リーマン=スティルチェス積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/13 07:57 UTC 版)
定義
実変数実数値の函数 f の、実函数 g に関するリーマン=スティルチェス積分
は、有界閉区間 [a, b] の分割
の目(大きさ)(mesh) |P| を 0 に近づける極限での、リーマン(=スティルチェス)和
の極限として定義される。函数 f および g をそれぞれこの積分の被積分函数 (integrand) および積分函数 (integrator) と呼ぶ。
ここでいう「極限」は(リーマン=スティルチェス積分の値となるべき)数 A が存在して、任意の正数 ε > 0 に対して正数 δ > 0 をうまく取れば、|P| < δ なる任意の分割 P に対し、代表点 ci ∈ [xi, xi+1] の取り方に依らず
とできるという意味である。
一般化リーマン=スティルチェス積分
上記を少し一般化したものがPollard (1920)で導入され、現在の解析学ではそちらのほうが普通となっている。分割 P が別の分割 Pε の細分であるとは、単に P より目の細かい分割を考えるというだけではなく、P が Pε に分点を追加して得られることを意味するものとする。函数 f の g に関する一般化リーマン=スティルチェス積分の値が A であるとは、任意の正数 ε > 0 に対して分割 Pε を適当に選べば、Pε の任意の細分 P に対して、代表点 ci ∈ [xi, xi+1] の選び方に依らず
が満たされるようにできることを言う。
この一般化は、一般化リーマンスティルチェス積分が閉区間 [a, b] の分割全体の成す有向集合上のムーア=スミス極限として得られることを示すものになっている (McShane 1952)。Hildebrandt (1938)はこれをポラール=ムーア=スティルチェス積分 と呼んでいる。
ダルブー=スティルチェス積分
リーマン=スティルチェス積分はダルブー積分の適当な一般化(ダルブー=スティルチェス積分)としてもきちんと扱うことができる。分割 P に対して、函数 f の函数 g に関する上ダルブー(=スティルチェス)和
および下ダルブー(=スティルチェス)和
を考え、これらのそれぞれ下限および上限をそれぞれダルブー=スティルチェス上積分および下積分と呼べば
が成立する。
すなわち上積分と下積分が存在して一致するとき、f は g に関してダルブー=スティルチェス可積分であるといい、その一致する値を f の g に関するダルブー=スティルチェス積分の値とする。
g が [a, b] 上非減少ならば、f の g に関する一般化リーマン=スティルチェス積分が存在するための必要十分条件は、任意の ε > 0 に対して適当な分割 P を選べば
とできること、すなわち f が g に関してダルブー=スティルチェス可積分となることである。さらに言えば、g が [a, b] 上非減少かつ f が g に関してダルブー=スティルチェス可積分ならば、f は g に関して(古典的な意味で)リーマン=スティルチェス可積分である(十分条件、Graves (1946, Chap. XII, §3)を参照)。
このようにダルブー=スティルチェス積分とリーマン=スティルチェス積分は双方がともに定義されるとき一致するので、ダルブー=スティルチェス積分によって(すなわち過剰和と不足和が一致するときのダルブー=スティルチェス和として)リーマン=スティルチェス積分を定義することがある[1]。
f が有界、g が非減少のとき、f, g が不連続点を共有しないならば、f の g に関するふたつのスティルチェス積分は存在して一致する。そうでないとき、一般にリーマン=スティルチェス可積分ならばダルブー=スティルチェス可積分だが、ダルブー=スティスチェス積分が存在しても必ずしもリーマン=スティルチェス可積分であるとは限らない[2]。
性質およびリーマン積分との関係
積分函数 g が至る所微分可能と仮定しても、g に関するリーマン=スティルチェス積分は
で与えられるリーマン積分とは必ずしも一致しない(例えば、導函数 g′ が非有界のとき)。しかし g′ が連続であるときには、両者は一致する。あるいは、g が自身の導函数 g′ のルベーグ積分函数と一致する(すなわち、g が絶対連続である)ときにも、両積分は一致する。
しかし g が跳躍不連続点を持つ場合や、連続かつ単調増大ながら殆ど至る所微分が消えている場合(例えば g がカントール函数のとき)には、いずれもリーマン=スティルチェス積分を g の導函数を用いたリーマン積分の形に書くことはできない。
リーマン=スティルチェス積分に関しても、部分積分が
なる形で成り立ち、この式に現れる二つの積分の一方が存在すれば他方も存在することが言える(Hille & Phillips 1974, §3.3)。
- ^ 例えば、(rudin)。
- ^ (Haaser & Sullivan, p. 260)(google books)
- 1 リーマン=スティルチェス積分とは
- 2 リーマン=スティルチェス積分の概要
- 3 積分の存在性
- 4 一般化
- 5 参考文献
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