レファレンスサービス 歴史

レファレンスサービス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/12 05:31 UTC 版)

歴史

レファレンスサービスが歴史上に登場するのは、1876年の第1回全米図書館大会において、サミュエル・グリーン(Samuel Swett Green(en)、1837年 - 1918年)が、図書館員が利用者に対していかなる人的支援が必要であるかという課題について触れた論文でレファレンス(参考・参照)への関与の必要性を説いてからであると言われている。

その後、各地の公共図書館においてレファレンスルーム(参考室)の設置や専用職員の配置などが行われ、1890年代にはレファレンスワーク参考事務)と呼ばれるようになった。当初は図書館員が利用者に図書目録の読み方などの図書館の利用法を教えるものに留まったが、しだいにさまざまな手法による利用者に向けた人的支援が含まれるようになっていった。「レファレンスサービス」という語が登場するのは1920年代以後であるが、その定義ははっきりとせず、「レファレンスワーク」と「レファレンスサービス」は同一なのか違うのかも定かではなかった。

1955年にアメリカのサミュエル・ロースステイン(Samuel Rothstein、1921年 - )は、「情報を求める個々の利用者に対する人的支援」をレファレンスワークと位置付け、それに加えて「レファレンスを教育機関としての図書館の責務を遂行する上での不可欠な手段であり、そのための情報提供の義務を図書館側が認識していること。さらにそのために必要な知識・技術を持った人々からなる専門の集団が図書館内に設置されて行われている活動」をレファレンスサービスと定義づけた。

だが、1970年以後のコンピューター技術の発展によって、利用者の依頼を受けて助言・支援するという受動的な「レファレンスサービス」から一歩踏み出して、データベースなどを活用したより能動的な情報提供を行うべきだとする「情報サービス」への転換の必要性を唱える意見が出されるようになり、当初はアメリカではこれを併用して"reference and information service"とも呼称されたものの、前述のようにアメリカでは"information service"に統一され、さらにインターネットの登場によって、そのあり方は変化を見せていくものと考えられている。

日本での事例

第二次世界大戦前の図書館は思想善導機関としてのあり方が重要視されてレファレンスについてはあまり省みられることはなかった。

戦前の例としては1915年東京市立日比谷図書館をはじめ、市立名古屋図書館東京帝国大学附属図書館などに「図書調査係」「参考掛」などの名称で設置されたことが知られているのみである。

1948年神戸市立図書館の館長であった志智嘉九郎がレファレンスサービスの重要性を唱えて「森羅万象」を掲げ、窓口や電話による質問を受け付けるサービスも開始した。だがアメリカでもレファレンスサービスの定義が定まらなかったように、日本でも読書相談は館外貸出の一環かレファレンスかが議論されるなど多くの試行錯誤が繰り返されてきた。公立・私立の公共図書館よりも大学図書館の方がその普及は急速であった。


注釈

  1. ^ この記述に書かれている事例はあくまでもひとつのモデルケースであり、実際に図書館において同様の質問をした場合、適切な回答を受けられるという保証を与えるものではないことに注意する必要がある。

出典

  1. ^ a b 図書館徹底活用術, p. 89.
  2. ^ 国立国会図書館. “1 芸人の課税台帳(名簿)を探しています。 (1) 職 業 : 義太夫師 (2) 調査期間 : 大...”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  3. ^ 国立国会図書館. “映画などの映像と比べて小説が勝る部分を教えて下さい。また原作小説と映画化された映像の作品で決定的に違...”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  4. ^ 国立国会図書館. “相続(法律的なこと)について相談したいので,相談できるところを教えて欲しい。今日相談できるところ。”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  5. ^ 国立国会図書館. “建築を巡るトラブル、事件、事故などについての法律相談先は、どのようにして調べることができるか。”. レファレンス協同データベース. 2022年7月19日閲覧。
  6. ^ 図書館徹底活用術, p. 88.
  7. ^ ググって分からず図書館へ→2日で解決 こんなにすごい「レファレンスサービス」”. J-CAST ニュース (2022年7月19日). 2022年7月19日閲覧。
  8. ^ a b 福嶋 2014, pp. 142–143.
  9. ^ 常世田 2003, pp. 50–52, 143.
  10. ^ 森 2016, p. 95.





英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「レファレンスサービス」の関連用語

レファレンスサービスのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



レファレンスサービスのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのレファレンスサービス (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS