ブランコ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/19 10:43 UTC 版)
概説
ブランコはポピュラーな遊具の一つで、公園や小学校の運動場などに備え付けられていることが多い。
鞦韆(秋千、しゅうせん)ともいう。「鞦」「韆」はそれぞれ1文字でもブランコの意味を持つ。「鞦韆」は今でこそブランコの意味を持つが、古くは中国で宮女が使った遊び道具(性具)をさす。現代のブランコとは少し違い、飾りがたくさんついており、遊戯中、裾から足が見えて、皇帝が見ていて運よく夜伽に呼ばれる可能性から艶かしいイメージを持たれていた。北宋の文人、蘇軾の漢詩『春夜』にも鞦韆が出てくることから、性行為の過程を詠んだという解釈もある。唐の玄宗は、鞦韆に「半仙戯」の名を与えたという[2]。
雅語は「ふらここ」。「ぶらんこ」の語源については擬態語「ぶらり」「ぶらん」などから来たとする説や、ポルトガル語の balanço (バランソ、英語のバランス、swing スイングの意もある)、もしくはBlanco(ブランコ、白色)から来たとする説などがある。なお、ポルトガル語版での対応項目タイトルは「Balanço」、フランス語版では「Balançoire」となっている。「ふらんど」「ゆさわり」ともいう[2]。
日本へは古く中国から伝わったとされ、樹木や梁から吊り下げたものであった[3]。嵯峨天皇の詩に詠まれ、『倭名類聚抄』にも記述がみられる[4]。「ぶらんこ」と呼ばれるようになったのは江戸時代になってからとされる[5]。なお、「鞦韆」が古くは性具を指したことから、日本でも「鞦韆に抱き乗せて沓に接吻す」(高浜虚子『五百句』)、「女優の鞦韆も下からのぞこう。沙翁劇も見よう。洋楽入りの長唄も聞こう。」(永井荷風「妾宅」)など、性的ニュアンスを込める場合などにあえてブランコではなく「鞦韆」が使用されている例が見られる。
サーカスなどの曲芸には空中ブランコという独特なブランコが使われる。非常に高い位置から2条の紐が降りていて、その先に細長い棒のようなものがあるだけである。一般のブランコの紐を長くし台を極限まで小さくしたものと解してよい。英語では、遊具のブランコは swing、空中ブランコは trapeze と呼ぶ。
種類
一方向ブランコ
座板を2本の鎖で支柱から吊り下げる構造を持つ最も一般的なもの。通常は単に「ブランコ」というが、関連文献などでは他の種類と区別するため「一方向ブランコ」として類型化されることがある[6]。座板の材質・形状については、木製の板状のもの、金属製の椅子状のもの、ゴムやポリウレタン製で腰まですっぽり覆われるバケツ型のものなどがある[7]。ただ、ブランコについては飛び降り時に他の遊具や安全柵と衝突するなどの原因による事故も報告されており、座面の改善や転落への対策等が必要という指摘がある[8]。
全方向ブランコ
ゴム製のタイヤを3本の鎖で支柱から吊り下げる構造を持つもの。「タイヤブランコ」もしくは「全方向ブランコ」と呼ばれる[9]。
箱ブランコ
可動部に2人~3人が向かい合って座る構造の4人ないし6人乗りの大型のブランコ。「箱ブランコ」のほか「揺りかご型ブランコ」あるいは「丸ブランコ」などとも呼ばれる[10]。
ただ、可動部の重さ、地面との隙間が狭いこと、指や足を挟む隙間が多いなどの問題点が指摘され、1960年代から頭蓋骨骨折や脳挫傷などによる死亡事故の報告例があった[11]、このようなことから全国的に撤去される例が多くなっている。国土交通省管轄の公園においては、2001年には約13000台設置されていたが、2004年には約3600台にまで減少している[10]。
遊動円木
長い座板の両端を鎖で支柱から水平に吊り下げた構造を持つ遊具[12]。遊動円木についても事故の報告があり、座面の材質や可動部の重さが問題点として指摘されている[13]。
- ^ “学校に設置している遊具の安全確保について”. 文部科学省 (2002年11月11日). 2016年1月4日閲覧。
- ^ a b 角川学芸出版 2006, p. 284.
- ^ 笹間良彦 2005, p. 201.
- ^ 笹間良彦 2005, pp. 201–202.
- ^ 笹間良彦 2005, p. 202.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, p. 79.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, pp. 80–84.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, pp. 79–89.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, p. 90.
- ^ a b 松野敬子 & 山本恵梨, p. 62.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, pp. 63–76.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, p. 77.
- ^ 松野敬子 & 山本恵梨, p. 78.
- ^ “Charlie Chaplin : Paroles - "Swing Little Girl"”. www.charliechaplin.com. 2024年5月18日閲覧。
- ^ Charlie Chaplin (2020-04-26), Charlie Chaplin Film Music Anthology - Swing Little Girl sung by Charlie Chaplin (from "The Circus") 2024年5月18日閲覧。
- ^ “フラゴナール《ぶらんこ》(1767年)における図像の独自性 | NDLサーチ | 国立国会図書館”. 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ). 2024年5月19日閲覧。
- ^ “ジャン・オノレ・フラゴナール/10分でわかるアート”. Sfumart. 2024年5月19日閲覧。
- ^ “Amazon.co.jp: ジェローム・トンプソン:ブランコに乗った子供たち。有名な絵画の複製。キャンバスウォールアート。家の装飾のためのポスターおよび版画の壁の芸術の絵。木枠30x48cm(11.8x18.9in)額 : ホーム&キッチン”. www.amazon.co.jp. 2024年5月19日閲覧。
- ^ “Artist: Jerome B. Thompson (American, 1814–1886)”. Artnet Worldwide Corporation.. 2024年5月19日閲覧。
- ^ “フランソワ・フラマン 「ブランコ」”. アトリエ・ブランカ. 2024年5月19日閲覧。
- ^ “ノンタンぶらんこのせて - 偕成社 | 児童書出版社”. 偕成社 | 児童書出版社 - (2017年7月9日). 2024年5月19日閲覧。
- ^ “zaa-282 ぼくは ぶらんこ (おはなしひかりのくに...”. Yahoo!オークション. 2024年5月19日閲覧。
- ^ “ぼくはぶらんこ (オールリクエスト) | NDLサーチ | 国立国会図書館”. 国立国会図書館サーチ(NDLサーチ). 2024年5月19日閲覧。
- ^ “ぶらんこギーコイコイコイ【みんなの声・レビュー】 | 絵本ナビ”. www.ehonnavi.net. 2024年5月19日閲覧。
- ^ ぶらんこ[朝鮮] 世界大百科事典 平凡社
- ^ 「世界最長163メートルのブランコ/北九州 環状に100台つなぐ」『日本経済新聞』朝刊2019年5月12日(社会面)2019年6月9日閲覧。
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