勲章 勲章の概要

勲章

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/05 09:32 UTC 版)

概要

日本における定義

明治以降の日本において、個人の功績や業績を国家が表彰するための制度としては、叙位叙爵(戦後廃止)、叙勲及び褒章の栄典、並びに賜杯記章などが存在しており[1]、その中で勲章は、叙勲に属する章飾とされている[2]。つまり、勲章は叙勲によって勲位などと共に与えられるものの一つである。栄誉を示すために身に着ける佩章で、賞勲局所管の法令によって定められるものには勲章の他に褒章及び記章があり、これらは総称して「勲章等」と表記される(「勲章等着用規程」(昭和39年4月28日総理府告示第16号)第1条)。

欧米の制度

欧米の栄典のうち日本の勲章等に相当するものには、イギリスの“order”“decoration”“cross”“medal”、 フランスでは“ordre”“décoration”“médaille” 、ドイツでは“Orden”, “Ehrenzeichen”[注 1]“Auszeichnung”“Medaille”“Denkmünze”などがあり、性格や価値はそれぞれ異なる。

“medal”(英)や “Medaille”(独)に相当する日本語としては「褒章」、「記章」などもあるが、日本の定義と異なるため、日本に於ける勲章、褒章及び記章の分け方とは一致していない。例えば、イギリスの“medal”やドイツの“Medaille”などの中には日本の下級勲章(勲七等又は功六級以下)に近いものもあり[注 2]、これらについても「勲章」と扱われることが多く見られる[4]。特に、クロス章は日本にはないカテゴリの章であるため、勲章であるか記章なのかは、書籍等によって扱いが区々である[5]。またそのようなことから、「栄典制度の在り方に関する懇談会」に於いて、orderの制度が無いアメリカ合衆国には勲章が無いとする賞勲局の見解に対して、出席者から異が唱えられたこともある[6]

種類

ヨーロッパにおいて勲章等に相当するものとしては以下のものがある。

オーダー

: order: ordre: Orden

「騎士団」(: Chivalric order: Ordre de chevalerie)或は「特定の騎士の地位」を意味する言葉から、その構成員の記章を示すようになった。他の勲章と区別するために「騎士団勲章」と表記されるほか、「勲爵士団」とも訳される[注 3]中世騎士団に由来、或はその制度に倣った栄典で、騎士団(勲爵士団)へ入団することが栄誉であり、記章はその団員証として授与される。すなわち、受勲するということは勲爵士団への入団を意味する。[4]

デコレーション

: decoration: décoration: Ehrenzeichen

勲爵士団とは関係なく、功績に対する栄誉を称えて授与される勲章であり、記章自体が栄誉の証である。「栄誉勲章」或は「功労勲章」と訳されることもある。下記のメダルやクロスもこの概念でのデコレーションの一種であるが、国によってはより狭い意味でも使われる[7]。例えばイギリスの場合、功労勲章でメダルより下位に位置付けられるものに“decoration”の名称が付けられている[8]

メダル

: medal: médaille: Medaille

「記章」或は名称の場合「〜章」と訳されることもある。性格的には広い意味でのデコレーションに含まれるが、日本では勲章の範疇にはない褒章従軍記章記念章などもメダルと称される。

デコレーションに含まれるものは、低い地位の者或は低い功績に対しても与えられる。その中には、オーダーと同じ名前が付き、その対象者でより低い地位或は功績の者に授与されるものもある。ただしこの場合でもメダル受章者は勲爵士団のメンバーにはならない。

クロス

: Cross: Croix: Kreuz

メダルの上位に位置付けられており、同名のメダルの上位等級となっているものもある。「十字章」或は「十字勲章」と訳される。フランス語で「クロワ」、ドイツ語で「クロイツ」

等級

初期のオーダーには等級がなく、単一等級の勲章間に序列が定められていたが、やがて叙勲対象の範囲を広げる必要が生じ、同種の勲章に等級を設けるようになった。18世紀までは3等級が一般的であったが、フランス革命により貴族階級がなくなったフランスで制定されたレジオンドヌール勲章には、叙勲対象を更に広げる必要から5等級が設けられた。この等級には騎士団の階級に由来する名称が付けられ、現在に至っている。他のヨーロッパの国でもこの制度に倣い5等級のオーダーが制定されるようになった。

これらの等級の上位に頸飾、下位にメダルを設けているオーダーもあるが、頸飾は特別な位置付けのものとされ[注 4]、メダルも前述のように受章者は勲爵士団のメンバーではなく、いずれも等級外とされていることが多い。

勲章の等級比較
等級 等級の名称
フランス ドイツ イギリス
1. 大十字 Grand-Croix Großkreuz ナイト・グランドクロス (Knight Grand Cross) / デイム・グランドクロス (Dame Grand Cross)
2. 上級士官 Grand-Officier Großoffizier / Großkomtur(大司令官) ナイト・コマンダー (Knight Commander) / デイム・コマンダー (Dame Commander)
3. 司令官 Commandeur Komtur / Kommandeur コマンダー (Commander) / コンパニオン (Companion) [a]
4. 士官 Officier Offizier オフィサー (Officer) / ルテナント (Lieutenant)
5. 騎士 Chevalier Ritter メンバー (Member)
等級の名称はフランスのものが基準になっているので和名はフランスのものにし、ドイツの名称で異なるものにはその訳語も記した。イギリスについては書式を変えた。
  *4等級が定められている勲章では士官相当が、3等級の場合は上級士官と士官相当の等級が欠となる。 *黄色部分がナイトに叙される。ただしナイト・コマンダーより上位の単一等級勲章でも受勲者がナイトに叙されないものもある。
*a 3等級が定められている場合は士官と騎士相当の等級が欠となる。3等勲章の名称は、最下位が3等級の場合はコンパニオン、5等級の場合はコマンダーとなる。

  1. ^ ドイツ語では“Orden”と“Ehrenzeichen”を併せてOrden und Ehrenzeichenと称する。
  2. ^ 但し、イギリスではそれらのほとんどが1993年の制度改正で廃止されている[3]
  3. ^ 勲爵士と訳される言葉には他に英語の“Companion”がある。
  4. ^ 法令上は正式なものではない場合もある。
  5. ^ イギリスでは、デコレーションと同様に、遺族による保持が認められるようになったのは第二次世界大戦後である。しかし、一部のものは現在でも返還が義務付けられている[9]
  1. ^ 岩倉・藤樫 第1章
  2. ^ 造幣局百年史 p 101
  3. ^ Duckers Chapter 13
  4. ^ a b c 小川 第II部
  5. ^ 例:小川 P 93 と 君塚 P 16
  6. ^ 栄典制度の在り方に関する懇談会(第2回)議事録(平成12年11月21日)
  7. ^ 小川 p 122
  8. ^ 小川 p 95
  9. ^ 君塚 補論
  10. ^ 君塚 p26
  11. ^ 略小勲章の一覧
  12. ^ 独立行政法人 造幣局 : 略小勲章
  13. ^ 農事功労章”. 在日フランス大使館 (2005年1月26日). 2010年11月6日閲覧。
  14. ^ a b フランス農事功労章受章者協会 (MOMAJ) - <フランス農事功労章 創設の歴史>[リンク切れ]
  15. ^ 衆議院議員 中川昭一 公式サイト : 活動報告(フランスより農事功労章(コマンドゥール)受賞の一コマ)[リンク切れ]
  16. ^ “中川農相、フランスの農事功労章受章 - 東京”. フランス通信社. (2006年5月27日). https://www.afpbb.com/articles/-/2061715?pid=586462 2010年3月11日閲覧。 
  17. ^ Welcome” (フランス語). Encouragement Public. 2023年3月16日閲覧。
  18. ^ 陶芸文化、世界に 島田在住の道川さんにフランス社会功労奨励章”. あなたの静岡新聞. 静岡新聞社. 2023年3月16日閲覧。
  19. ^ 本学卒業生のインド映画女優・舞踊家 板倉リサ氏が、「フランス社会功労奨励章」コマンドゥール(旧 3等・「現」大冠付金章)を受勲されました。”. 武蔵野大学. 2023年3月16日閲覧。
  20. ^ 本学大学院修士課程に在籍中の池田有沙さんが 最年少23歳で仏社会功労 奨励勲章の月桂樹銀賞受賞しました”. 桐朋学園音楽部門. 2023年3月16日閲覧。
  21. ^ 卒業生幕田魁心氏フランス社会功労月桂冠奨励勲章受章/お知らせ”. 書道研究所 大東文化大学. 2023年3月16日閲覧。
  22. ^ 小川 第II部 第6章
  23. ^ Guy Stair Sainty (1991). The Orders of Saint John. The American Society of The Most Venerable Order of the Hospital of Saint John in Jerusalem 
  24. ^ a b Guy Stair Sainty (1991). The Orders of Saint John. The American Society of The Most Venerable Order of the Hospital of Saint John in Jerusalem 
  25. ^ Order Pro Merito Melitensi”. 2020年8月29日閲覧。
  26. ^ 那珂馨『勲章の歴史』雄山閣出版、1973年、203頁。NDLJP:11894505/133 
  27. ^ 那珂馨『勲章の歴史』雄山閣出版、1973年、204頁。NDLJP:11894505/134 
  28. ^ 1967年(昭和42年)、佐藤栄作に贈られた物。国立公文書館所蔵(請求番号:寄贈01877100)。
  29. ^ a b Implementing Rules and Regulations of Executive Order 236 of Executive Order 236”. 2018年7月21日閲覧。
  30. ^ Republic Act No. 646”. 2018年7月21日閲覧。
  31. ^ President Aquino's speech at the International Assembly of the Knights of Rizal”. フィリピン共和国政府. 2016年3月24日閲覧。






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