レファレンスサービス レファレンスサービスの概要

レファレンスサービス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 05:31 UTC 版)

日本語訳について

日本語においては参考調査(さんこうちょうさ)・参考業務(さんこうぎょうむ)・参考奉仕(さんこうほうし)などの和訳が与えられているが、定訳がないために図書館学においてはこれらの訳語とともに「レファレンスサービス」の語が併用されて用いられている。

ただし、アメリカ図書館協会では1990年以後、データベースを用いた情報検索・提供業務などを念頭においてinformation service(日本語では「情報サービス」)という呼称に統一する方針を採っており、日本でも1996年より司書講習において従来の「参考調査法及びその演習」から「情報サービス概説」と「レファレンスサービス演習」に分割改称された。今後、図書館学から図書館情報学への移行と並んで今後の図書館のあり方に影響を与えるものと考えられている。

内容

レファレンスサービスにはさまざまな活動内容が存在し、これを簡単に説明するのは困難であるが、斎藤文雄が提唱した「調べもの、探しもの、お手伝いします」という説明がもっともわかりやすい解説であるとされている。

レファレンスサービスは大きく「直接的業務(直接的サービス)」と「間接的業務(間接的サービス)」にわけることが可能である。

直接的業務の場合、さらに大きくわけて、図書館そのものの利用方法あるいは図書館にある文献・情報の探し方を指導・援助する活動と、情報そのもの、あるいはそれが収められている文献の紹介・提供が挙げられる。

例えば、「ジミー・ウェールズ」について知りたいと考えている図書館の利用者が図書館員に対して質問を行ったと仮定する。図書館員は利用者より、「インターネットに関する書籍の場所はどこか?」、「ジミー・ウェールズに関する文献を探している」と尋ねられた場合、インターネット関連資料の配架場所の案内やジミー・ウェールズについて調べるのに適した参考図書の紹介とその利用法の案内を行うのが前者である。

これに対して、「ジミー・ウェールズはアメリカ人なのか、それともイギリス人なのか?」、「ジミー・ウェールズが創設したウィキペディアを扱った雑誌記事はないか?」とたずねられた場合、ただちに人名事典などを用いてジミー・ウェールズがアメリカ人であると即答したり、雑誌記事索引などをもちいてウィキペディアについての記事が載せられた雑誌を紹介したり、当該図書館にない場合にはその雑誌を所蔵している図書館を紹介したりするのが後者である[注釈 1]

いっぽう、間接的業務とはあらかじめ質問に対して適切な回答を行うための情報源を準備するものである。例えば、パスファインダーの作成や、辞書・事典・目録・索引類を備えてレファレンスコレクションとして組織化しておくことや、クリッピング資料や文献リストなどの自館作成ツール(レファレンスツール)を作成・整備して需要が予想される質問に備えたり、各種団体のパンフレット・リーフレットをファイリングしてインフォメーションファイルとして、あるいはリストの形式にして蓄積することで、レフェラルサービスへの展開に備えることが挙げられる。また資料の複写サービスや資料の相互貸借はレファレンスサービスではないものの、関連性の強いサービスであると言える。

ただし技術的もしくは規約上の問題から、すべての質問に対して適切な回答を利用者に提供することが不可能な場合もある。前者であれば、記録文献などに残っていない出来事、未知の事項、学術論文に記載されているが司書の知識を超えており簡素な説明が出来ない事項などがこれにあたり、後者の場合には国家機密、個人情報、人生相談、法律相談などが挙げられる[1]。なお公文書や法令の調査などは引き受けている[2]。主観的な判断が必要な事項(映像作品と比較して小説が勝る部分が知りたいなど)や法律相談が寄せられた場合、判断は行わず関連する資料や連絡先の提示で対応している[3][4][5]

これだけの活動では受動的であり、図書館利用者の需要に応じられていないとする批判もあり、より能動的な情報提供を中心においた「情報サービス」の概念が登場するようになった。

レファレンスプロセス

  1. 利用者の質問の核心を問い直し、曖昧な質問内容をはっきりさせる[6]。質問内容に答えてはいけない場合もある(病名の診断や法律問題などの専門的なことや宿題など[1]。ただし資料の提示は可能)。自分の知識で答えてはいけない。
  2. キーワードを手掛かりに百科事典などで調べる。言葉関係なら広辞苑大辞林大辞泉漢字関係なら大漢和辞典日本史関係なら国史大辞典科学関係なら理科年表インターネットを使用してもよいがあくまで参考程度である。
  3. 利用者に百科事典などを見せている間に、キーワードを元に参考となる書籍をさがして調べる。

注釈

  1. ^ この記述に書かれている事例はあくまでもひとつのモデルケースであり、実際に図書館において同様の質問をした場合、適切な回答を受けられるという保証を与えるものではないことに注意する必要がある。

出典

  1. ^ a b 図書館徹底活用術, p. 89.
  2. ^ 国立国会図書館. “1 芸人の課税台帳(名簿)を探しています。 (1) 職 業 : 義太夫師 (2) 調査期間 : 大...”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  3. ^ 国立国会図書館. “映画などの映像と比べて小説が勝る部分を教えて下さい。また原作小説と映画化された映像の作品で決定的に違...”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  4. ^ 国立国会図書館. “相続(法律的なこと)について相談したいので,相談できるところを教えて欲しい。今日相談できるところ。”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  5. ^ 国立国会図書館. “建築を巡るトラブル、事件、事故などについての法律相談先は、どのようにして調べることができるか。”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  6. ^ 図書館徹底活用術, p. 88.
  7. ^ ググって分からず図書館へ→2日で解決 こんなにすごい「レファレンスサービス」”. J-CAST ニュース (2022年7月19日). 2022年7月19日閲覧。
  8. ^ a b 福嶋 2014, pp. 142–143.
  9. ^ 常世田 2003, pp. 50–52, 143.
  10. ^ 森 2016, p. 95.


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