リーマン=スティルチェス積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/13 07:57 UTC 版)
積分の存在性
最も単純な存在定理は「f が連続で g が [a, b] 上有界変動であるときリーマン=スティルチェス積分 ∫b
af dg が存在する」というものである。函数 g が有界変動となるための必要十分条件は、それが二つの単調増大函数の差に表されることである。g が有界変動函数でないときには、g に関する積分が存在しないような連続函数が存在する。一般に、f, g が不連続点を共有するならば、この積分は上手く定義されない(これは十分条件だが、必要条件ではない)。
他方、Young (1936) による古典的な結果として、α + β > 1 なるとき、f が α-ヘルダー連続かつ g が β-ヘルダー連続ならば、この積分は定義可能である。
確率論への応用
積分函数 g を確率変数 X のルベーグ測度に関する確率密度函数を持つ累積分布函数とし、f が期待値 E(|f(X)|) が有限となる任意の函数とするとき、X の確率密度函数は g の導函数で、
が成立する。しかし、この公式は X がルベーグ測度に関する確率密度函数を持たないときには意味を成さない。特に X が離散分布(確率が点質量によって割り当てられる)のときには適用できない。また、たとえ累積分布函数が連続でも、g が絶対連続でない場合にはうまくいかない(この場合もカントール函数を考えると反例になる)。しかし、スティルチェス積分を用いれば、等式
は、実数直線上の「任意の」累積分布函数 g に対して病的な振る舞い (ill-behaved) もなく成立する。特に、確率変数 X の累積分布函数 g に対して、モーメント E(Xn) が存在するならば、
なる等式が問題なく成立する。
函数解析への応用
リーマン=スティルチェス積分はリースの表現定理の元々の定式化「区間 [a, b] 上の連続函数全体の成すバナッハ空間 C[a, b] の双対空間の元は必ず何らかの有界変動函数に対するリーマン=スティルチェス積分として表される」に用いられていた。後に表現定理は測度を用いて再定式化される。
また、ヒルベルト空間における(非コンパクトな)自己共軛(あるいはもっと一般の正規)作用素に対するスペクトル論の定式化にも、リーマン=スティルチェス積分が用いられる。この定理におけるリーマン=スティルチェス積分は、射影のスペクトル族に関するものとして考えられる。詳細はRiesz & Sz. Nagy (1955)参照。
- ^ 例えば、(rudin)。
- ^ (Haaser & Sullivan, p. 260)(google books)
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