リポタンパク質 種類

リポタンパク質

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/18 08:21 UTC 版)

種類

カイロミクロン(CM)

0.94 g/mL 未満のリポタンパク質で、直径は 180 - 500 nm 程度[2]

カイロミクロン中には約1:10の割合でコレステロールトリアシルグリセロール(TG)が含まれる。腸管から吸収された脂質が腸管粘膜でリポタンパク質に再構成され、リンパ管を通り中枢である肝臓に運ばれる。その役割を果たすのがカイロミクロンである。構成するアポリポタンパク質としてApoB48などがある。

リポタンパク質リパーゼ(LPL)欠損症では、高カイロミクロン血症を示す。一方で、リポタンパク質を合成するのに必要なMTP(ミクロソームトリグリセリド輸送タンパク)を欠損する場合、無βリポタンパク血症になり、脂溶性ビタミンが運ばれなくなるので、ビタミンAビタミンEの欠乏症に似た夜盲症末梢神経麻痺などの症状をきたす。

超低密度リポタンパク質(VLDL)

1.006 g/mL 未満のリポタンパク質[2]

肝臓で生成されて血中に放出される。約1:5の割合でコレステロールとトリアシルグリセロールが含まれ、末梢組織にトリアシルグリセロールを供給する。構成するアポリポタンパク質としてアポリポプロテインB-100(apo B-100)、アポリポプロテインC-II(apo C-II)、アポリポプロテインE(apo E)がある。ApoB短縮症ではVLDLやLDLに乏しい低βリポ蛋白血症をきたす。

中間密度リポタンパク質(IDL)

1.006 - 1.019 g/mL のリポタンパク質[2]

リパーゼの一種であるリポタンパク質リパーゼ(LPL)によりVLDLやカイロミクロンが加水分解されトリアシルグリセロールを失う過程のリポタンパク質。レムナント(英語でremnant。remainと同系の単語)とも称される。

通常は速やかに代謝されるが、インスリン抵抗性を背景としたメタボリックシンドロームの患者ではLPL活性が低下しており、apo E変異症のIII型高脂血症の患者ではLDL受容体VLDL受容体LRP受容体への結合が進まず、レムナントが血中に鬱滞する。

PAG法電気泳動ではmidbandとして定性的・半定量的に測定可能である。また、抗ApoAI抗体と抗ApoB100抗体を使ったRLP-C測定キットでレムナントの多寡が定量的に評価できる。最近ではapo B48定量による評価も検討されている。

低密度リポタンパク質(LDL)

1.019 - 1.063 g/mL のリポタンパク質で、直径は 22 nm 程度[2]

リポタンパク質の中でコレステロール含有量が最も多く、末梢組織にコレステロールを供給する。以前は悪玉コレステロールとも呼ばれたが、現在では否定されている。最新のACC/AHAガイドラインでは家族性高コレステロール血症の患者以外ではLDLの目標値を設定するエビデンスはないとされている。apo B-100やapo Eを認識するLDL受容体を介して主に肝臓に取り込まれ異化される。

LDL受容体欠損症は家族性高コレステロール血症(FH:familial hypercholesterolemia)とよばれ、特にホモ欠損症では総コレステロール値が600mg以上にもなり思春期にも虚血性心疾患など重篤な動脈硬化症に至る。

LDLが酸化変性糖化することによってLDL受容体への親和性を失う(酸化LDL)。その場合、スカベンジャー受容体などを経てマクロファージに取り込まれ、マクロファージの機能を変化させることにより動脈硬化症を発症すると考えられている。

最近ではスモールデンス(sd-LDL)と呼ばれるLDL受容体への親和性を失い、小粒子ゆえに血管壁に浸透しやすい種類のLDLが虚血性心疾患に関与していることもわかってきた。粒子径は25.5nm以下である。比重で分画した場合1.040 - 1.063のLDLに相当する。

高密度リポタンパク質(HDL)

1.063 - 1.21 g/mL のリポタンパク質[2]

血管内皮など末梢組織に蓄積したコレステロールを肝臓に運ぶ働きがある。結果として動脈硬化を抑える働きをするので、以前は善玉コレステロールと呼ばれていた。現在で、VLDLとLDLは、肝臓から他の臓器に中性脂肪(TG)や コレステロールを運び、HDLは逆に他の臓器から肝臓にコレステロールを運ぶというように、単に役割が違うだけだと考えられるようになった。HDLを構成するアポリポタンパク質としてアポリポプロテインA-I(apo A-I)やアポリポプロテインA-II(apo A-II)などがある。HDLは、LDLやVLDLとの間でコレステロール受け渡しを行うほか、肝臓にコレステロールを逆転送する(CETP:chorestelol estel transprotein)


  1. ^ IUPAC Gold Book - lipoproteins
  2. ^ a b c d e 『ストライヤー生化学』(第5版)東京化学同人、2004年、732頁頁。ISBN 978-4807905812 


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