。
  2. ^ Congruence”. Math Open Reference (2009年). 2013年9月閲覧。
  3. ^ see also. Weisstein, Eric W. "Congruence Axioms". mathworld.wolfram.com (英語).
  4. ^ 鈍角三角形の合同条件”. 東大・京大・一直線. 2019年11月3日閲覧。
  5. ^ 2つの鈍角三角形は本当に合同? 二等辺三角形を作り出せ!”. あすなろ学習室. 2019年11月3日閲覧。
  6. ^ Alexander Borisov, Mark Dickinson, and Stuart Hastings, "A congruence problem for polyhedra", American Mathematical Monthly 117, March 2010, pp. 232-249. [1]
  7. ^ Alexa Creech, "A congruence problem" アーカイブされたコピー”. 2013年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年11月11日閲覧。


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