ミスラ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/16 19:28 UTC 版)
他宗教への影響
ミスラ信仰はペルシャ帝国期、マギ神官によって小アジア、シリア、メソポタミアに伝道され、ギリシアやローマにも取り入れられた。ギリシャ語形・ラテン語形でミトラース(Μίθρας、Mithras)と呼ばれ、太陽神、英雄神として崇められた。
その信仰はミトラス教と呼ばれる密儀宗教となって、1世紀後半から4世紀半ばまでの帝政期ローマとその属州で広く信奉され、善悪二元論と終末思想が説かれた。最大のミトラス祭儀は冬至の後で太陽の復活を祝う12月25日の祭で、キリスト教のクリスマス(降誕祭)の原型とされる。のちに新プラトン主義と結合し、キリスト教と争ったが、圧迫されて衰退した。
また弥勒菩薩(マイトレーヤ)は、名の語源を同じくする事から、ミスラを起源とする説も唱えられている。これによると、弥勒菩薩の救世主的性格はミスラから受け継いだものだという。
ユダヤ教の天使メタトロンの起源もミスラであるという説がある。メタトロンは神の住居といわれる第七天に住み、小ヤハウェともいわれるほどの実力者である。タルムードの賢者アヘルは、これを第二の神としたために異端者とされた。一方のミスラもアフラ・マズダーを凌ぐほどの崇拝を受け、ゾロアスター教の正統に拮抗する勢力を保持した。また、ミトラの持つ「契約の神」「丈高き者」「万の目を持つ者」「万人の監視者」「太陽神」といった性格を、メタトロンも同じように保持していることが分かっている。メタトロンは「契約の天使」「非常な長身」「無数の眼の持ち主」「夜警」「太陽のような顔」といった性格を備えており、その異称「ミトロン」からもミスラの影響がうかがえる。
- ^ Paul Thieme (1960). “The 'Aryan' Gods of the Mitanni Treaties”. Journal of the American Oriental Society 80 (4): 301-317. JSTOR 595878.
- ^ a b Werner Sundermann (2002). “MITHRA iii. IN MANICHEISM”. イラン百科事典
- ^ ミシェル・タルデュー 著、大貫隆; 中野千恵美 訳『マニ教』白水社、2002年、157,159頁。
- ^ Yutaka Yoshida (2013). “Sogdian”. In Gernot Windfuhr. Iranian Languages. Routledge. p. 329
- ^ Badri Gharib (2012). “HAFTA”. イラン百科事典. XI Fasc. 5. p. 530
- ^ 『宿曜経』下:日曜、太陽。胡名「蜜」、波斯名「曜森勿」、天竺名「阿你(泥以反)底耶(二合)」。
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