労働時間等の設定の改善に関する特別措置法 労働時間等設定改善実施計画

労働時間等の設定の改善に関する特別措置法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/14 14:13 UTC 版)

労働時間等設定改善実施計画

同一の業種に属する2以上の事業主であって、労働時間等の設定の改善の円滑な実施を図るため、労働時間等設定改善指針に即して、業務の繁閑に応じた営業時間の設定、休業日数の増加その他の労働時間等の設定の改善が見込まれる措置(労働時間等設定改善促進措置)を実施しようとするものは、共同して、実施しようとする労働時間等設定改善促進措置に関する計画(労働時間等設定改善実施計画、以下本節内では単に「計画」と略す)を作成し、これを厚生労働大臣(所轄都道府県労働局長に権限委任。以下同じ)及び当該業種に属する事業を所管する大臣(都道府県知事が事務処理。以下同じ)に提出して、その計画が適当である旨の承認を受けることができる(第8条1項)。

  • 日本では厳しい企業間競争の下で各企業の横並び意識が強いこと等により個々の企業が単独では労働時間等設定改善を進めることが困難であるという事情があることから、労働時間等設定改善を進めるためには業種の実情に応じた業界一体の自主的取組を促進するための仕組を整備することが有効であること。このため、同一の業種に属する2以上の事業主が共同して計画を作成し、それを的確に実施することができるような環境整備のために承認制度を設けることとしたものであること。計画の策定主体を「同一の業種に属する2以上の事業主」とした趣旨は、同業他社との横並び意識が労働時間等設定改善の阻害要因となっているという現実を踏まえ、これらの意識が「同一の業種」に属する事業主相互の間に生じやすいことから、これを克服して労働時間等設定改善を推進していこうとするものであること。したがって、「同一の業種」の判断にあたっては、日本標準産業分類の分類にとらわれず、例えば、工業団地商店街下請協力会その他の実態として競争関係や横並び意識の生じている事業主の集まりをできるだけ広く弾力的にとらえて差し支えないこと(平成18年4月1日基発第0401006号)。
  • 申請書の提出は、厚生労働大臣又は事業所管大臣のいずれか一方に行えば足りる。厚生労働大臣を宛名とする申請書であっても、都道府県労働局を経由して提出して差し支えない(平成18年4月1日基発第0401006号)。

計画には、次に掲げる事項を記載しなければならない(第8条2項)。

  1. 労働時間等設定改善促進措置の実施により達成しようとする目標
    • 以下に掲げる目標その他の目標を一つ以上掲げていること(平成18年4月1日基発第0401006号)。
      • 労働時間の短縮(この場合には、さらに、総実労働時間の短縮、所定労働時間の短縮、所定外労働時間の削減、完全週休二日制の採用等休日の増加、年次有給休暇付与日数・取得日数の増加等細目の目標を一つ以上付していること)
      • 健康上特に配慮を要する労働者について、労働者の健康回復のために必要な時間の確保
      • 育児のための生活時間の確保
      • 介護のための生活時間の確保
      • 単身赴任者が家族と接する時間の確保
      • 自発的な職業能力開発を図るための時間の確保
      • 地域活動等を行うための時間の確保
  2. 労働時間等設定改善促進措置を実施する事業場
  3. 労働時間等設定改善促進措置の内容及びその実施時期
    • 以下の各項目中に掲げられた内容その他の内容の一つ以上を定めていること。この場合には、その実施時期も定めていること(平成18年4月1日基発第0401006号)。
      • 労働時間の短縮を目標に掲げる場合 - 営業時間の設定、営業日数の短縮、営業時間の短縮、休日又は営業日の設定、変形労働時間制の採用、交替制の設定、ノー残業デーの設定、年次有給休暇の計画的付与制度の採用、取引先に対する発注方法等に関する要請
      • 健康上特に配慮を要する労働者について、労働者の健康回復のために必要な時間の確保を目標に掲げる場合 - 病気休暇から復帰する労働者についての短時間勤務の導入、所定外労働が多い労働者についての代休やまとまった休暇の付与
      • 育児のための生活時間の確保を目標に掲げる場合 - 育児休業制度の充実、子の看護のための休暇制度の充実、時間外労働の制限制度の充実、勤務時間短縮等の措置の充実、子どもの出生時における父親の休暇取得制度の整備
      • 介護のための生活時間の確保を目標に掲げる場合 - 介護休業制度の充実、時間外労働の制限制度の充実、勤務時間短縮等の措置の充実
      • 単身赴任者が家族と接する時間の確保を目標に掲げる場合 - 休日の前日の終業時刻の繰り上げ、休日の翌日の始業時刻の繰り下げ、休日前後の年次有給休暇の半日単位の付与、家族の誕生日についての休暇の付与
      • 自発的な職業能力開発を図るための時間の確保を目標に掲げる場合 - 有給教育訓練休暇の付与、長期教育訓練休暇の付与、始業・終業時刻の変更、時間外労働の制限制度の充実
      • 地域活動等を行うための時間の確保を目標に掲げる場合 - 特別な休暇の付与、年次有給休暇の半日単位の付与
  4. その他省令で定める事項

厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、計画の承認の申請があった場合において、その計画が次に掲げる基準に適合するものであると認めるときは、その承認をするものとする(第8条3項)。厚生労働大臣は、この承認をしようとするときは、あらかじめ、労働政策審議会(都道府県労働局長に権限委任により、実際は地方労働審議会)の意見を聴くものとし(第8条4項)、厚生労働大臣は、この承認をするに当たっては、1.に規定する労働者の意見を聴くように努めるものとする(第8条5項)。承認を受けた者(承認事業主)は、当該承認に係る計画を変更しようとするときは、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣の承認を受けなければならない(第9条1項)。厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、承認・変更をした計画が基準に適合するものでなくなったと認めるときは、承認事業主に対して、当該承認計画の変更を指示し、又はその承認を取り消さなければならない(第9条2項)。

  1. 目標が事業場の労働者の労働時間等に関する実情に照らして適切なものであること。
  2. 内容及びその実施時期が目標を確実に達成するために必要かつ適切なものであること。
  3. 一般消費者及び関連事業主の利益を不当に害するおそれがあるものでないこと。
  4. 当該計画の実施に参加し、又はその実施から脱退することを不当に制限するものでないこと。

厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、計画の承認をしようとする場合において、必要があると認めるときは、当該承認に係る申請書の写しを公正取引委員会(計画に記載された事業場のすべてが一の地方事務所の管轄地域内にある場合には、当該区域を管轄する地方事務所長)に送付するとともに、公正取引委員会に対し、当該計画に定める労働時間等設定改善促進措置に係る競争の状況に関する事項、当該労働時間等設定改善促進措置の実施が当該競争に及ぼす影響に関する事項その他の必要な事項について意見を述べるものとする(第10条1項)。公正取引委員会は、必要があると認めるときは、厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣に対し、この規定による送付に係る計画について意見を述べるものとする(第10条2項)。公正取引委員会は、1項の規定による送付に係る計画であって厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣が承認をしたものに定めるところに従ってする行為につき当該承認後私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)の規定に違反する事実があると思料するときは、その旨を厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣に通知するものとする(第10条3項)。厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、3項の規定による通知を受けたときは、公正取引委員会に対し、当該承認後の労働時間等の動向及び経済的事情の変化に即して1項に規定する事項について意見を述べることができる(第10条4項)。

  • 「必要があると認めるとき」とは、独占禁止法上の問題が生ずる可能性がある場合をいうこと。ただし、申請事業主から要請があった場合は「必要があると認めるとき」に該当するものとして扱うこと。公正取引委員会から、労働時間等設定改善促進措置が独占禁止法上の問題があると思料される旨の意見の陳述があった場合には、公正取引委員会と意見の調整を行いつつ、必要に応じ当該意見を踏まえて、独占禁止法上の問題を解消するよう申請事業主に対し助言指導を行うこと。その結果、申請事業主がその助言指導に応じ、実施計画が独占禁止法上の問題が解消された場合に限り承認を行うことができること。それ以外の場合については、申請事業主に対し承認しない旨の通知を行うこと(平成18年4月1日基発第0401006号)。
  • 計画承認後に公正取引委員会より、独占禁止法に違反する事実があると思料する旨の通知があった場合、厚生労働大臣及び事業所管大臣は、労働時間等の動向及び経済的事情の変化に即して意見を述べることができること。したがって、公正取引委員会から通知があった場合には、都道府県労働局長は、承認事業主の事業場の労働時間等の動向及び経済的事情の変化(需要の変化及び今後の動向、市場占有率の変化)等に関して承認事業主から報告を徴収し、これに基づき意見を述べるものとする。この場合、都道府県労働局長は、承認事業主に対し必要に応じ承認要件に適合するよう助言指導を行うこと。承認要件に適合しないことが明らかとなった場合には、承認を取り消し、その旨を承認事業主及び公正取引委員会に通知すること(平成18年4月1日基発第0401006号)。

厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、計画の的確な実施を確保するため、承認事業主に対し、必要な情報及び資料の提供、計画の実施に関する助言を行う者の派遣その他必要な援助を行うように努めるものとする(第11条1項)。厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、承認事業主による計画に定める労働時間等設定改善促進措置の円滑な実施を図るため特に必要があると認めるときは、当該承認事業主と取引関係がある事業主又はその団体に対し、労働時間等の設定の改善を促進するために必要な協力を要請することができる(第11条2項)。厚生労働大臣及び当該業種に属する事業を所管する大臣は、承認事業主に対し、計画の実施状況について報告を求めることができる(第12条1項)。

  • 具体的には、計画の円滑な実施を阻害している取引上の問題(例えば、短納期発注、発注方法の頻繁な変更等)があると認められる場合であって、特に必要があると認められる場合に、協力の要請を行うものとすること。特に、労働時間等設定改善促進措置に取引関係に関する措置が含まれている場合(例えば、親企業に納期の適正化を要請すること)であって、取引先事業主の協力が得られないために当該措置の実施の効果があがっていない場合又は当該措置の実施が阻まれているような場合には、適切な協力の要請を行うよう留意すること。要請の内容は、計画の内容の理解に主眼を置き、強制にわたることのないよう留意すること(平成18年4月1日基発第0401006号)。
  • 計画承認後に公正取引委員会から問題がある旨の意見を受理した場合又は計画が適正に実施されていない疑いが生じた場合等には、承認事業主に対し実施計画の実施状況について報告を求めること。承認事業主は、実施計画の実施が完了した場合には「承認実施計画実施結果報告書」(様式第7号)を承認者あて提出すること(平成18年4月1日基発第0401006号)。

  1. ^ 平成14年に年間総実労働時間を1,816時間にまで減った。





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