労働契約法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/16 01:07 UTC 版)
目的
この法律は、労働者及び使用者の自主的な交渉の下で、労働契約が合意により成立し、又は変更されるという合意の原則その他労働契約に関する基本的事項を定めることにより、合理的な労働条件の決定又は変更が円滑に行われるようにすることを通じて、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することを目的とする(第1条)。
法制定の背景として、就業形態が多様化し、労働者の労働条件が個別に決定され、又は変更される場合が増加するとともに、個別労働関係紛争が増加していることがある。しかしながら、日本においては、最低労働基準については労働基準法に規定されているが、個別労働関係紛争を解決するための労働契約に関する民事的なルールについては、民法及び個別の法律において部分的に規定されているのみであり、体系的な成文法は存在していなかった。このため、個別労働関係紛争が生じた場合には、それぞれの事案の判例が蓄積されて形成された判例法理を当てはめて判断することが一般的となっていたが、このような判例法理による解決は、必ずしも予測可能性が高いとは言えず、また、判例法理は労働者及び使用者の多くにとって十分には知られていないものであった。
個別労働関係紛争の解決のための手段としては、裁判制度に加え、平成13年10月から個別労働関係紛争解決制度が、平成18年4月から労働審判制度が施行されるなど、手続面における整備が進んできた。このような中、個別の労働関係の安定に資するため、労働契約に関する民事的なルールの必要性が一層高まり、今般、労働契約の基本的な理念及び労働契約に共通する原則や、判例法理に沿った労働契約の内容の決定及び変更に関する民事的なルール等を一つの体系としてまとめるべく、労働契約法が制定された。労働契約法の制定により、労働契約における権利義務関係を確定させる法的根拠が示され、労働契約に関する民事的なルールが明らかになり、労働者及び使用者にとって予測可能性が高まるとともに、労働者及び使用者が法によって示された民事的なルールに沿った合理的な行動をとることが促されることを通じて、個別労働関係紛争が防止され、労働者の保護を図りつつ、個別の労働関係の安定に資することが期待されるものである(平成24年8月10日基発0810第2号)。
- ^ a b c 「多様な正社員」の普及・拡大のための有識者懇談会報告書、平成26年7月
- ^ もっとも、労働契約法のこれらの内容は、判例法理に沿って規定したものであり、判例法理を変更するものではない(平成24年8月10日基発0810第2号)。
- ^ 本審では、高裁判決にある、正社員を厚遇することで有能な人材を確保し、長期勤続のインセンティブとする理論を採用しなかった。つまり、正社員だからという理由だけでは格差を設ける理由としては足りないのである。
- ^ もっとも本審では、高裁判決にある、定年退職後の継続雇用において職務内容やその範囲の変更等が変わらないまま相当程度賃金を引き下げることは広く行われており、年収2割程度の減額は不合理とまではいえない、とした指摘については触れなかった。
- ^ この適用除外規定は、「労働契約」という用語を用いていない。これは公務員の身分関係が「労働契約」としてとらえきれないことによる。
- ^ 「同居」とは、世帯を同じくして常時生活を共にしていることをいい、「親族」とは、民法第725条にいう6親等内の血族、配偶者及び3親等内の姻族をいい、その要件については、民法の定めるところによるものである(平成24年8月10日基発0810第2号)。
- ^ 船員法第100条は、労働契約法第12条とほぼ同趣旨の内容である。また船員法における雇入契約は、有期契約が原則となっていることから、雇入契約の解除事由については、その具体的な内容は船員法第40条・第41条に規定がある。
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